時論公論 「支援は届いているのか」2011年07月06日 (水)

出石 直  解説委員

東日本大震災からもうすぐ4か月になろうとしているのに、全国から寄せられた義援金の5分の1しか被災者のもとには届いていません。なぜ支援が遅れているのでしょうか。
今夜はこの問題を取り上げます。

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今回の震災では、全国、そして全世界からたくさんの支援が寄せられました。その総額は3000億円近く(2930億円)に上ります。被災者に配分される金額は、最終的に義援金がいくら集まるのか、そして被害の程度や住んでいる地域などによって異なりますが、例えば仙台市の場合、亡くなったり行方不明になったりした人の家族には100万円、両親を亡くした孤児には150万円が支給されています。しかし、これまでに被災者のもとに届けられた義援金は、今月1日現在で593億円、寄せられた額の20%に留まっています。

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【義援金の流れ】
なぜ遅れているのか。まず、義援金がどのように配分されるのかみていきます。

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街頭での募金活動や、企業、個人から寄せられた寄付は、日本赤十字社と中央共同募金会に集められます。

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次に、各県の代表や学識経験者などからなる「配分委員会」で配分対象や金額などを決め、配分比率に応じて各県に送金されます。今回、県への送金が始まったのは4月13日、この時点ですでに震災から一か月以上が経っていました。
まだこれで終わりません。

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各県は、県に直接届けられる義援金も合わせて市町村に配分するための県単位の配分委員を作り、そこで決まった額が、各市町村に送金されます。

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各市町村は、市町村単位の配分委員会で被災者への配分額を決め、ここでようやく義援金の申請受付が始まります。
被災者からの申請を市町村が審査し、
各被災者の銀行口座に義援金が振り込まれます。

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このように各地から寄せられた義援金は、まず日赤と共同募金会、そして各県、さらに各市町村へという段階を経て、ようやく被災者のもとに届けられるのです。

【被災者生活再建支援金】
支援が遅れているのは義援金だけではありません。

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被害の程度に応じて最大で300万円が支給される「被災者生活再建支援金」という国の制度があります。この支援金も、今月4日現在で、およそ7万件(6万9785件)出されている申請に対して、支給が終わったのは3万2000件(3万2044件)と半分弱にとどまっています。支給業務を請け負っている財団法人、都道府県会館の審査と手続きが追いつかないためです。

着のみ着のままで避難してきて、今すぐにお金が必要な人達に震災かから4か月近くが経っても、まだ支援が十分行き渡っていないのです。

【支援が遅れた原因と課題】
被害が甚大で広範囲に及んだこと、被災者の数が非常に多いことなどの事情があったとはいえ、今回の経験から、なぜここまで配分が遅れたのか、その原因といくつかの課題が浮かび上がってきました。

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まず何と言っても「初動、立ち上がりの遅れ」です。阪神淡路大震災の時には、震災の8日後(1/25)に兵庫県が配分委員会を発足させました。しかし今回は、被害が15の都道県にわたっており、どの県が配分委員会を設置するのかなかなか決まりませんでした。明確な規定がなかったからです。最終的には厚生労働省が音頭を取って配分委員会を立ち上げましたが、この時点ですでに震災から4週間が過ぎていました。立ち上がりの遅れは最後まで響きました。
配分委員会の事務局のような常設の組織をあらかじめ作っておいて、大きな災害があったらすぐに立ち上がれるようにするなどの改善が必要と思います。

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次に「煩雑な手続き」です。義援金を受けるのに必要な書類は、自治体によって多少異なりますが、概ね以下の通りです。

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申請書、本人確認のための運転免許証など、預金通帳の写し、死亡診断書(検案書)、戸籍謄本の写し、り災証明書、 など

不正受給を防ぎ、公平性を確保するためにはやむを得ない措置とはいえ、今回は津波で預金通帳や運転免許証を流されてしまった人も大勢います。もう少し手続きを簡素化できないものでしょうか。

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もうひとつの課題は、被災者からの申請を受け付けて審査をし、現金を支給するというもっとも大変な事務手続きを、地元の「市町村任せ」にしていることです。
日赤や共同募金会は、現在の体制では、お金を集めてそれを各県に送金するだけで精一杯だと言います。県は、各市町村にまとまった金額を送金しますが、実際にそれを被災者ひとりひとりに配分するのは、地元の市町村に委ねられています。被害が大きい自治体ほど、避難所の運営や仮設住宅の建設、瓦礫の処理など、すぐにやらねばならない仕事が多く、義援金の支給にまではなかなか手が回らないのが実情です。
例えば原発事故で多くの住民が避難を余儀なくされた福島県の浪江町では、およそ7800世帯の支給対象に対し、わずか6、7人の職員でこの作業を行っています。
地域の事情は市町村がもっとも判っているとは言え、被害の大きい自治体には、義援金専従の応援の職員を派遣するとか、県や国が事務を代行するなども検討すべきと思います。

これとは対照的に、いち早く現金を被災者に届けた団体があります。財団法人の日本財団は、ボートレースの収益金と全国から募った寄付を元手に、亡くなったり行方不明になったりしている人の家族に弔慰金と見舞金を贈りました。現金を封筒に詰め、地元自治体や避難所にまで出向いて直接現金を届けました。先月末までにおよそ1万5000人に一律5万円ずつ、総額で7億4000万円を配りました。運転免許証や印鑑がなくても、県の死亡者名簿などで確認ができれば支給するなど手続きを簡素化しましたが、これまでのところ不正受給はみつかっていないと財団では話しています。

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誰に届けるのか、相手を特定してお金を贈るという方法もあります。被災した工場や商店の経営再建のための費用を支援する取り組み。被災地で活動している特定のNGO団体に直接寄付をして活動を支援しようという取り組みもあります。

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自分で相手を決め、寄付をしたお金が、どこで、どのように使われているのか知ることできる、目に見えるというメリットがあります。こうした寄付は、義援金とは区別して、支援金、救援金などと呼ばれています。
義援金のように被災者全体に広く行きわたる支援も必要ですし、こうした相手を特定した支援も効果的です。寄付したお金がどのように使われるのか、それぞれの長所、短所を理解した上で寄付をする、寄付する側の意識も大切だと思います。

(まとめ)
義援金や生活再建支援金の支給の遅れは、阪神淡路大震災の時にも指摘されたことです。
当時、「1年後の100万円より、直後の一番苦しい時の10万円の方がうれしかったのに」という声すら耳にしました。今回、同じような失敗が繰り返されたことは残念でなりません。東日本大震災からもうすぐ4か月、仮設住宅への転居も進み、雨露をしのぐ当座の場所を確保する段階から、生活再建に向けて歩み出す段階へと移ってきています。復旧・復興はこれからが正念場です。
新たな一歩を歩み出そうとしている人達が希望を失うことのないよう、被災者に直接届く支援を急いで欲しいものです。

(出石 直 解説委員)