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スタジオパーク 「空を変えるか 最新鋭機就航へ」2011年07月08日 (金)
松本 浩司 解説委員
(リード)
暮らしの中のニュース解説です。
次の世代の旅客機として注目されているアメリカ・ボーイング社の最新鋭機「787」が、就航を前に初めて日本に飛来し、各空港にスムーズに適合するかどうか試験を行っています。
松本解説委員に聞きます。
Q) なぜ、そんなに注目されるのでしょうか?
A)
日本の技術によって、ひとつの「壁」を破った旅客機であること。それによって世界の航空業界の勢力図にも影響を与えるくらいの「インパクト」があると考えられているからです。
「ボーイング787」はジャンボジェットなどより一回り小さい「中型機」で、座席数は200から300程度です。これまで飛行機の機体は金属というのが常識でした。しかしB787は主要な構造の大部分が「複合材」と呼ばれる新しい素材でできています。髪の毛よりも細い炭素繊維を特殊な樹脂で固めたもので、これまでのアルミ合金にくらべて強度が2.5倍ある一方、重さは半分です。日本の「東レ」が開発しました。
また主翼など全体の35パーセントを日本のメーカーが製造しているほか、全日空が、開発段階から参加してさまざまな提案が採用されています。ボーイング社は「メイド・ウィズ・ジャパン」と表現しています。
Q) 性能はどのくらいよくなるのでしょうか?
A)
機体が軽くなったこととエンジンの改良などで燃費がこれまでの中型機とくらべて20パーセント向上しました。航続距離、つまり一回の給油で飛び続けることのできる距離も30パーセント伸びました。日本の技術で伸びた、この「30パーセント」が、世界の空を大きく変えることになります。
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これまで日本からアメリカの東海岸までの直行便は、ジャンボジェットなど燃料をたくさん積める「大型機」に限られていました。「中型機」は航続距離が短いため西海岸の一部までしか飛ぶことができませんでした。
これが、航空会社が路線を敷く上での大きな制約=「壁」になっていました。大型機の座席が埋まるくらいの需要のある都市、ニューヨークやワシントンなど大都市でないと直行便の路線を敷くことができず、それ以外の中規模の都市に行くには乗り継ぐ必要がありました。
それがB787なら、航続距離が30パーセント伸びたことで大型機同様、東海岸まで直接飛べるようになります。「壁」を破って、航空会社にとって路線を設定する自由度が飛躍的に高まります。すでに日本航空は、このB787を使って成田からアメリカのボストンへの直行便を運航させることを発表しています。ヨーロッパも同様で、今後、これまで直行便がなかった中規模な都市への路線が次々と開設されると考えられます。
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Q) 旅行者にとっても便利になりますが、航空業界の勢力図にも影響があるというのはどういうことなのでしょうか?
A)
世界的な航空自由化の流れの中で、ローコストキャリアと呼ばれる「格安航空会社」が台頭して、既存の大手航空会社「メガキャリア」と激しいシェア争いを続けています。
格安航空会社のビジネスモデルはヨーロッパの中、アジアの中など比較的短い距離の2つの都市の間を一種類の旅客機で頻繁に輸送することでコストを下げるもので、「ポイント・トゥ・ポイント」と呼ばれています。
一方、顧客を奪われた既存の大手航空会社は大手同士でグループを作り、長距離の大都市間を大型機で結び、そこから先の中小都市へは同じグループのほかの航空会社の路線とつないでネットワークを作りました。自転車の車輪になぞらえて「ハブ・アンド・スポーク」という形態で顧客の囲い込みを図り、対抗してきました。
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それがB787を使えば、旅客機を乗り継ぐ必要がなくなります。B787は既に世界の56社から800機以上の注文が入る、大ヒット機になっています。この図式が変わって既存大手と格安航空会社の競争がさらに激しくなり、料金も安くなるかも知れません。
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Q)よいことばかりですが、課題はないのでしょうか?
A)
気になることがひとつあります。それはこの旅客機の開発が遅れに遅れたことです。B787の開発は2002年ごろ始まって、当初は2008年に最初に全日空に納入されることになっていました。ところが納入が7回にわたって延期され、いまの予定で来月8月か9月。丸3年延びました。新型機の開発は予定より遅れることがしばしばだが、3年も遅れるのはきわめて異例です。
Q)なぜそんなに遅れたのでしょうか?
A)
部品の供給が間に合わなかったり、組み立てようとしたらうまくつながらなかったりしたほか、テスト飛行中に電気系統で火災が起きるという衝撃的なトラブルもありました。背景として、
▼新技術を導入したことに伴って試行錯誤があったこと
▼機体の一部や部品を世界中のメーカーに分散して発注し、ボーイング社が組み立てるというこれまでにない生産方式をとったのですが、そのマイナス面が出た、と指摘されています。
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Q)安全性はどうなのでしょうか?
A)
ボーイング社は「1300回を超えるテスト飛行を重ね、問題はすべて解決した。これまでの金属の飛行機よりさらに安全性が高く、整備にかかる費用も30パーセント削減できる」と強調しています。
B787は、早ければ9月にも就航します。技術的に大きな壁を破った新鋭機だけに、言うまでもないことですが、安全を最優先に導入を進めてもらいたいと思います。
