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ここに注目! 続くのか? 日本の貿易黒字

今井 純子  解説委員

 3月の日本の貿易収支が、2年9カ月ぶりに、黒字になりました。黒字は続くのでしょうか。今井解説委員です。

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Q)ずいぶん久しぶりの貿易黒字ですが、なぜ、今回、黒字になったのですか?

A)最大の理由は、国際的な原油の価格が去年の夏以降、急激に下がったという点です。その恩恵で、ここへきて、原油などの輸入の額が大きく減ったからです。加えて、ようやく自動車などの輸出が増えてきたこと。これも、あげられます。

Q)それで、貿易黒字は、続くのでしょうか?

A)残念ながら、長続きしない。また、すぐに貿易赤字に戻るのではないか、というのが、多くの経済の専門家の見方です。

Q)どうしてですか?

A)というのも、今、輸出が増えたといっても、好調なアメリカでの需要を受けて、現地の生産で追いつかない分、とりあえず、日本からの輸出を増やして対応しているという面があるからです。大きな流れとして、現地生産を増やす動きは変わっていません。例えば、トヨタは、今月、メキシコと中国に新しい工場を建設する計画を発表しています。ですから、今後、輸出が、どんどん勢いを増すことは考えにくい。

一方、輸入はというと、そもそも原発事故の影響で燃料の輸入が増えた。さらに、政府の円安誘導で、輸入額が膨れ上がった。という、貿易収支を悪化させた根本的な構図は変わっていません。そこに、原油価格は、3月を底に、すでに上がり始めています。今後は、輸入の負担=おもしが増して、貿易収支の足をひっぱることが予想されます。さらに、賃金の引き上げを受けて、景気が回復していくと、家電製品などの輸入が増えて、貿易赤字に戻る時期が早くなる。そういう皮肉な見方もでています。

Q)貿易で稼ぐことができないとすると、どうしたらいいのでしょうか?

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A)別の形で稼いでいかないといけません。例えば、企業は、海外の事業にどんどん力を入れて、その利益を国内に戻して、次の成長のための投資を増やす。また、外国人観光客を、さらに増やして、国内での消費を増やしてもらう。こうしたエンジンを強化して、日本全体で稼ぐ力=浮上する力を本格的につけていけるのか。それが今後の注目点です。

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