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「残業の上限規制 法制化の焦点は?」(ここに注目!)

村田 英明  解説委員

先週、政府の働き方改革実現会議が法律で残業時間に上限を設けると決めたことを受けて、きょうから厚生労働省の審議会で法制化に向けた議論が始まります。村田英明解説委員に聞きます。

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Q1:今後の焦点は何ですか?

A1:実現会議で決まった残業時間の上限が妥当かどうかという点です。
政府案では、仕事が忙しい繁忙期には特例として、労使が合意すれば月に100時間未満までの残業が認められるようになっています。
月100時間の残業は電通で過労自殺した髙橋まつりさんがそうだったように、労災が認められる基準で「過労死ライン」と呼ばれています。そのギリギリまで残業を認めるというのですから、遺族などからは「過労死を助長する」と懸念する声が聞かれます。

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Q2:どうすればいいでしょうか?

A2:政府は過労死ラインを超えないように2つの対策を強化するとしています。1つ目は、「労働基準監督署」による指導の強化です。繁忙期にどれだけ残業をするか、企業は労働組合と協定を結んで、あらかじめ労基署に届け出なければなりません。その際に労基署が残業時間を可能な限り短くするように助言や指導を行うようにするというのですが、全国で3000人余りしかいない職員では十分な対応ができないといった指摘が出ています。

2つ目は、「産業医」による指導の強化です。

Q3:産業医というのは職場で健康管理をする医師のことですね。

A3:そうです。働き過ぎにドクターストップをかける役割が期待されますが、開業医が1人で複数の企業をかけ持ちで担当している場合も多く、従業員への面接指導やうつ病などメンタル面の相談は十分に行われていないのが現状です。心身に不調を抱える従業員がいても見過ごされていることが過労死の問題につながっています。

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Q4:どちらの対策にも課題があるわけなんですね。

A4:そうなんです。対策を強化して長時間労働に歯止めをかけるのであれば政府は人員を増やすなど体制の整備に本気で取り組むべきです。それができないのなら、残業時間の上限を引き下げることも考えるべきだと思います。働く人の健康を守ることを第一に考え、どのような対策を講じるべきか、さらに議論する必要があります。

(村田 英明 解説委員)

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