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「アスベスト訴訟 被害者救済は」(ここに注目!)

清永 聡  解説委員

建設現場でアスベストを吸い込み、肺の病気になった元作業員などが国と建材メーカーに賠償を求めた裁判で、東京高等裁判所が判決を言い渡します。今回の一連の集団訴訟で2審判決はこれが初めてです。

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Q:アスベストの裁判は、たびたびニュースになっています。

A:つい先日、10月24日にも横浜地裁が国とメーカーに賠償を命じたばかりです。全国でいくつも同様の訴えが起こされています。一連の裁判は、建設現場で断熱材など建材に含まれていたアスベストが原因です。

Q:各地の裁判はどうなっているのですか。

A:いずれも争点は国やメーカーがアスベスト対策の責任を怠ったかどうかなどです。これまで7件中、6件で国、あるいは国とメーカーの責任が認められています。今回は初の高裁判決で、この1件だけが1審ですべて退けられていました。それだけに結論が注目されています。
ただ、アスベストをめぐっては、もう一つ別の裁判もあります。

Q:どういう裁判ですか。

A:今回は建設現場ですが、その建材などを作る工場で働いていた人もいます。こちらは3年前に最高裁ですでに国の責任が認められています。ところが、厚生労働省は今月、この賠償の対象になる可能性がある人たちに、新たに裁判を起こすように促す通知を始めたんです。

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つまり、一方とは争いつつ、もう一方にはどうぞ裁判を起こしてください、訴えを起こせば最高裁の判断に沿って賠償の手続きを進めます、と言っているわけです。

Q:どうしてまた裁判を起こさないといけないんですか?

A:最高裁の判断に基づいた賠償の制度が作られてないからです。支援する人からは、いずれに対しても、訴訟に頼らない新たな救済策を求める声があります。今回の判決はこうした議論にも影響を与える可能性があります。

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弁護団によりますと、首都圏の建設アスベスト訴訟の原告の元作業員は、およそ7割がすでに亡くなっているということです。時間はありません。どうか解決に向けた取り組みを急いでほしいと思います。

(清永 聡 解説委員)

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