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「最後の将棋電王戦 コンピューターの"創造性"は?」(ここに注目!)

土屋 敏之  解説委員

◆プロ棋士と人工知能が対局する将棋の電王戦。2012年から行われてきましたが、明日(4月1日)、日光東照宮で始まる佐藤天彦名人とコンピューターソフト・PONANZA(ポナンザ)との二番勝負が最後の開催となる見込み。今回で最後というのはなぜ?

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過去5年の電王戦で既にソフトがプロに12勝5敗1分けと大きく勝ち越していることが背景にあります。今回、将棋界の頂点とも言える名人との対局が実現することから、主催者側はこれを頂上決戦と位置づけて、最後にするということです。

◆コンピューターはなぜそこまで強くなった?

コンピューター自体の性能アップに加えていわゆる人工知能技術、ソフトウェアの向上が大きいと思います。ソフトはこれまでプロ棋士同士の対局データをお手本にして強くなってきましたが、ポナンザの開発者・山本さんはさらにポナンザ同士を改良しながら戦わせることで、人間には不可能とも言える1兆局面もの将棋を学習させたと言います。今やコンピューターは単にミスをしないというのではなく、プロも驚くような大局観、独自の判断を示すようなレベルにまでなってきました。

◆将棋ソフトというと、去年、将棋界では問題も起きた。

トップ棋士の一人が対局にソフトを使ったのでは?と疑いがかかり、無実だったのですが、これも「ソフトの方が良い手を指せるのではないか?」という意識がプロの間にも広がってきたからこそ、生じた問題と言えます。日本将棋連盟は12月からスマホなど電子機器の持ち込み禁止をルール化していて、今回、佐藤名人は事前にボティーチェックも受けるそうです。

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◆最後の将棋電王戦の見所は?

勝負自体はもちろんですが、もう一つ、“創造性”をキーワードに挙げたいと思います。最近、人工知能が音楽や絵画、小説まで生み出すようになってきて、それを創作と呼ぶのか?そもそも人間の創造性とは何なのか?という議論にもなっています。囲碁や将棋でもプロの常識になかった手を生み出すようにもなっていて、佐藤名人も会見で『ソフトの登場で人間が新しい“気付き”を得て前に進めるのではないか』と期待も語っています。対局というのは一種の共同作業でもありますから、名人と最強ソフトによってこれまでに無い独創的な将棋が生まれるかもしれない、人と人工知能のコラボレーションの第一歩になるのか?注目したいと思います。

(土屋 敏之 解説委員)

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