ユネスコ(国連教育科学文化機関)は1日、世界が抱える教育の課題についてまとめた「世界教育リポート」を発表しました。今年のテーマは「紛争と教育」です。道傳解説委員です。

<ポイント1:「紛争と教育」>
A:こちらがそのリポート。テーマは"hidden crisis「隠れた危機」としての紛争と教育"とあります。

Q:どういう意味でしょうか。

A:紛争は人の命を奪うだけでなく、学校が破壊されたり教師の数が足りないなど、子供たちが十分な教育を受けられなければ、復興は遅れ、再び紛争に逆戻りしかねないリスクが常にあるという警告です。
リポートではさらに、たとえ教育を受けても、仕事がなければ失業者が増え、不満が鬱積し社会が不安定になりかねないこと、中でもエジプト、リビア、バーレーンなどアラブ諸国では15歳以上の若者の23%が失業状態にあることが不安定要素だと、中東の反政府運動の背景についても触れています。

Q:まさに目に見える危機として顕在化してしまったわけですね。
紛争が教育に与える影響は具体的にどんな形であらわれていますか。

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A:紛争の影響を受けた低所得国では、就学年齢に達しながら学校に通えない子どもは2800万人、15歳以上の若者の5人に一人は読み書きができません。読み書きというと文字だけのように思いがちですが、数字も含めて読めない書けない、つまり道路標識や物の値段も読めない、という意味です。
中でもアフガニスタンでは、30年あまりにわたる内戦の影響とタリバン政権下で女性の教育は厳しく制限されたため、15歳~24歳の識字率は男子が49%、女子が18%(UNESCO)、つまり男性の2人に1人、女性の5人に4人が読み書きができず、識字率では世界で最低のレベルです。

Q:紛争を生き延びても、十分に読み書きができないまま大人になってしまうということですね。

A:読み書きができないことで、収入の高い仕事につけず貧困から抜け出せない、またそうした環境に育つ子どもも、家計を支えるために働き、学校に通えないまま大人になるという貧困の悪循環から抜け出せないことも少なくありません。
アフガニスタン復興のために日本は、教育は生活を安定させ、平和を定着させるために欠かせないと、アフガニスタン教育省やUNICEFと協力して教育分野の支援をしています。たとえば「アフガニスタンに1000の教室を」計画。多くの学校が破壊され教室の数が圧倒的に不足している中でカブール市内の48の小中学校を対象に、1000の教室やトイレの建設、教員の育成などを行っています。トイレの建設というのは、途上国の女の子にとって特に大事なことで、トイレが男女別になっていないために危険が伴い、安心して通学できないために卒業まで学校に通えないケースもあるからです。

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<ポイント2:「男女の格差」>
Q:そんなことも男女の格差につながっていくのかもしれませんね。

A:リポートでも男女の格差を指摘しています。アフガニスタンでは中学校まで進学できるのは、男子10人に対して女子は4人と男女の差が大きく開いています。女の子に教育は必要ない、といった偏見や働いて家計を支えるために働かなければならず中学校、高校へと進学できないことも少なくないことに加え、紛争で教育が後回しになり、中でも女の子の教育は一層軽視されるからです。
そうした中で、高等教育の機会が十分になかったアジアの女性たちを対象にした大学がバングラデシュに設立されました。

<VTR:アジア女子大学>
大学があるのはバングラデシュ第二の都市チッタゴン。ミャンマー国境に近い南部の町です。
2008年に設立され授業はまだ仮校舎で行われています。個人や企業、財団からの寄付で運営され、400人あまりの女子学生が学んでいます。7割の学生が奨学金を受け、パキスタン、スリランカなど紛争地域から、勉強をしたい一心で命からがらやってきた学生もいます。

<VTR:アフガニスタン学生>
アフガニスタンからの学生に話を聞くことができました。
親戚中で教育を受けた女性は誰一人なく、タリバン政権に教育の機会を奪われた従姉妹や姉妹たちに代わって、寸暇を惜しんで勉強したいとのことでした。

イスラム圏の学生にとっては女子大学だから来ることができた、という背景もありますが、好きな教科を聞いたら、勉強はすべて楽しくどの科目とは言えないとの答えだった。将来はアフガニスタンに帰り、政治家となって教育の普及に力を尽くしたいとのことでした。この大学に来られる学生はアジアのほんの一握りですが変化をもたらす原動力になってほしいと感じました。

<日本の私たちは何ができるのか>
Q:日本で生活する私たちは学校に通える、教育を受けられることの有難みを強く意識する機会はあまりないですね。

A:そこで日本を含む180カ国のNGOなどが、リポートの発行を受けて、教育について考えるキャンペーン「世界一大きな授業」を行う予定です。実施は新学期の来月4月、学校に通えない世界の子どもたちの現状を知る「授業」です。日本では去年は350の学校、40000人あまりが参加しました。こちらが今年使われる予定の教材のひとつです。

この子たちは何をしているのでしょうか?とあります。

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Q:たらいを洗っていますね。家事をしているところでしょうか。

A:アフリカのある村の子どもたちで、働きに出た親に代わって子どもたちが家事を担い、その負担が大きいために学校に行かれないという現実があることをこうした写真を通して学ぼうというのです。
リポートのテーマ「隠れた危機」にあるように、食料や医薬品などに比べて、教育の機会が十分でないことの影響はすぐには目に見える形で現れません。また教育のプラスの成果もすぐには表れません。「世界一大きな授業」では、教育とは、単に読み書きができるようになるというだけではなく、自分の人生が大きく変わり、次の世代にも変化をもたらし、社会を変える可能性を秘めていることに気がつくきっかけになるのではないかと思います。