2008年10月02日 (木)アジアを読む 「アジア波及金融危機最終稿」

(岩淵キャスター)
Q1
アメリカの金融危機は、アジアにどのような形で影響を及ぼしつつあるのか?

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(嶋津解説委員)
A1
震源地アメリカから世界に広がる様相を見せています。ヨーロッパでは既に、イギリスやドイツ、ベルギーの銀行が破綻するなど深刻な事態です。一方、アジアの場合は、ヨーロッパほどの深刻度ではありません。

【V:中国の金融機関など】
中国の国有銀行がアメリカのサブプライムローンを組み込んだ金融商品を、数十億ドルの単位で保有していると言われますが、中国国有銀行の規模から言って、自力で損失処理をしていける額と見なされています。つまりアジアの金融機関はヨーロッパの金融機関に比べて、傷は浅いのではないかと見られます。

しかし、それにも拘らず香港やインドで銀行の取り付け騒ぎが起きたというのは、「アメリカの金融機関があのようにバタバタ倒れているのだから、アジアでも何かが起こるに違いない」と、不安心理が高まっている証拠だろうと思います。

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このグラフを見て下さい。ベトナム通貨の推移ですが、乱高下が激しいことがわかります。これは、5月ごろベトナム経済破綻説がアジアの国際金融市場を走り、また夏には、韓国経済9月危機説が飛び交いました。

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そのたびに、そうした噂の標的にされた国の株式や、通貨が売り込まれると言う、非常に不安定なマーケットの状況が続いています。

(岩淵)
Q2
ヨーロッパの金融機関に比べ、アジアの金融機関への影響は少ないのに、アジアの金融市場が乱高下するのはどうしてなのか?

(嶋津さん)
A2
アジアの新興国にはこの数年間、膨大なマネーが流入して、株式市場や不動産市場が大いに値上がりしてきたという面があります。

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今世界の金融市場で起きていることは「巻き戻し:deleverage」という現象です。市場に投入した投資資金を回収するという意味です。

【V:アメリカの金融機関】
この数年間、様々な投資家、これは今アメリカで次々破綻している投資銀行から、国家が運営するSWF・国家投資ファンド、また企業年金基金からヘッジファンドなどを含みますが、こうした投資家がが少しでも高い利回りを求めて、リスク覚悟でアジアの新興国の株式市場に投資してきました。

手持ちの資金だけでなく、それの何十倍と言う資金を借り入れして、運用資金を目一杯膨らませて、リスクの高い金融商品を買ったり、新興国の株式市場に投資していました。

ヘッジファンドは、この5年間で運用資産が3倍、2兆ドルに膨らんだと言われています。しかし、今年に入って世界中でヘッジファンドの破綻が相次いでいます。ヘッジファンドにお金を預けていた起業の年金基金などが資金を引き上げている・・・投機マネーが収縮し始めているのです。

つまり株式や金融商品を売って、現金化して、銀行から借り入れていたお金を返すために、資金を回収しているというわけです。そのために、アジアの市場が乱高下している。

(岩淵)
Q3
投機的な資金がアジアから逃げ出し始めているということ?

(嶋津さん)
A3

【画:株価グラフ】

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ヘッジファンドの資金が流入していたアジアなどの新興国の株式市場は、去年の秋までは、ぐんぐん値上がりしていましたが、その後、資金の巻き戻しが起きて、最近は軒並み急落です。中国も株価テコ入れ対策を始めました。

【V:北京などの高級不動産】
北京や上海では高級コンドミニアムの価格が急落しています。インドのムンバイでも高級住宅の売れ行きが極端に悪化しています。世界的な投機資金の収縮がアジアの株式バブル、不動産バブルの破綻に繋がって行くかもしれません。
中国やインドの高度成長は、実体経済の成長に加えて、株式や不動産のバブルによって押し上げられていた面があるわけですから、当然、バブル的な側面は剥げ落ちていくと考えられます。

(岩淵)
Q4。
今回の問題は、アメリカの金融市場が安定するのを待つしかないのか・・・?

(嶋津さん)
A4
震源地がアメリカですから、一義的にはアメリカ政府が金融市場の安定化策を実行する。しかし金融の世界は一つに繋がっていますから、日本やヨーロッパなどG7諸国も、ドルが暴落しないように協調体制を組んでいる。

【V:中国ダボス】
また、先日天津で行われた経済会議でも議題になりましたが、今回はG7の先進国だけでなく、中国やインドなど新興国も本格的に国際金融の安定化に向けて、協調体制を求められることになるのではないでしょうか。

しかし、アジア諸国にとって、より問題なのは、今の金融危機が一段落した後、アジアが、この5-6年享受してきたような高い経済成長をまた再現できるのかと言う疑問です。アジアの成長は、国によって程度の差はあれ、輸出主導型の成長でした。そのアジアからの輸出の最大の受け入れ先がアメリカだったわけです。

Q5)アジアの輸出主導型成長は、アメリカ経済に依存してきた?

A5)
【画:米経常収支グラフ】

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アメリカは、膨大な貿易赤字を出し続けてきました。逆に黒字を出し続けてきたアジア諸国は、アメリカでの輸出競争力を維持するために、多くに国が、自国の通貨の為替レートがあまり高くなりすぎないよう、市場介入してドルを買い支えてきました。

【画:ドルが環流】

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そのドルを今度は、アメリカの国債や、今問題になっている政府系住宅金融機関のファニーメイやフレディマックのような政府機関債という債券を買って、外貨準備としてアメリカに預けていました。

こうしてアジアからアメリカに還流したお金は、アメリカ国内で金余り現象を引き起こしました。それがアメリカで住宅バブルが発生した背景です。

今回のアメリカの住宅バブルの崩壊は、アメリカが巨額の貿易赤字を出しながら、世界中からお金をかき集め、それを再び世界中にばら撒くと言う装置が、壊れてしまったことを意味します。

(岩淵)
Q6
アジアがアメリカを頼りに高度成長を続けるのは、もう難しい・・・?

(嶋津)
A6
【PDP:Vアジア成長イメージ】
当座のアメリカの金融危機を鎮めること自体、大変な作業でしょうから、アジアにとって、アメリカがこれまでのように幾らでもアジアからの製品輸出を引き受けてくれる美味しいマーケットではなくなるでしょう。

今回の金融危機のあと、世界経済は、新しい成長の仕組みを作り出していく必要がある。危機の前の繁栄の時代―アジアの輸出主導型の経済が一番潤ったのですが、―もう元には戻れないのだという覚悟が必要です。アメリカに替わって、中国やインドが世界経済の牽引車のなれるのかどうか。アジアの新興国が、これまでの輸出主導型ではない、国内の消費をもっと高めていく、新しい成長のスタイルを作り出せるかどうかに掛かっているのではないでしょうか。

投稿者:嶋津 八生 | 投稿時間:18:48

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