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「戦闘再燃? 緊迫のパレスチナ」(ここに注目!)

出川 展恒  解説委員

パレスチナ暫定自治区のガザ地区では、イスラエルの封鎖措置に対するパレスチナ住民の抗議行動が続いており、大規模な戦闘に発展することも懸念されています。出川解説委員です。

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Q1:
パレスチナ住民の抗議行動が続いているのはなぜですか。

A1:
イスラエルは、ガザ地区がイスラム組織「ハマス」に支配され、攻撃の拠点となっているとして、ガザ地区をフェンスで囲い込み、厳しい封鎖を続けてきました。およそ190万人のパレスチナ住民が、悲惨な生活を強いられています。
このため、今年3月末以降、一部の住民が、イスラエルとの境界付近で抗議デモを続けています。イスラエルを一貫して支持し、5月に大使館をエルサレムに移転したアメリカのトランプ政権も抗議の対象となっています。
これに対し、イスラエル軍は、「自衛のため」として、デモ隊に向けて実弾も発砲しており、これまでに、およそ140人が犠牲になりました。
パレスチナの若者らは、発火物を付けた風船や凧を飛ばす手段に訴え、イスラエルの農地や原野で火災が相次いでいます。

Q2:
大規模な戦闘に発展する恐れもあるのですね。

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A2:
はい。今月13日と20日(先週と先々週の金曜日)には、パレスチナ側の攻撃でイスラエルの兵士に死傷者が出たことから、イスラエル軍は、ハマスの軍事施設に対し、大規模な空爆と砲撃を行い、ハマスは、ロケット弾の発射で応戦しました。
ガザ地区では、4年前、2000人以上の命が失われた大規模な戦闘が起きており、こうした戦闘が再燃することが心配されています。
国連のグテーレス事務総長は、21日(先週土曜日)、「新たな戦争の瀬戸際にある」として、すべての当事者に自制を強く求めました。

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Q3:
事態を鎮静化させることはできるでしょうか。

A3:
国連やエジプトの働きかけで、21日(土曜日)に、ハマスが停戦に応じたと伝えられました。国連安全保障理事会では、24日、日本時間の今夜、この問題で公開討論が行われる予定です。
しかし、全く楽観できません。停戦はこれまで何度も破られているうえ、ハマスと関係なく抗議行動に参加する若者も多いからです。そして、パレスチナ暫定自治政府は、イスラエルとも、トランプ政権とも、接触を拒んでいます。
今の国際社会に、問題を根本的に解決する力はありませんが、4年前のような悲劇だけは、何としてもくい止めなければなりません。

(出川 展恒 解説委員)


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