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ここに注目! 「首相の靖国参拝で司法判断は?」

橋本 淳  解説委員

安倍総理大臣が3年前、東京の靖国神社に参拝したことをめぐって、700人余りの市民が「憲法に違反する」と訴えた裁判の判決が28日、大阪地方裁判所で言い渡されます。

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Q:参拝の時には、中国や韓国から批判が出ました。

A:いわゆるA級戦犯を合祀した靖国神社への参拝が小泉元総理以来だったということで、中国からは「軍国主義を美化するものだ」と抗議を受けるなど歴史認識や外交上の問題が再燃しました。これとは別に、靖国参拝は政教分離を定めた憲法に違反しないのかという議論が古くからあって、今回、市民らが裁判でそれを問うたわけです。

Q:政教分離というのは、政治と宗教が関わらないようにしようという考え方ですね。

A:先の大戦で、国家神道と軍国主義が結び付いた反省から、戦後の憲法「国はいかなる宗教的活動もしてはならない」という規定が設けられました。政府は「総理大臣であっても、個人としての私的な参拝なら憲法に抵触しない」とし、安倍総理も私的な参拝だったと強調しています。

Q:しかし、総理大臣は公私の区別がつきにくいのでは?

A:安倍総理は公用車を使って靖国神社を訪れ、内閣総理大臣の肩書を記帳して参拝していました。また、「戦死者をまつる靖国神社に参拝するのは国のリーダーとして当然だ」と繰り返し発言していますので、これを私的な参拝とするには疑問が残るという見方もあり得るでしょう。

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Q:裁判所が公的な参拝と見れば、憲法違反と判断するのですか。

A:必ずしもそうではありません。靖国神社に毎年参拝した小泉元総理の時には15件の判決が出ましたが、このうち憲法違反としたのが2件、残りは憲法判断をしませんでした。公的な参拝と認めたのに憲法判断を避けたケースもあったのです。ただ一方で、明確に合憲とした司法判断もないわけですから、靖国参拝は法的には極めて不安定な行為だということは言えそうです。安全保障関連法を成立させた安倍政権は、「憲法軽視の政治」とも批判されてきました。判決が憲法判断に踏み込むのかどうか、注目したいと思います。

(橋本淳 解説委員) 

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