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「ロヒンギャ難民に危機迫る」(ここに注目!)

二村 伸  解説委員

ミャンマーから隣国バングラデシュに逃れたロヒンギャの難民たちが今、新たな危機に直面しています。

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Q.新たな危機とは?

迫害や暴力から逃れてきたロヒンギャと呼ばれる少数派のイスラム教徒は、バングラデシュ南東部で90万人がテント暮らしを余儀なくされていますが、強硬なミャンマー政府と、早期帰国を求めるバングラデシュ政府のはざまで行き場を失ったまま、今度は自然災害の危険にさらされています。現地では雨季が始まり、地すべりや洪水による被害が出始めていますが、まもなく南西の季節風、モンスーンのシーズンに入ります。季節の変わり目にはサイクロンが襲来し、毎年数千、数万人もの住民が被災しています。

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とくに難民たちが暮らす場所は洪水の被害を受けやすい上、キャンプの造成や何療養の木の伐採によって地盤が軟弱で地すべりが起きやすく、国連は難民の15万人から20万人が災害の危機に直面していると警告しています。

Q2.対策はないのですか?

とられてはいますが、難民の数が多いため限界があります。まず、危険な地域で暮らす難民たちを高台の安全な場所に避難させねばなりませんが、モンスーンの前に避難を終えることができるか、時間との戦いです。また、洪水による衛生面の悪化が懸念され、栄養失調や感染症を防ぐために、医療施設の拡充が不可欠です。配給される食糧が水浸しになったり流されたりしないように頑丈な倉庫の建設も必要です。とはいえ、これらは一時しのぎに過ぎません。危機を脱するにはやはり故郷に帰るしかありませんが、それもままならないのです。

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Q3.なぜ戻れないのですか?

安全の保証がないからです。バングラデシュ政府とミャンマー政府は、ことし1月、すべての難民が2年以内に故郷に戻れるようにすることで合意しましたが、その後も難民の帰還はまったく進んでいません。ロヒンギャの人たちはいまだに国籍が与えられず、故郷の村は破壊され、帰っても安心して暮らすことができないのです。両国は帰還が進まない責任を押し付け合い、国連がミャンマー政府に圧力をかけようとしても、ミャンマー政府と関係が深い中国の反対でうまくいきません。「世界でもっとも孤独な人々」とも呼ばれるロヒンギャの犠牲者をこれ以上出さないために今こそ国際社会の結束が求められます。

(二村 伸 解説委員)

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