2010年08月17日 (火)時論公論 「アフガニスタン/米軍機密情報流出の衝撃」

1.(山内)
アフガニスタン戦争に関するアメリカ軍の機密情報が先月末、インターネット上に大量に流出しました。これはアメリカ史上最大の機密漏洩事件の1つで、かつてベトナム戦争に関する国防総省の機密文書が新聞にリークされた事件を思い起こさせるものです。今夜はこの機密情報の流出がアフガニスタン戦争にどのような影響を与えるのか、そして情報が流出したことがどのような意味を持つのか、この2つの問題について考えます。

2.(リークの特徴/一部VTR)
今回の事件の最大の特徴は、軍の機密情報が新聞やテレビなどの既存のメディアではなく、インターネットのウェブサイトに公開されたことです。「ウィキリークス」という4年前に創設されたサイトで、内部告発者からの機密情報や映像を公開しています。その名を一躍有名にしたのが今年4月に公開されたこの映像です。3年前、イラクの首都バグダッドでアメリカ軍のヘリコプターがイラク市民を無差別に銃撃し、11人を殺害したものです。映像はアメリカ軍の内部告発者から提供されたもので、世界的な反響を巻き起こしました。その「ウィキリークス」が今回、7万6000件に及ぶアフガニスタン戦争に関するアメリカ軍の機密情報を公開したわけです。

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3.(リークの内容)
まず機密情報の流出がアフガニスタン戦争にどのような影響を与えるのかについて見ていきます。

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流出したのは、アフガニスタンに駐留するアメリカ軍部隊が作成した日常の任務の報告書、いわば日誌のようなものです。機密度は高い方から2番目の「シークレット・機密」にあたるもので、ブッシュ前政権の2004年からオバマ政権になった去年までの6年間にわたっています。これは今回明らかになった主な新事実を列挙したものです。

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▼大勢の住民が戦争の犠牲になっており、これまで公表されなかった事件がかなりあること、▼アメリカの特殊部隊が秘密裏にタリバンやアルカイダの幹部2000人以上を拘束・殺害しようとしていること、▼パキスタン政府がアメリカから多額の支援を受けながら一方でタリバンと共謀していること、▼タリバンがアメリカ軍の航空機に対抗するため、携帯式の熱誘導ミサイルを保有していること。こうした事実が新たに明らかにされました。

4.(具体例:特殊部隊)
このうち特殊部隊の活動について、今回、作戦の過程で大勢の住民が巻き添えになっていることが明らかになりました。

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例えば、アフガニスタン南東部のパクティカ州では3年前の6月、特殊部隊がイスラム教の学校に対して5発のロケット弾を撃ち込み、中にいた子供7人が死亡しました。アルカイダの幹部の殺害を狙ったものでしたが、幹部はおらず、作戦は失敗に終わりました。しかし、作戦の狙いや特殊部隊が関与したこと、最新式のロケット砲が使われたことは、当時一切明らかにされませんでした。こうした住民が死傷した例が150件ほど報告されていますが、そのほとんどがこれまで公表されていませんでした。

5.(パキスタンとタリバンの共謀)
またパキスタン政府とタリバンとの関係については、パキスタンの情報機関がタリバンに武器や資金を与え、訓練を施すなど、共謀していたことが、200件に及ぶ報告書の中で指摘されています。

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例えば、3年前の4月、パキスタンの情報機関はアフガニスタンの2つの州で自爆テロ攻撃を行なうため、タリバン系の武装勢力にモーターバイク1000台を送ったとされています。しかし、パキスタン政府は去年から、アメリカの強い働きかけもあって、タリバンに対し大規模な軍事作戦を行なうなど強い姿勢を取り始めています。

6.(どう評価)
では今回の情報流出をどう見るべきでしょうか。オバマ政権は情報の質はさまざまだが、全体として戦争の実態を裏付けるもので、情報には信ぴょう性があるとしています。ただ大勢の住民が犠牲になっていることなどは周知の事実で、戦争の方向性を変えるような、驚くべき事実はないとしています。しかし、膨大な機密情報が流出した今回の事件はアメリカ史上最大の機密漏洩事件の1つだと多くの専門家が指摘しています。アフガニスタン戦争の実態が非常に深刻であり、軍事作戦がうまくいっていないことを詳細な報告書で裏付けた形です。これについて、オバマ政権は国家安全保障への脅威で、前線の兵士や情報を提供した協力者を危険にさらすものだと強く非難しています。

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7.(影響は)
では今後のアメリカのアフガニスタン政策にはどんな影響を与えるでしょうか。オバマ大統領はこれまでの政策を変える必要はないとしていますが、政治的な打撃は大きいと思います。今回の事件は来年7月のアメリカ軍のアフガニスタンからの撤退開始まであと1年と迫った中で起きました。アフガニスタンでは先月、月別では過去最高の65人のアメリカ兵が死亡し、世論調査でも、オバマ大統領のアフガニスタン政策を支持する人は過去最低の43%に落ち込んでいます。今回の機密漏えいによって、国民や議会の間では戦争の行方や大統領の政策に対する懐疑的な見方がますます強まるものと見られます。今後11月のアメリカの中間選挙や、12月に行なわれる来年の撤退開始をめぐる情勢の見直しに向けて、オバマ大統領は一段と厳しい状況に直面することが予想されます。

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8.(インターネットへの流出の意味)
さて、ここからは今回の事件が投げかけたもう1つの問題。機密情報を暴露したのが既存のメディアではなく、インターネットのウェブサイトだったことの意味を考えます。
今回の事件はかつてベトナム戦争に関する国防総省の機密文書、いわゆるペンタゴン文書が新聞にリークされた事件と比較されていますが、内容は別にして、そのリークの方法には大きな違いがあります。

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ペンタゴン文書は47冊のファイル、7000ページに及ぶもので、内部告発した国防総省の研究員は数か月間かけてコピーを取り、これを17の新聞社に手渡しました。これに対し、今回は7万6000件の報告書という膨大な機密情報が全世界に同時に公開されました。大量の生の情報をノーカットで、しかも、映像も瞬時に世界中に伝えられるということは、インターネット時代ならではの大きな変化です。その背景にはインターネットのインフラの整備や情報源を隠すための暗号技術の大幅な進歩があると、専門家は指摘しています。

9.(今後の課題)
ワシントン・ポストによりますと、アメリカでは安全保障や情報関係の分野で機密情報にアクセスできる権限を持った人は85万人にのぼるということで、今回の事件をきっかけに今後インターネットへの内部告発が増えることも予想されます。その一方で、ウィキリークスには、寄せられた情報が果たして正しいものなのかどうか、きちんと検証し、裏付けを取って伝えることが求められると思います。今回、「ウィキリークス」はニューヨーク・タイムズなど既存の大手メディアに事前に資料を渡し、チェックした上で同時に公開しましたが、これは情報の信ぴょう性を高め、当局の追及をかわす狙いがあったと思います。また情報を暴露したことで、情報を提供した協力者の身元が特定され、危害が加えられかねないという危うい点があり、こうした面では今後、慎重で責任ある対応が求められると思います。

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10.(まとめ)
今回の情報漏洩は来年7月に撤退開始という期限を設けたオバマ大統領にさらなる圧力をかけるものです。アメリカ軍は今後、増派によってタリバン有利の戦況をくつがえし、撤退開始の条件を作りだすことが一段と強く求められることになります。しかし、アフガニスタン戦争の歴史は短期間で具体的な結果を出すことはいかに困難であるかを物語っていると思います。

投稿者:山内 聡彦 | 投稿時間:23:58

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