2008年12月18日 (木)スタジオパーク 「“オーケストラ”が子どもを変える」

(稲塚キャスター)
今、世界で注目されているオーケストラが、南米ベネズエラから初めて
来日しました。なぜ脚光を浴びているのか、扇谷勉解説委員に聞きます。 

Q1.ベネズエラから来日するオーケストラは珍しいのでしょうか?
A.珍しいですね。その中で、歴史の浅い青少年オーケストラ「シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ」が初来日しました。15歳から26歳まで180人の響きをお聴きください。

 

 

 

Q2.なぜ、注目されているのですか? 
A.国を挙げてオーケストラと音楽教育に力を入れていることです。楽器を買えない、レッスン代も払えない貧しい家の子どもたちに無料で音楽教育を保証しています。なんで音楽教育に熱心なのか。政治と社会情勢が背景にあります。
ベネズエラは南米一の石油大国ですが、豊かな層と貧しい層が対立する中で政治が動いている。加えて麻薬や犯罪、暴力など社会問題も抱えているのです。
貧困の悲しみは、社会から人を孤立させてしまうことです。そういう厳しい環境から子どもをどうやって守り、生きる力をつけさせるか。ホセ・アブレウさんはオーケストラに着目しました。今年で33年。なんでオーケストラにこだわるのか。その理由は、音楽を演奏しながら「調和、協調、集団の中で自分の役割を見出す」その意味をオーケストラから学べる、と考えたからです。

Q3.どんな音楽教育をしているのですか?
A.「エル・システマ」と呼ばれる音楽教育の制度です。全国に140ある音楽教育センターで子どもたちが学んでいます。
年間予算は65億円。ベネズエラ政府が出しています。4~5歳で楽器を習い、週に6日、1日4時間以内。音程や音の強弱などを身につけるため複数の楽器を習います。楽器を与えられた子どもは合奏が出来るまで一人で練習することが普通ですが、「エル・システマ」の特徴は、初めからみんなと一緒に練習することです。当然不ぞろいで不協和音。しかし、集団の中で自分と他人の音を感じることが重要なのです。
オーケストラの数はおよそ300。年齢によって分かれ、年上の子が年下の子に、自分ができることを教え、お手本を示す方式を取っています。

Q4.音楽を学んだ子どもたちは、その後どういう職業につくのですか?
A.様々です。演奏家になった人、学校の先生になった人。歴史は浅いけれど世界的に注目される指揮者や演奏家も生まれています。その一人が、今回このオーケストラを指揮しています。
「エル・システマは犯罪や暴力を予防することができる」と関係者は言いますが、音楽に犯罪を防ぐ力があるのかどうか、それはわかりません。ただエル・システマで学んでいる30万人の中で犯罪に走った人は一人もいません。

Q5.厳しい環境にある国ですが、取り組みは子どもたちにどう影響しているのですか?
A.心に響き、夢中になれるものを得ていると言うことだと思います。「エル・システマ」がヒントになるとすれば、それは「相手を責めない。むしろ励まし合い、音を間違えても笑い飛ばす、そういう関係を作ることだと思います。
楽器を練習し、達成感を感じながら、みんなと一緒に音楽を作り上げる。
その中で学ぶことはたくさんある。そのことを「シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ」は示しています。国が丸抱えで支援するベネズエラと単純に比較することはできませんが、それでも心とコミュニケーションの貧困、悲しい事件が多い今の日本の状況を考えますと、彼らの姿を参考に考えてみることも必要かなと思います。ベネズエラの音楽教育を手本に中南米やヨーロッパの国にも広がろうとしています。その動きに注目したいと思います。

 

投稿者:扇谷 勉 | 投稿時間:14:17

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