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スタジオパーク 「現役世代の社会保障の拡充を」2012年01月12日 (木)
後藤 千恵 解説委員
政府は先週、社会保障と税の一体改革の素案をまとめましたが、今後、高齢者だけではなく、働く現役世代を含む人生前半の社会保障をどう拡充していくかが課題となっています。後藤解説委員です。
【質問1】現役世代の社会保障の拡充、その必要性はしばしば言われてきましたよね?
そうですね。社会保障といいますと、年金、医療、介護・・、高齢者のためのものという印象がありますが、現役世代が安心して暮らせなければ、社会を支えることはできません。そこで人生前半の社会保障の重要性にも目が向けられてきたのに、それが中々、政策として実を結ばない、そこが問題なんです。
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今や働く人の3人に一人が非正規雇用です。中でも、自ら望んでいるわけではないのに、こうした働き方を強いられる人が増えています。働いても貧困から抜け出せないワーキングプアと呼ばれる人たち、現役世代では550万人に上っています。1年以上の長期にわたって仕事に就けずにいる失業者も、100万人を超えていて、失業のセーフティネットが十分でないため、大変、厳しい状況に陥っているんです。
【質問2】どこに問題があるんでしょうか?
一言でいえば、「時代の変化に、制度が追い付いていない」ということです。長い間、終身雇用制度のもとで、働く人の暮らしの安心を支えてきた企業、いわば、現役世代の社会保障を補う役割を担ってきた企業が、グローバル化が進み、産業構造も大きく変わるなかで、そうした役割を果たせなくなってきた。本来なら、それに代わって現役世代の生活を支える社会保障の仕組みが新たに必要なのに、それができていないんです。
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こちらは、現役世代に対する所得保障、貧困に陥っている人への給付額がGDPに占める比率を他の国と比べたものなんですが、ご覧のように、日本は大変、低い水準にとどまっています。
【質問3】今回の社会保障と税の一体改革は、そうした問題の解決も目指しているんですか?
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はい。政府は今回の一体改革の目標として、高齢者だけではなく、すべての世代の安心を掲げました。そして、今後、消費税を引き上げる場合には、その使い道を、今の年金、医療、介護から、新たに子育てを加えた4つの経費に広げるとしています。改革の方向性は評価できるんですが、問題は実効性です。厳しい財政状況の中で、政策にしっかりと優先順位をつけ、効率化も同時に進めながら、現役世代の暮らしの安心を保障していけるのか。子育て対策にしても、幼保一体化など、新しい支援制度に取り組むとはいうんですが、具体的な制度設計はこれからなんです。
【質問4】現役世代にとっては改革による恩恵より、負担感が強まるだけという事態にはならないのですか?
その心配はあります。消費税を上げれば、所得の低い人ほど影響が大きく、負担感が強まります。政府は、負担を軽減するための対策として、所得の低い人に増税で増えた負担分の一部を現金で払い戻す新たな制度を導入する方針です。ただ、この制度を始めるには、個人の所得を正確に把握するための共通番号制度の実施が前提で、それができるのは、早くても2015年、2013年から段階的に引き上げる場合には間に合わないんです。また、対象となる人の所得をいくらで線引きするのかなど、難しい課題が残されているんです。
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【質問5】野田総理は、「分厚い中間層を復活させる」と言っていますが、本当に実現できるのでしょうか?
取り組みが先延ばしされてきた分、傷は深く、解決も容易ではないと思います。ただ、このままでは将来の世代への影響もさらに広がります。やるしかないんです。
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こちらをご覧ください。子育て世帯では、生活に困窮する家庭が増え続けていて、国の援助がなければ学費などを支払えない小中学生は全国で155万人に上っています。貧困が親から子へ受け継がれることが懸念されています。
また注目すべきは、経済的な理由で結婚できない人が増えている現状です。内閣府が20代、30代の若者を対象に行った調査では、結婚している男性の割合は年収が300万円以上の人では、25%から40%なのに、年収が300万円未満の男性は9%にとどまっていました。経済力が結婚するための力、いわば“結婚力”につながって、収入が少ないために、結婚したくてもできない人たちを生み出している実態がうかがわれます。貧困に陥る単身者が増えれば、少子化が加速するだけではなく、社会保障の面でも問題を広げると指摘されています。
【質問6】現役世代の暮らしの安心という、待ったなしの課題。解決するためのカギはなんでしょうか?
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社会保障制度の拡充と、雇用対策、その二つの課題に、車の両輪として取り組むことだと思います。まずは社会保障。政府が掲げた低所得の人たちへの給付金の支給、非正規労働者が厚生年金に加入する際の条件の緩和などの対策の実現を急ぐ。このほか、たとえば、住宅政策も社会保障政策の一部として位置付けて、どんなに収入が少なくても、住むところはきちんと確保できるようにするなど、様々な支援を考えていくべきだと思います。
一方、雇用対策も欠かせません。下がり続けてきた賃金、処遇の改善に力を入れていく。安心して働ける質のいい雇用を増やしていく取り組みも合わせて必要です。
人生前半の社会保障制度の拡充と雇用対策、この二つに同時に取り組み、働くことで安心を得られる社会を作っていく、それが今、求められています。
