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「新大統領と"言葉の力"」(ここに注目!)

髙橋 祐介  解説委員

アメリカのトランプ次期大統領の就任について、髙橋解説委員です。

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Q)
いよいよトランプ氏がアメリカ大統領に就任するのですね?
A)
日本時間あす午前2時、首都ワシントンの連邦議会議事堂前で、ドナルド・トランプ氏は宣誓し、第45代合衆国大統領に就任します。大統領として最初の仕事となるのが、就任演説です。はたしてトランプ船長は、出航の合図とともに、アメリカという巨大な船をどの方向に舵取りしていくのか、今後の航海にあたって基本的な考えを明らかにするのです。

Q)
どのような就任演説になりそう?
A)
激しい選挙戦の結果、今なおアメリカの世論は深く分断されています。トランプ氏は、近年まれに見る“不人気な新大統領”として、いわば“向い風”の中を船出します。
このため、就任演説では、これからは党派の違いを超えて力を合わせようと、まず国民の融和と結束を呼びかけるものとみられています。では、意見を異にする国民をどのように説得できるのか?新たに就任する大統領にとって、唯一の武器は、“言葉の力”です。
たとえば・・・

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世界大恐慌の時代『われわれが唯一恐れるべきは、恐れることそのものだ』と国民を奮い立たせたフランクリン・ルーズベルト。

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『国があなたに何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何が出来るかを考えよう』と呼びかけたジョンFケネディ。

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『政府は問題を解決できていない。政府こそが問題なのだ』と説いたロナルド・レーガン。

かつての大統領たちは、就任にあたって、そうした今なお語り継がれるフレーズを、推敲の末、歴史に刻んできたのです。

Q)
トランプ次期大統領にも、そうした名演説は期待できる?
A)
率直に言って、わかりません。これまでトランプ氏は、指名受諾演説などの例外を除いて、予め用意された原稿は、敢えてその通り読まないことを売り物にしてきたからです。
聴衆の空気を読んで即興で語る才能は、この人の持ち味でもありますから、選挙戦の段階では、それはそれで良い部分もあったのです。
でも問題は、“およそ言葉というものを慎重に選ぼうとした形跡がない”あるいは“ツイッターで日夜つぶやき放題”というトランプ氏の型破りなスタイルが、今度は大統領として、どんな発言が飛び出すのかわからないという不安を拡げていることです。
これからは、みずからの発言ひとつで、アメリカと世界の未来をも左右しかねない立場になるわけですから、トランプ次期大統領が、この就任演説を機に、もっと言葉の力と重みに、自覚と責任を持てるかどうかに注目したいと思います。

(髙橋 祐介 解説委員)

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