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スタジオパーク 「ビザなし交流 20年の決算」2011年12月01日 (木)
田中 和夫 解説委員
(リード)
「ビザなし交流」という言葉をご存知ですか。
現在ロシアが実効支配している北方領土の島民、つまりロシアの人々と、元島民などの日本人が、互いにビザを取らずに訪問し、交流を深めるというもので、今年でちょうど20年目となりました。
この「ビザなし交流」の成果と課題について、田中解説委員に聞きます。
Q1:「ビザなし交流」というと、日本人の元島民が北方領土を訪れるものだという印象が強いのですが、ロシア人が日本に来るというのもあるんですね。
A1:ええ、そうなんです。この20年間の交流の実績を、ごらんください。
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四島を訪れた日本人が延べ10,422人なのに対し、日本に来たロシア人も延べで7,653人いるのですよ。
北方四島は、1945年8月、日本が「ポツダム宣言」を受諾し降伏した直後に、ソビエト軍が侵攻しておよそ1万7000人の元島民が追い出され、以来ロシアが実効支配しているため、島の様子が全く分からないという状態が長く続きました。
(VTR) 領土交渉が進む中、20年前に、両国の主権に触れないよう、お互いにビザを取らずに訪問しあおうという、この交流が始まったのです。
つまり、両国が北方領土を「国境の画定していない係争の地」と認定して始めた交流で、島を追われた元島民らが故郷の島を訪れるだけでなく、現在島に住んでいるロシア人に日本各地の生活を知ってもらうという狙いも含まれていました。
Q2:なるほど。そこで、今回は四島に住むロシア人が日本を訪問する「ビザなし受け入れ」を取材したそうですね。
A2:ええ、色丹、国後、択捉の三つの島から、合わせて75人が10月に福井県の福井市を訪れたのを取材しました。
(VTR) 一行は日本側が用意した船で四島から北海道に着き、一泊したのち飛行機を乗り継ぎ、福井市に入り、地元の中学校で生徒との交流を図りました。
この中学校の校長は、かつて「ビザなし訪問」で四島を訪れたことがあり、そこでの温かいもてなしに感銘を受け、今回の受け入れも積極的に進めたと言うことです。
それだけに準備も万全で、生徒達も事前に覚えたロシア語の挨拶でロシア人に呼びかけたり、折り紙の折り方を教えたりと和やかな時間を過ごしました。
一行はこのあと、日本人の家庭を訪問した以外は、越前竹人形の里や永平寺、それにお城や遺跡などをめぐり、観光旅行のような4日間を過ごしました。
Q3:そうなると、ビザなし交流の目的って一体なんなのでしょう?
A3:この交流は政府が主催する事業で、目的としては「相互に理解を深め、北方領土問題解決のための環境作りを行うこと」となっているのです。
ところが、領土問題のことは話題にもならないんですね。
何人かのロシア人に話を聞いたところ、「領土問題は存在しない」とか、「日本が好きだから来ている」など、日本側が想定している事業目的を理解している人は殆どいないという印象でした。
Q4:田中さんは、今年のビザなし訪問にも同行取材したんですよね。四島ではどうだったんですか?
A4:領土問題には触れたくないという雰囲気は強かったですね。
(VTR) 9月に、元島民の二世や三世、それに返還運動をしている大学生など若い人たちのグループと一緒に色丹島を訪れた時の意見交流会でも、ロシア側から「領土問題はない」という発言が出て悔しい思いをしたという日本人がいました。
「ビザなし交流」が始まった20年前には、連邦崩壊直後の経済混乱で四島は「見捨てられた島」とも言われていたため、日本に返還しても良いというロシア人がいました。
ところが、ロシアが資源大国として復活し、4年前から始めた「クリル発展計画」で巨額の資本を投入しだすと、返還賛成の声は全く消え、島民の間でも「島はロシアの領土」だと言う声が圧倒的になってきました。
Q5:そうしますと、「ビザなし交流」は主要な目的である「北方領土問題の解決のための環境つくり」には、役に立っていないのではないですか。
A5:確かに、領土交渉は、この20年間画期的な進展はありません。
しかし交渉は、日ロ両国政府が行っているものですから、交渉に進展がないから交流も役に立っていないとはならないと思います。
むしろ、この間の島の様子や島民の考え方の変化を知ることが出来たことは「ビザなし交流」の具体的な成果だと言えるでしょう。
更に、この間、島の人々の暮らしぶりを目の当たりにした日本人が延べ10,000人以上いること、日本各地を訪れ、日本製品を買って帰ったロシア人も延べ7,600人余りいること、を前向きに捉えたほうが、良いかもしれません。
観光旅行だ、買い物旅行だと批判するのは簡単ですが、双方が直接訪れることで、相互理解は確実に進んだ面があるからです。
ただし、問題もあります。
Q6:その問題とは?
A6:この「ビザなし交流」は、すべて日本政府の予算、つまり我々の税金が3億円あまり使われていて、元島民やその家族以外に「返還運動関係者」も参加できるということが、国民にあまり知られていないことです。
この関係者は、47都道府県にある「返還運動県民会議」が推薦するシステムなのですが、その基準を透明化し、例えば「領土問題解決への提言」などの作文を課して、希望者を一般公募するというのも一つのアイデアだと思います。
問題意識を持った人を選べますし、作文募集の過程で北方領土問題への関心も高まるでしょう。
領土返還は日本国民全体の問題だという意識も強まると思います。
なにより、「ビザなし交流」は、北方領土を「自国の領土」と強弁し始めたロシア側が、「係争の地」と認識している証拠でもありますから、続けることが必要です。
マンネリに陥ることなく、さまざまな工夫を凝らしながら「ビザなし交流」を続け、政府の領土交渉の側面支援につながることを期待したいと思います。
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