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「NATO首脳会議 トランプ大統領を警戒」(ここに注目!)

二村 伸  解説委員

NATO・北大西洋条約機構の首脳会議が、11日から2日間にわたってベルギーのブリュッセルで開かれます。会議を前にアメリカのトランプ大統領は、各国の防衛費の支出が不公平だと強く非難し、NATOの結束が揺らぎかねない事態となっています。

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Q.「トランプ大統領を警戒」とは?

一部の首脳にとっては、先月カナダで開かれたG7サミット以来のトランプ大統領との顔合わせです。G7サミットでは、トランプ大統領が、北朝鮮との首脳会談を控え、閉幕を待たずに会議場を去ったうえ、採択された首脳宣言に異議を唱えるという前代未聞の事態となりました。NATOの首脳たちはG7の悪夢の再現だけは避けたいところですが、予測不能の大統領だけに爆弾発言が飛び出すのではないか戦々恐々としています。

Q.トランプ大統領の批判に各国はどう対処するのでしょうか?

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NATOは2024年までに加盟国の国防費をそれぞれGDPの2%以上に引き上げる目標を掲げていますが、これまでに目標を達成した国は3分の1以下です。トランプ大統領は会議を前にドイツなど一部の首脳に「応分の負担をしていない」と批判する書簡を送りつけ、会議でも「アメリカは世界の貯金箱ではない」と訴える方針だといわれます。各国首脳は国防費の増額は避けられないとしており、いかにトランプ大統領の批判をかわすかに躍起となっています。

Q.NATOの結束が乱れるとどんな影響が出るのでしょうか?

NATOにとって最大の脅威はロシアです。これまでアメリカとヨーロッパ諸国はロシアのクリミア半島併合に強く反発し、厳しい制裁を課すロシアに圧力をかけてきましたが、NATOの足並みの乱れはプーチン大統領を利することになります。

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トランプ大統領は、NATO首脳会議のあと、16日にフィンランドでプーチン大統領と会談する予定ですが、同盟国を軽視しロシアへの傾斜を強めるようなことになれば欧米間の溝が深まり世界の不安定化を招きかねません。NATOの首脳からは、北朝鮮との首脳会談後、米韓合同演習の停止を一方的に発表したように、アメリカがロシアに配慮してNATOの軍事演習への参加の取りやめや米軍部隊の引き揚げなどを打ち出すのではないかと危惧する声も上がっています。NATOの結束がアメリカにとってもきわめて重要であることをトランプ大統領が再認識し、協力姿勢を引き出したいというのがNATO首脳たちの狙いです。

(二村 伸 解説委員)

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