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「丸の内駅前広場と『愛の像』」(ここに注目!)

清永 聡  解説委員

JR東京駅の丸の内側で3年あまり進められてきた駅前広場の整備が完了し、7日に式典が行われます。広場に再び設置されたあるブロンズ像についてお伝えします。

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Q:東京駅を利用している人の中にはずいぶん長く工事をしていたという印象の人もいると思います。

A:今回の事業は3年ですが、その前に駅舎の復原工事も行われていましたので、そこから数えると10年になります。広場は面積が合わせておよそ1万8千平方メートル。特に中央部分は芝生や並木も整備されて公園のようです。

Q:新たな観光スポットとしても人気を集めそうですね。

A:ただ、今回伝えたいのは、広場南側の一角に再び設置されたブロンズ像の話です。名前を「愛の像」(あるいは「アガペの像」)といいます。

Q:どういうブロンズ像ですか。

A:台座に「愛」という文字が刻まれ、男性が天に向かって何かを祈っているようです。この像、中国、フィリピンそれに東京・巣鴨などで戦争犯罪に関わったとして捕らえられ、亡くなった人たちの関係者や遺族が、昭和30年に平和を祈って丸の内側に建てたものです。戦後、各地の戦犯裁判で死刑となった人や病死した人は合わせて1000人を超えるといいます。生き残った人たちは海外の収容所などから持ち帰った彼らの遺書をまとめ、昭和28年に「世紀の遺書」というタイトルで出版しました。像の制作にはこの本の収益金が使われました。

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Q:そのような由来があることを知りませんでした。

A:知られていないのはいくつか理由があります。かつては慰霊の式典もここで開かれていましたが、すでに遺族の多くも亡くなっています。また、今回再設置されるまで、この像は工事のためとして10年以上撤去されていたんです。

そもそも像の周りには案内板も設置されていません。戦争犯罪をどう受け止めるか、人によってあるいは国によっても異なるため、設置された時から詳しい説明が記されていませんでした。そのことが戦争犯罪をめぐる議論の難しさを示しているように思います。

ただ、東京駅は戦時中、多くの兵士が戦地へと出征した場所でもあります。説明のないこの像には、実は、二度と犠牲を繰り返さないでほしいという関係者の深い願いが込められているのです。

 (清永 聡 解説委員)

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