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スタジオパーク 「揺れるユネスコ無形遺産」2011年12月12日 (月)
毛利 和雄 解説委員
ユネスコの無形遺産は、審査が年々厳しくなってきており、文化財保護法で指定した無形文化財全ての登録をめざす日本の戦略は見直しを迫られることになりそうです。
きょうは毛利和雄解説委員に聞きます。
Q1 ユネスコの無形遺産、今年は新たに2件登録されたのですね?
A1 そうです。ユネスコの無形遺産について審査する政府間委員会が先月インドネシアで開かれ、新たに19件の登録が決まりました。
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日本からは、広島県の「壬生の花田植」と島根県の神楽「佐陀神能」の二つが新たに登録されました。
壬生の花田植は、1976年に国の重要無形民俗文化財に指定されました。飾りの鞍をつけた牛をつかって水田の代かきをし、早乙女が太鼓や笛などの囃しに合わせて田植えをする民俗行事です。私も去年取材に出かけたことがあるのですが、その年にデビューした小学生の男の子が、少しはにかみながらも晴れやかな顔をしているのが印象的でした。地元の北広島町ではさっそく祝賀会を開き、町を盛り上げていく上で大きな力になると未来に向けて伝えていくことを誓い合いました。
ユネスコの無形遺産に登録されることは、人口減少、少子高齢化が進む中で地域の振興にとって大きな励ましになります。
Q2 ユネスコの無形遺産はまだ登録が始まって余り経ていないと思いますが、もう登録が厳しくなってきているのですか?
A2 ユネスコの無形遺産条約は2006年に条約が発効し、2009年から登録が始まり、登録件数は今年で232件になりました。祭や伝統芸能など無形遺産は、それをうみ出し伝えてきたコミュニティが重要ですが、コミュニティを比較して優劣は付けられませんので、価値についての審査ではなく将来に伝えていく保護策が取られているかどうかを中心に審査されます。世界中に存在するさまざまな無形遺産を登録して、どのようなものがあるかを知り、お互いに理解を深めていこうというのが無形遺産条約の狙いです。
したがって、ユネスコの無形遺産は、とくに申請する数に制限も設けずスタートしました。ところが、実際に審査を始めてみると事務処理能力が追いつかないということで、積み残しが出てきています。そこで、先月開かれた政府間委員会で、来年は、1カ国につき1件ずつしか審査しないことを決めました。
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Q3 それで今後の日本の無形遺産の登録に当たって戦略の転換を迫られることになったのですね?
A3 そうです。当初、推薦する件数に制限が設けられなかったので、文化庁は文化財保護法で指定している400件ほどの無形文化財全ての登録をめざす。指定している無形文化財を13の分野に分け、それぞれ1件の計13件ずつ毎年申請する。各分野の中では文化財保護法で指定したのが早いものから選んでいくという方針を決めています。
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登録が始まった2009年は宮中に伝えられてきた雅楽やアイヌ古式舞踊など13件が登録されましたが、翌2010年は沖縄の組踊と茨城県、栃木県の結城紬の2件が、そして今年も壬生の花田植えと佐陀神能の2件が登録されただけでした。2年目からは申請しても事前審査もされず、積み残しにされ出したのです。
しかも今年は、埼玉県の「秩父祭りの屋台行事と神楽」、岐阜県の「高山祭りの屋台行事」、秋田県の「男鹿のナマハゲ」、手すき和紙の「本美濃紙」の4件は、情報照会で登録見送りとなりました。
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4件とも2009年に登録されたものの中に、似たものがあるので、改めて登録することが無形遺産に理解を深めていく上でどのような意義があるのか説明を求めています。もし似た様なものが登録できなくなると、文化財保護法で指定しているものすべての登録をめざす日本には、大きな支障が出ます。
Q4 ユネスコの無形遺産が揺れ動いているような状態では、日本が今後どのような方針で臨めばいいのか難しいですね?
A4 その通りです。そうした中で、日本の食文化の登録をめざそうという動きもあり、その取り扱いをどうするかの問題もあります。
1年に13件ずつ登録できるのであれば指定文化財が400件ほどですので、30年ほどで全てを登録できる見通しだったのですが、今後は大きく絞り込まれるでしょうから方針の見直しは避けられません。
とすると、どうするかですが、見直しにあたって東日本大震災で被災した無形文化財を優先的に扱うことも考えてみてはいかがでしょうか?
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たとえば宮城県東松島市に「えんづのわり」という子どもが行う民俗行事があります。岩屋に籠って寝食を共にし、最後の日に集落の家々を回って無病息災などを祈る行事です。津波で集落が大きな被害を受けましたが、高台にできた復旧住宅の集会場を利用して来年の小正月にも行事を続けることになりました。
危機にひんした無形遺産を保護することが最大の目的であったのがユネスコの無形遺産です。人口減少、少子高齢化が進む中で地域の精神的な核でもある無形遺産の保護のあり方を考えてみるいい機会ではないでしょうか。
