スタジオパーク 「熱中症 地域のお年寄りに目配りを」2011年08月04日 (木)

後藤 千恵  解説委員

厳しい残暑が予想される今年の夏、熱中症への警戒が一層、求められていますが、なかでも特に注意が必要なお年寄りがいることがわかってきました。後藤解説委員です。

【質問1】きょうは各地で30度を超える真夏日となり、強い陽射が戻ってきましたね。ことし、熱中症の発生状況はどうなのでしょうか?

このところ、暑さは一時的に収まってはいましたが、先月は記録的な暑さを記録したところもあって、熱中症で病院に運ばれた人は1万7,700人あまりと、記録を取り始めてから最も多くなりました。熱中症とみられる症状で亡くなった人は、NHKの取材で、少なくとも102人に上っています。特に重症化しやすく、注意が必要なのが高齢者で、亡くなった人のうち73人が高齢者でした。

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【質問2】お年寄りは節電を気にしすぎて、エアコンを使うのを控えたりということがあるのでしょうか?

そこははっきりとはしないんですが、それとは別に、実は高齢者の中に、重症化する危険性が高いとみられる人たちがいることがわかってきたんです。名古屋掖済会病院の岩田充永医師らの研究グループが、重い熱中症で入院した20人のお年寄りについて詳しく調べました。その結果、いくつかの共通点が浮かび上がったんです。7割以上の人が該当したもの。それはまず、一人暮らし、または老夫婦二人暮らしであること。そして、日常生活はなんとか自分でやれて、介助を必要としていないこと。介護サービスも7割の人が利用していませんでした。

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【質問3】日常生活は自立・・? 介護が必要なお年寄りのほうが熱中症の危険性が高いわけではないんですね? 

はい。熱中症は身体を冷やしたり、水分を取ったり、きちんと対策をとれば予防できるものです。寝たきりのお年寄りの場合は、大半が介護保険のサービスを受けていますので、ヘルパーさんが来てくれたりして、予防策も取られている。一応は、安心できます。一方で、何とか自分で暮らしている高齢者の場合、介護サービスを受けていない人も多く、地域ともつながっていない、それで、かえって目が届かず、危険な状況にあるとも言えるんです。

【質問4】でも、そうした人たちは、自分で熱中症にならないように管理できるのではないでしょうか?

実はもうひとつ、熱中症が重症化した高齢者に共通する特徴があるんです。それは、認知症、または認知症の疑いがあるということです。介護保険サービスの対象にはなっていないのだけれど、認知症の症状は出ている、といった人たちです。こうした人たちは一見、普通に生活できているように見えます。実際に一人、または老夫婦で暮らせている。だから行政の支援の対象になりにくいし、近所の人も気にかけることが少なくなりがちです。でも実際には、理解力や判断力が衰えていて、エアコンのスイッチを入れられなかったり、夏なのに厚着をしていたり、窓を閉め切ってサウナのような中で過ごしていたりすることがあるんです。

【質問5】問題を抱えているのに、周りの人たちの目が届きにくい・・、となると危険な状況になりかねませんよね?

そうなんです。熱中症は早めに気付いてきちんと対処すれば、重症化することを防げるのですが、入院にまでいたったお年寄りの中には、発見が遅れために、症状が重くなってしまったケースが目立ちました。中には、新聞が2~3日分、たまっているのを不審に思った新聞配達の人が大家さんに連絡して初めて倒れているのを発見された人もいました。地域とのつながりの薄さが重大な事態につながったんです。

実は、東京都が行った調査でも、認知症の疑いがあって見守りが必要とされる在宅の高齢者のうち、「近所とのつきあいが全くない」、または、「あいさつ程度」という人が全体の70%近くに上っていました。介護保険などの公的なサービスや支援を受けていない人も、6割に上りました。認知症など、問題を抱えながらも地域や社会とつながることができず、孤立して暮らしている高齢者が大勢いる。熱中症の広がりは、そうした日本社会の現実を改めて浮かび上がらせたともいえます。

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【質問6】では、どうすればいいのでしょうか?

この東京都の調査では、認知症の疑いのある在宅の高齢者の4人に一人が一人暮らしだったのですが、多くの自治体は、その数すら十分につかんでいないのが現状です。支援が必要なのに、支援の網から漏れている高齢者について改めてしっかりと目を行き届かせる必要があります。それとともにカギとなるのが、地域でともに暮らす人たちの力です。たとえば、自治体は、一人暮らしの高齢者にパンフレットを配って注意を呼びかけたりしているんですが、専門家は、認知症のお年寄りには、もう一歩踏み込んだ支援、たとえば、地域の人たちの力を借りて、暑い日に実際に家を訪ねてもらい、窓をあけて、エアコンをつけてもらったり、水分や塩分をとってもらったりすることが必要だと指摘しています。

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【質問7】と言われても、すぐには難しそうですが?

確かに、こうした問題が特に深刻化している都市部で、地域の力を借りるといっても難しく思えるかもしれません。ただ、中には"新たなご近所づくり"に成功している人たちもいます。たとえば、川崎市の住民グループは、地域でお茶会や食事会を開いて、まずはお年寄りをそこへ誘い出す。結構、声をかければでて来てくださるそうなんですね。そうして馴染みの関係になったうえで、熱中症の危険性の高い日など、お年寄りの家にまめに足を運んでいるということでした。

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【質問8】工夫次第でやればできる、と?

そう思いたいですね。東日本大震災を機に近所の人に声をかけることへの抵抗が少なくなったという人がいました。不安の中で、地域でつながりたいと思う人が出始めた今が、新たなつながりを作り出すいい機会だという人もいます。"誰かのためではなく、自分のために"、そんな気持ちで地域とつながる人が増えていくことが、孤立したお年寄りを熱中症から救うことにつながるように思います。