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「バノン前首席戦略官『解任』の影響」(ここに注目!)

髙橋 祐介  解説委員

アメリカのトランプ大統領は、波乱続きだった夏休みを終えて、ホワイトハウスで執務を再開しました。一時は“影の大統領”とまで呼ばれたバノン前首席戦略官を解任したことで、今後どのように政権の舵取りをしていくのでしょうか?髙橋解説委員です。

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Q1)
なぜバノン氏は解任された?

A1)
政権内の激しい権力闘争に終止符を打ち、混乱を収拾する狙いがあったからでしょう。
バノン氏は、ちょうど去年の今ごろ、トランプ陣営に選挙対策の責任者として加わって以来、「アメリカファースト」を唱え、保護主義的な貿易政策や強硬な不法移民対策などを推し進める先頭に立ってきました。しかし、この半年間は、共和党主流派やウォール街それに同盟国との関係を重んじる他の政権幹部らと不協和音も絶えませんでした。
そこで『泣いて馬謖を斬る』そんな古い言葉とは対照的に、たとえ選挙戦の勝利の立役者といえども、身内以外はあっさり切り捨てるのが、いわば“トランプ流”。大統領は、わずか数行のツイッターでバノン氏の労をねぎらっただけで、政権から放り出したかたちです。

Q2)
今後のトランプ大統領の政権運営には、どのような影響が出てくる?

A2)
“トランプ丸”は当面“現実路線”に舵を切ることになりそうです。
現に、バノン氏らが選挙公約のとおり“早期撤退”を主張していたアメリカ軍のアフガニスタン駐留について、トランプ大統領は、きょう(22日)このあと、全米に向けてテレビ演説を行います。この中で、トランプ大統領は、現地の治安情勢の悪化を受けて、外交・安全保障チームと協議を重ねた結果、アメリカ軍の増派も含めた新しい戦略を明らかにする見込みです。また、バノン氏らの反対で停滞していた政権人事も、これから加速していくでしょう。しかし、これで万事うまくいくとは限りません。

Q3)
どうして?

A3)
白人労働者など、政権の固い支持層に“トランプ離れ”を生じる可能性があるからです。
現に、バノン氏は、「我々が勝ち取ったトランプ政権は終わった」と述べ、退任後は保守系のニュースサイトの会長職に復帰しました。政権の外から“応援団”になってくれるなら良いのですが、選挙公約に誰より忠実だったバノン氏が、今後トランプ政権による公約違反を批判した場合、まさか「フェイクニュース」と切って捨てることも出来ません。
はたしてトランプ大統領は、求心力を保てるのか?実は、バノン氏の影響力は、政権の外に去ったことで、むしろこれから増していくことになるのかも知れません。

(髙橋 祐介 解説委員)


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