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「大使は戻したけれど・・・日韓関係の現状は」(ここに注目!)

増田 剛  解説委員

韓国の大統領選挙は、きょうから公式の選挙運動が始まります。
けさは、韓国の新政権発足を前にした、日韓関係の現状に注目したいと思います。増田解説委員です。

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Q1)
増田さん、韓国は、大統領選挙がスタートしますが、その一方で、北朝鮮情勢に注目が集まっていますね。

A1)
はい。核やミサイル開発を進める北朝鮮は、きのうも、ミサイルを発射しました。アメリカのトランプ政権は、軍事的選択肢を排除しない姿勢を示し、朝鮮半島近海に空母「カール・ビンソン」を派遣しています。緊張の度合いは高まっていて、日本と韓国は、安全保障上、緊密な連携が求められています。

Q2)
政府が韓国駐在の長嶺大使を帰任させたのも、そのためですよね。

A2)
そうです。
長嶺大使は、慰安婦を象徴する少女像がプサンの総領事館前に設置されたことへの対抗措置として、1月上旬から3か月間、帰国していました。ただ、北朝鮮情勢が深刻さを増す中、いざという時に韓国政府との窓口となる大使の、これ以上の不在は避けたい。
また、大統領選挙が本格化する中、新政権発足を見据えた人脈作りも進めなければならない。
こうした判断から、少女像の問題で何の進展もないにも関わらず、大使を帰任させたわけです。
ただ、韓国に戻った大使は、今、厳しい立場にいるようです。

Q3)
どういうことですか。

A3)
長嶺大使は「ファン首相に会って、慰安婦問題をめぐる日韓合意の実施を強く求めていく」と話していましたが、今のところ、ファン首相との会談は実現していません。「首相と大使では、格が違う。
一方的に会いたいと言うのは、外交的に非礼だ」というわけです。
日本政府内では、「3か月間も大使を帰国させたことに対する、韓国政府の意趣返しではないか」という声も出ています。
また、大統領選挙は、革新系のムン・ジェイン候補と中道系のアン・チョルス候補の一騎打ちの様相を呈していますが、陣営の幹部は、少なくとも表立っては、長嶺大使との接触を避けているようです。両候補とも、日韓合意の見直しを求める立場ですので、日本の大使と会うことは、選挙戦略上、得策ではないという判断でしょう。

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Q4)
好ましい状況ではありませんね。

A4)
そうです。朝鮮半島情勢が緊迫の度を強める中、万が一にも、不測の事態が起きれば、在韓邦人の保護や退避などの措置も必要になりますし、その検討を進めるためには、日韓がこれまで以上に緊密な意思疎通を図る必要があります。両国政府には、大局的かつ現実的な見地にたって、関係改善の努力を進めてほしいと思います。

(増田 剛  解説委員)

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