2008年05月26日 (月)スタジオパーク 「サンゴで守れ沖ノ鳥島」
(稲塚キャスター)
日本の最南端に位置する沖の鳥島で、先月から今月に掛けて、小さな子供のサンゴを島の周りに移植する実験が行われました。水没の危険にさらされている南の島を何とか守ろうと言う日本政府の試みです。嶋津 八生(しまづ はちなり)解説委員です。
Q1)沖ノ鳥島のまず場所から確認していきたいのですが・・・?
A1)東京からほぼ1700キロ南。東京都小笠原村沖ノ鳥島という地名ですが無人島です。東京から船で行くとなると3日掛かります。太平洋の孤島です。
沖ノ鳥島は、東西4点5キロ、南北1点7キロの広がりを持つさんご礁なんですが、今でも満潮の時には、島のほとんどの部分が水面の下になってしまいます。かろうじて、北小島と東小島と呼ばれる小さな岩礁が水面上に顔を出しているだけです。かつては5つぐらい岩礁が顔を出していたらしいのですが・・・。いくつかの岩礁は、荒波で砕けてしまった。今では二つだけ。たたみ8畳分ぐらいが、海面から1メートル足らず、顔を出している、心細い状態です。
Q2)しかし、岩礁と言うよりも、丸い人工物のように見えますね・・・?
A2)これは実は今から20年ほど前に、残る二つの岩礁を守るために直径50メートルのコンクリートで、岩礁の周りを囲ってしまった。波よけ施設です。しかし太平洋の真ん中で、厳しい気候条件にあるため、この周りのコンクリート自体が、だんだん劣化してきてひび割れが入ったりするため、毎年、修理を繰り返して、何とか島を守ってきました。しかし、地球温暖化が進めば、今世紀中にも海水面が数十センチも上昇して、今世紀半ばにも島は水没してしまう恐れがあります。
そこで日本政府としては、島の周りに、さんご礁を育成して、島全体をもう一度、海面上に出すことが出来ないか。おととし(06年)から水産庁が、サンゴの増殖実験を始めたわけです。
Q3)具体的にどうやってサンゴ礁をつくるのですか?
A3)沖ノ鳥島で採取した親の枝サンゴを、いったん、沖縄の阿嘉島(アカジマ)の熱帯海洋研究センターに運んで、産卵させました。ここで去年(07年)6月に生まれた11万個のサンゴの種苗のうち、半数以上の6万個が順調に育った。これは驚異的な生存率だそうです。1年近くで、数センチの大きさに成長したサンゴの赤ちゃんを今回、沖ノ鳥島に持ち帰りました。先月下旬から今月はじめに掛けて、サンゴを付着させた10センチ四方の素焼きの板を670枚、ダイバーがもぐって、サンゴ礁の海の浅い部分、サンゴに覆われていない岩の部分に移植していきました。魚やヒトデなどに食べられてしまわないように、保護ネットで被っていきます。
外国でも、サンゴ礁を回復させるために小さなサンゴを別の場所から取ってきて植えつける形での増殖実験は行われていますが、沖ノ鳥島のように産卵から手がけるのは、初めての試みで、この分野では日本の研究が世界の最先端をいっているそうです。
Q4)しかし、サンゴ礁が育って島ができると言うが、そう短期間で出来るもの
なのですか?
A4)専門の学者によると、潮の流れなど自然条件さえうまく整えば、数十年の時間の単位で島が出来るということです。沖ノ鳥島周辺でも、サンゴがたくさん育ち、その後サンゴが死んで出来る砂粒がうまく潮で運ばれて島の周りに堆積していけば、今の島の高さ・大きさを維持していくことは可能ではないかと言うことです。
Q5)どうして、ここまでして沖ノ鳥島を守る必要があるのですか?
A5)太平洋のど真ん中にある日本の国土を守る。しかも島そのものと言うより、その周りの200海里の排他的経済水域を守っていこうというのが主たる狙いです。(地図)40万平方km。日本の排他的経済水域全体のおよそ10分の1。日本の陸地全体よりも広い面積です。国連海洋法条約で島と認められ、領海や経済水域を設けることが出来るのは、満潮のときでも島の一部が、水面上に顔を出している、という事が必要条件です。この海域はカツオの良い漁場ですし、海底にはコバルトなどの希少金属が豊富にある、と言われます。島が水没してしまえば、この部分の海洋権益がすべて失われてしまいます。
Q6)すると日本としては、国益を守るために、なんとしても実験を成功させたい・・・?
A6)そうです。この実験は、海洋権益を守りたいという国益確保が狙いですが、この実験が成功すると、もっと広い意味合いを持った、世界的な貢献に繋がる可能性が出てきます。
例えば、ツバルやキリバスなど太平洋やインド洋で水没の危機にさらされている島国。こういう島国もサンゴ礁で出来ていますから、こうした国の、国土を守る上で、この技術を応用できる可能性がある。
そのほかにも、いま世界中で美しいサンゴ礁が崩壊の危機にさらされています。
ここ沖ノ鳥島で、サンゴを育てる技術が確立すれば、世界中の荒れ果てたサンゴ礁を復活させることが出来るようになるかもしれない。
その意味でも、この実験が実を結ぶことを期待したいと思います。
投稿者:嶋津 八生 | 投稿時間:14:25
