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「どうなる?メキシコ政権交代か」(ここに注目!)

髙橋 祐介  解説委員

来月1日に投票が行われるメキシコ大統領選挙は、既存の政治に対する不満から、政権交代の可能性が高まっています。髙橋解説委員です。

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Q1)
ゴールをめがけて駆け上がっていますね?
A1)
メキシコの決勝トーナメント進出に敬意を表して、けさもサッカーの絵にしてみました。大統領選挙で注目を一身に浴びているのは、首都メキシコシティーの元市長で、新たな左派政党を率いるロペスオブラドール候補です。名前が「アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール」と長いので、イニシャルをとって「アムロ」の通称で呼ばれています。与党や最大野党が推す2位以下の候補らを大きく引き離し、いわば“政権交代”のボールは、あとひと蹴りで、ゴールはほぼ確実とみられているのです。

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Q2)
どうして、そんなに一方的な展開になっている?
A2)
長年メキシコの政治や経済を牛耳ってきたエリート層への不満が高まっているからです。現にロペスオブラドール候補は、貧富の格差是正を掲げ、悪化している治安を回復し、政財界に蔓延る汚職を撲滅する。そう訴えて、国民のおよそ4割を占める貧困層から絶大な支持を集めています。しかも、大統領選挙は今回が3回目の挑戦です。これまでの連敗した選挙の時と違うのは、隣国アメリカにトランプ政権が誕生したことでした。「メキシコとの国境に壁を作り、費用はメキシコに払わせる」「NAFTA=北米自由貿易協定を見直して、離脱も辞さない」そうしたトランプ流の過激な政策や発言が、メキシコ国民のナショナリズムを刺激して、「アメリカの言いなりにはならない」と訴えるロペスオブラドール候補の躍進を期せずして後押ししたかたちです。

Q3)
すると、メキシコで政権交代が実現したら、どんな影響が出てくる?
A3)
最大の貿易相手国アメリカとの関係が悪化して、経済にも悪い影響が出かねないと心配する声はあります。ただ、この人物は単純な“反米主義者”ではなく、「アメリカとは対話を継続する」と明言していますから、大統領になれば現実的な妥協点を模索することになりそうです。はたしてメキシコに左派政権が誕生するのか?大統領選挙は、週明けのサッカー・ワールドカップで、メキシコが「王者ブラジル」と激突する頃には、大勢が判明している見込みです。

(髙橋 祐介 解説委員)


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