2010年09月02日 (木)時論公論 「日本航空 再生の道筋は見えたか」
(VTR)
今年1月の経営破綻から7カ月余、日本航空の再建が本格的に動き出しました。日本航空は更生計画をおととい裁判所に提出。不採算路線の廃止や
大幅なリストラによって、3年間で業績のⅤ字回復を図る、という計画です。
JAL再生の道筋は見えてきたのでしょうか今夜の時論公論はこれを考えます。
(JAL再建と稲盛会長)
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会社更生法に基づく日本航空の更生計画は、
もともと6月末に出される予定でしたが、銀行団との交渉に時間がかかり、
2か月遅れでやっと提出となりました。
「絵に描いた餅にならないよう、必死でやる」
日本航空に招かれ、その再建を託されている稲盛会長は会見でこう述べた。
計画は出来ても、気を抜けば「絵に描いたJAL再建」になってしまう、
それだけ、課題山積だということを、稲盛さんの一言が、物語っている。
(マイナスからのスタート)
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そもそも今回の再建、マイナスからのスタートだ。
JALの財務内容は精査してみたら、実に9500億円もの債務超過だった。
会社の資産を全部注ぎ込んでも返し切れない負債で、大穴が開いているわけ。
このため、取引銀行が5215億円を債権放棄する。
さらに官民で作った企業再生支援機構が3500億円を出資して埋める。
このお金は国の信用で機構が借りたいわば公的資金だ。
失敗すれば国民にツケが回ることになる。
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こういう支援があって、やっと穴から出て、再出発が可能になるわけだ。
ちなみに、OBの退職年金を1000億円あまり削減した分も、
この穴埋めに充てられることになる。
(まずは縮小均衡)
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そのJALが再建策としてまず行うのが、適正な規模まで「身を縮める」こと。
膨らみすぎた事業と組織にメスを入れ、縮小均衡を図ることだ。
▼具体的には、国内線、国際線合わせて45の不採算路線から撤退する。
▼人員も1万6000人を今年度末までに削減する。
グループ全体の3分の1にものぼる規模だ。
▼ジャンボ機は全て退役させ、効率のいい、中小型機に切り替えていく。
路線廃止となれば地元には不満が広がるし、人員削減は社内の痛みを伴う。
苦しいことだが今はまず、身を縮めなければならない。
しかし、ここで二つの問いが浮かんでくる。
一つは、縮小はもうこれで十分なのか、ということ。
もう一つの問題が、この先の展望、次の成長の展望はあるのか。
逆に縮小ばかりでジリ貧になるのではないか、という2点だ
(国際線は脆い)
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このグラフは2001年度からのJALの業績を示したもの。
実は2年連続で黒字になったことがない。いかに脆い収益構造かがわかる。
詳しく見れば2001年度は同時多発テロ、03年度はイラク戦争とSARS、
2008、9年度はリーマンショック後の金融危機があったが、
そういう突発的な出来事が起こると、忽ち数百億円単位の赤字に陥っている。
イベントリスクというが、外部のショックに左右されやすいのだ。
結局、「国際線」の旅客の変動が大きいためだ
安定経営を目指すなら、国際線はばっさり縮小すべきではないかという声も、依然として、社外からはある。
JALにとって悩ましい問題だが、再建計画では、
3年後でも、旅客収入の半分弱、47%は国際線からと見込んでいる。
現状を大きく変える考えはないようだ。
(それでも国際線は必要)
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この点に関しては私も、国際線のネットワークはやはり必要だと思う。
路線を張るというのは、長年かけて積み上げてきた権益で、
一度、手放してしまうと再構築するのはなかなか難しいからだ。
ただし、今は全て自前である必要はない。
世界の航空会社が進めている連合=アライアンスというものがあるからだ。
JALはワンワールドという航空連合に加わっている。
同じ仲間のアメリカン航空とは、太平洋路線で、あたかも一つの会社の便の
ようにダイヤも運賃も調整して運航しようとしてる。
そうやってコストをかけずに、お客を増やそうというのだ。
アライアンスを上手に活用することが大事だ。
「次の成長の展望」という課題の方はどうだろう。
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その狙い目はアジアだ。航空需要が大きく伸びると期待されるアジア路線は、
JALとしても、今後拡充していく必要がある。
アライアンスの中でも、JALにはアジアでの路線網を厚くしてくれ、と
求められるはずだ。
そのアジアでの競争相手は、急速に伸びているLCC=ローコストキャリアと呼ばれる格安航空会社だ。
ライバルと戦うには自ら格安航空に参入し、打って出るという選択肢もありだ。実際、全日空は子会社で、LCCを作る検討も始めている。
これに対し、JALの大西社長はまだ慎重だ
「高品質なサービスで、アジアでもむしろ富裕層の顧客拡大をまずは狙いたい」といっているが、
次への展開という点では、早晩、重要な検討課題になるのは間違いない。
(国の役割)
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さて、最後に取り上げたいのは日本航空の再建における国の役割。
経営に直接影響するのは、国際水準の2倍・3倍もする空港の着陸料や、
航空機燃料税の問題だ。
JALの場合で年間1700億円に上るという。
こうした負担は全日空も同じだ。最終的には航空運賃に上乗せされている。
これを下げれば、経営再建の「側面支援」にはなる。
航空機燃料税は、国内便だけにかけている世界でも珍しい税だが、
国土交通省は来年度の税制要望で、3年間だけ減額するよう求めた。
結論が出るのは年末だが、実はこれ単に税金をまける、まけないの話ではない。
着陸料や税金は、空港整備勘定という国の特別会計にプールされ、
空港建設や維持管理に使われてきた。
「入」を減らすなら「出」の方も見直す必要がある。
特別会計はムダな空港建設の温床になり、作ったからには定期便がほしい、
というので赤字路線を航空会社に強いることにもなった。
まさに都合のいい「財布」に、官僚や政治家が群がる構図があったのだ。
こうした過去の航空行政の抜本的な見直しにまで、
踏み込む契機になるのかどうか、この点にも注目したいと思う。
何かというと役所が航空会社に注文をつける、
会社側も役所頼みで顔色ばかりを見ている、こういう関係はやめるべきだが、
もっと前向きで新しい役割も国にはある。
その一つは新しい成長戦略でも掲げられた観光立国だ。
インバウンド、つまり海外から日本に来る観光客を増やせば、
その人たちを運ぶ、航空会社のメリットにもなる。
(まとめ)
冒頭で稲盛会長の発言を引用したように、
JALの再建を「絵に描いた餅」にしてはならない。
着実に実行していくことが肝心だ。
そのために今、JALの現場の人たちも懸命に取り組んでいる。
今回の経営破綻の原因を、改めて検証した有識者の調査委員会は、
報告書の中でこう言っている。
「毎年のように策定された計画が未達成に終わっても、
原因究明や責任追及がなされないまま、次の新たな計画を作って、
それに代えてしまうということが繰り返されていた。
これは『問題先送りの無責任体質』だ」 こう、厳しく指摘している。
まるで、とっかえひっかえ、計画の大安売りのようだったわけだ。
公的資金を使ってまで救済しようという、今度の再建計画で、
こういうやり方はもう許されない、このことだけははっきりしている。
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投稿者:関口 博之 | 投稿時間:23:58
