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ウクライナ侵攻1か月 世界はどう変わる

河野 憲治  解説委員長
二村 伸 解説委員 / 石川 一洋 解説委員 / 髙橋 祐介 解説委員 / 櫻井 玲子 解説委員 / 岩田 明子 解説委員 / 石井 一利 解説委員

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(河野) 
ロシアによるウクライナ侵攻から1か月。いまも罪のないウクライナの人たちの命と暮らしが武力によって奪われています。そしてロシアの攻撃をうけて建物が崩れ落ちるように、戦後の安定を保ってきた国際的な秩序も大きく揺さぶられています。「時論公論」の拡大版として、各国の事情に詳しい解説委員とともに、ウクライナ侵攻の行方やそれが世界に何をもたらすのかを考えたいと思います。石川委員は、旧ソビエト時代からロシアを取材して
きました。今回のロシアによる侵攻をどうみていますか。

(石川)
国連の安保理の常任理事国で核兵器大国のロシアが国連憲章を無視して自らこれほどの大規模な侵略を隣国ウクライナにするとは、こんなことがほんとうに現実になるのか、さらに人道的な危機の悪化など日々情勢が悪くなるばかりであり、非常に衝撃を受けています。
ロシアは特別軍事作戦と呼んでいますが、これは国際法を無視した主権国家への侵略であり、実態としてはロシアとウクライナの全面戦争です。ロシアと欧米の対立という新たな冷戦が始まった。冷戦のままであったら良かったのですが、ウクライナでロシアの軍事侵略という形で熱い戦争となってしまった。ソビエト連邦崩壊から去年で30年が経ちますが、ロシアと欧米がパートナーとなるという試みが最終的に失敗しました。経済・政治の面でのグローバリゼーションが終わったともいえるかもしれません。首都キエフはもうすぐ5月になれば栗の白い花が街を美しく飾るでしょう。ソビエト連邦崩壊後、ウクライナはとても大事な国で、ハリコフもドネツクも、そしてマリウポリという戦火に襲われた街も、黒海の港町オデッサや西部の中心都市リビウも訪れたことがあります。友人たちがいるウクライナの街が戦火に襲われるのはつらく許せません。

(河野)
最新の戦闘状況をみますと、ロシア軍は東部のマリウポリ周辺で激しい攻撃を続けています。一方で、首都のキエフを包囲し攻略をめざす作戦は苦戦が伝えられ、ウクライナ軍が一部で押し戻しているとされています。ロシア軍はどこで見通しを誤ったのでしょうか。

(石川)
プーチン大統領にとって誤算だと思います。ウクライナでこれほどの抵抗を受けるとは思っていなかった。ものすごく甘い見通しで戦争を始めました。彼の計算では首都キエフを電撃的に占拠し、ゼレンスキー大統領に降伏文書をサインさせる。ロシアとかかわりの深い東部ではむしろ住民に歓迎され、第2の都市ハリコフあたりは無血で占領できると思っていたのではないでしょうか。
プーチン大統領の思惑はウクライナ側の軍と住民の抵抗で完全に外れ失敗したといえるでしょう。ロシア軍も戦術を変えて、空中発射型の極超音速ミサイルや巡航ミサイル、それに無人攻撃機を使い、ウクライナ軍の継戦能力に打撃を与えようとしている。私は南東部のドンバスでの戦闘を注目しています。そもそもプーチンが軍事侵攻の理由としたのがドンバスの国家承認と親ロシア派の保護だった。ここでの支配権の確立に重点を置いているようにみえます。戦争と交渉がコインの裏表という形で行われています。交渉を有利に進めるためにも戦闘で優位に立とうとする、それだけ攻撃が激しくなります。ドンバスのアゾフ海沿岸の町、マリウポリでは街を包囲したロシア軍と親ロシア派の軍が市内に入り、ウクライナ軍は一つ一つのアパートの血みどろの取り合いをしています。住民がその中で取り残され、アパートの地下に身を潜めています。まるで第二次大戦のスターリングラードの戦いのようです。ロシア側がドンバスを制圧すれば、私はその時点でロシアがキエフに圧力をかけつつ停戦交渉で妥結を目指してくる可能性はあると思う。

(河野)
ウクライナ側が予想以上に善戦しているのは、どういう要因が大きいでしょうか。

(二村)
ロシアのクリミア半島併合後からウクライナ軍に対して行われてきたアメリカ軍による軍事訓練や欧米からの大量の武器の供与、それにウクライナ軍兵士と祖国防衛に立ち上がった市民の士気の高さとともに、ゼレンスキー大統領の戦略が大きな効果を上げています。

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各国議会での演説はそれぞれの国の事情や歴史を巧みに織り交ぜながら聞く人の心をつかむ内容でした。ドイツでは「ベルリンの壁ではなく自由と不自由を隔てる壁ができている」、欧州議会では「ウクライナとともにあると証明してほしい」と訴えました。役者で舞台の脚本も書いた経験と能力をいかし、戦争で国家元首がこれほど頻繁にメッセージを発信するなどパフォーマンスを発揮したことは過去になかったのではないでしょうか。

(石川)
ロシアのプーチン大統領にとって最大の誤算は、ゼレンスキー大統領が戦時においてこれほどの指導者となったことだ。プーチン大統領はここ1年、ゼレンスキー大統領との電話会談にさえ応じていない。キエフの体制と呼び、合法性のない政権とさえ揶揄し、ゼレンスキー政権相手にせずの対応だったが、今は、支持率90%を超えるゼレンスキー大統領を認めざるを得なくなっている。停戦交渉に応じたのもそのためだ。

(髙橋)
アメリカ国内でも、ゼレンスキー大統領に対する評価は、この1か月で180度真逆に変わった。もともとバイデン政権には、ゼレンスキー氏の統治手腕に疑問を呈して軽んじるようなところがあり、突き放すような対応をとってきた。現に、ゼレンスキー大統領は、バイデン政権発足後、対面での首脳会談を早期に開催するよう要請したが、それが実現したのは、去年6月の米ロ首脳会談のずっとあと、ようやく9月になってからだった。ところが、ロシアの軍事侵攻が始まると、アメリカ側はゼレンスキー氏の身の安全のため、首都キエフを離れて西部リビウか国外に退避を検討するよう促したのに対し、ゼレンスキー大統領がこれを拒絶したことで評価は一変。「自分たちの国は自分たちで守る」そう言って彼を中心に祖国防衛に身を挺するウクライナ市民の姿、ゼレンスキー氏の逃げない姿勢が、アメリカをはじめ西側諸国でウクライナ支援の輪を広げる大きな要因の一つになっているのだろう。

(岩田)
さきほど石川委員の話に、「プーチン大統領はゼレンスキー大統領を相手にせず」との指摘がありましたが、実はゼレンスキー大統領が就任した際、プーチン大統領は、儀礼的な祝辞を送っておらず、この時のロシアの姿勢に日本政府は注目していました。

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ゼレンスキー大統領を支える人物として、日本政府は、この人に注目しています。ウクライナのミハイロ・フェドロフ副首相です。ロシアによる侵攻が続く中、政府は、大手のIT企業に次々と支援を要請したり、ロシアでアプリ・ストアを全面停止する制裁を求めたりしたのが、このフェドロフ副首相でした。ゼレンスキー氏の大統領選ではアドバイザーを、政権が発足すると、副首相とDX担当大臣をつとめました。コロナのワクチンパスポート用のオンラインツール設置などでも活躍しました。実はこのフェドロフ氏、2021年9月の段階で、ゼレンスキー大統領とともに、アメリカの大手IT企業を歴訪し、アップル、アマゾン、メタ、グーグルの幹部と面会。ウクライナへの誘致を実施しました。政府は、フェドロフ氏が、これまでに築いた人間関係を活かしながら、今回、各社による支援に結びつけたと分析しています。

(河野)
今回は、まったく新しい形の戦争になっているように思います。SNSを通して戦場の生々しい映像が逐一伝えられています。また情報戦やサイバーを駆使したハイブリッド戦争が繰り広げられています。そしてその影響は、あっという間にヨーロッパをはじめ世界に波及しています。この戦争の姿をそれぞれの専門分野からみると、どういう点が注目されますか。

(二村)
80年代からいくつもの戦争を取材してきましたが、戦争はどれも悲惨なものです。今回はヨーロッパで民主主義が脅かされながら欧米諸国は手も出せず市民すら守れないことに無力感をおぼえます。
91年の湾岸戦争は、戦争が初めて生中継され「劇場型の戦争」と呼ばれましたが、今回は誰もが手の中のスマホで瞬時に戦況を知りメッセージを送ることもできるSNS型、ハンディ型戦争とでも言うのでしょうか。ゼレンスキー大統領は自ら指揮を執る姿を見せて国民を鼓舞し国際社会にロシアの残虐性をアピールし、一方のプーチン大統領は徹底的な報道統制で国内世論を味方につけています。
「戦争の最初の犠牲者は真実」と言われます。戦時は自国に有利な情報だけを流しフェイクニュースが数多く紛れ込んでいます。過去にも湾岸戦争前にアメリカ議会でクウェート人少女が虚偽の証言をして開戦の機運を一気に高めました。イラク戦争ではアメリカがイラクの大量破壊兵器保有の虚偽の主張で戦争を仕掛けました。情報戦に勝つには、ロシア国民にウクライナで起きていることを理解させ、戦争反対の世論を形成する必要がありますが、ウクライナが発信する情報も鵜呑みせずファクトチェックすべきです。
戦争に前のめりにならず冷静に停戦と和平を働きかけていくべきだと思います。

(河野)
戦争が起きるたびに難民の問題が起きますが、今回は、その規模と事態の展開のはやさに驚かされます。

(二村)
わずか1か月で国民の4人に1人が家を失い、380万人近くが国外へ逃れました。

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アフガニスタンにソビエト軍が侵攻後、難民が300万人をこえたのは2年後、シリアは反政府運動が始まってから3年7か月かかりました。戦後最も速いペースで国民が流出している、戦後のヨーロッパ最悪の人道危機で、長期化に伴いさらなる問題が懸念されます。周辺国は今は避難民を手厚く迎え入れていますが、ポーランドやモルドバなどはほぼ限界です。これまでは国外に出る余裕のある人や親族が周辺国にいる人が多かったのですが、今後行き場を失った人々など第2波が押し寄せたときにどうなるか、各国は受け入れる余力はなく不満が強まることも予想され、2015年の難民危機のときのような極右台頭が懸念されます。祖国帰還、復興には長い年月がかかるため国際社会の長期的な支援が必要で、難民の公平な受け入れの責任分担も求められます。

(髙橋)
アメリカは、今回のウクライナ対応で、インテリジェンス戦略に大きな特徴がある。アメリカは、かつてイラク戦争で大量破壊兵器をめぐり、大きな失敗を犯したが、その反省に立って、今回は、対ロシア包囲網を築くため、機密情報の共有をかつてないレベルで進めている。同盟国や友好国はもちろん、軍事侵攻を前に、ロシアへの説得工作に協力してもらうため、アメリカは、ロシア寄りと目される中国にすら情報提供を惜しまなかったという報道もあった。自らの手の内がさらされたり、情報源が特定されたりするリスクは当然あるが、それも承知の上で、情報の積極的な開示によって、ロシアに先手を打とうとしている。

(河野)
バイデン政権はアフガニスタンからの撤退をめぐってヨーロッパの同盟国との間で信頼関係が傷つきましたが、今回は指導力を見せているという印象です。とはいえ、アメリカ自体は軍事介入するつもりはないと明言しています。

(髙橋)
そもそも、バイデン大統領が、アメリカによるウクライナへの軍事介入を選択肢から早々と外したことが、ロシアによる大胆な軍事侵攻を誘発したとの見方もある。しかし、「米ロの直接衝突で第三次世界大戦の引き金は絶対にひかない」その1点で、バイデン大統領の考えは一貫している。

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その背景にあるのが、こちら、ウクライナ支援のあり方について、アメリカ国民にたずねた最新の世論調査。過半数が米ロ衝突を回避できるような限定的支援にとどめるべきだと答え、米ロ衝突のリスクを犯してでも全面支援すべきという意見は17%にとどまる。アメリカは世論で動く国。その世論が、直接の軍事介入を否定している。バイデン政権が飛行禁止区域の設定を求めるウクライナ側の要請を拒絶したのも、そのあらわれ。だからこそ、アメリカは、同盟国や友好国のネットワークを最大限に活用するかたちで、金融・経済制裁を前例のない規模で断行している。もはやアメリカは「世界の警察官」ではないのかも知れない。しかし、自ら銃をバンバン撃つ警察官でなくても、ルールを守るよう説教するような自警団の団長のような存在にはなれる。冷戦時代よりも格段に経済の相互依存が深まった現代に置いて、今回の対ロシア経済・金融制裁は、きわめて実験的な試みでもある。

(河野)
その経済制裁について。各国は矢継ぎ早に前例のない規模で強硬な措置を打ち出しています。それはかなり返り血を覚悟しているという意味でも異例です。

(櫻井)
制裁される側、制裁をする側の双方が疲弊する「長期戦」「持久戦」になると予想します。

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まずロシアへの影響ですが、経済制裁によってカネの流れが止められ、ハイパーインフレと大幅マイナス経済成長に悩まされる、ロシア国民が苦しむことが予想されます。ただ、ロシアは、資源大国、食糧大国で、自給自足ができるため、制裁の効果が出るのは時間がかかります。また、制裁に対抗するため中国への依存度を高める。例えばビザやマスターカードが撤退したあとには、銀聯カードが広がる、といった事態も予想されます。一方、世界経済への影響は大きく2つあります。一つは、「悪い物価上昇時代」の到来です。

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OECDは、資源や食糧価格の高騰、貿易の停滞などで世界経済の成長率が1パーセント以上押し下げられる一方で、物価は2.5パーセント以上、上がると予想しています。30年近くデフレに慣れてきた日本には大きな試練となりそうです。二つ目が食糧危機です。ロシアとウクライナで世界の小麦の3割を生産していますが、小麦の種まきの時期が迫る中、収穫や輸出が途絶える心配があり、即時の停戦がない限り、小麦が足りなくなることが予想されます。経済制裁という面からの今後の注目点は、天然ガスの供給を止めるという究極の手段に踏み切るかどうか。プーチン大統領が、天然ガスの支払いはルーブルでないと受けとらないという方針を表明しまたが、これも、いざとなったらガスを止めるぞ、という揺さぶりかもしれません。可能性はそう大きくないと思いますが、こうした制裁が実行に移されれば、制裁する側制裁される側双方に、極めて大きな打撃となるでしょう。

(河野)
経済制裁の抜け穴になるのではないかと疑いの目で見られているのが中国です。ロシアとの関係を強めてきただけに、いまの事態に戸惑っていると聞きますが、実際はどうでしょうか。

(石井)
中国としては、ウクライナへの侵攻によって、ロシアが国際社会から孤立したうえ、厳しい経済制裁も受け、さらに戦闘でも苦戦するということは、大きな誤算だったと思います。
中国は、これまで対立するアメリカへの対抗のため、ロシアとの連携を強めてきました。

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それを象徴しているのが、こちら。北京オリンピックの開会を伝えた2月5日付の中国共産党の機関紙、人民日報です。1面では、開会式とともに、習近平国家主席とプーチン大統領の首脳会談について大きく取り上げています。この3週間後、ロシアがウクライナに侵攻しますが、ロシアが国際社会から厳しく非難されたのを見て、中国は、あまりにもロシアに寄るのはリスクだとして、今、軌道修正しているとみられます。

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それが、伺えるのは、こちら。今月18日に行われた米中首脳会談の翌日の人民日報です。
一面の一番目立つ場所に写真を掲載。この会談で習主席は、「紛争と対立は誰の利益にもならず、平和と安全が国際社会の最も大切なものだ」などとしたほか「ウクライナ危機は我々は見たくないものだ」と述べたとも伝えられています。

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11月の米中首脳会談は、ほぼ同じ写真だったのですが、掲載されたのは、紙面の一番下で、新聞を半分に折れば見えない場所に掲載されていました。この紙面からは、アメリカとの関係を改善したいという中国の思いがにじんでいるように見えます。中国は、国際社会から孤立しないようアメリカなどとは関係回復を進め、逆にロシアとは少し距離を置こうという思惑も伺えます。

(河野)
次に、ロシアのウクライナ侵攻を止められるのか考えたいと思います。
そのためには、なぜプーチン大統領が軍事侵攻に踏み切ったのか知る必要がありますが、ロシア専門家のなかには、合理的なプーチン大統領が変わったという人もいます。

(石川)
ただ彼が狂ったのかというと私はそうではないと思う。私は2018年ごろから、権力内部でロシアは欧米と対立しても良い、孤立しても良い、あるいはむしろ孤立したほうがよいと考える孤立主義的な保守派のグループが形成されていると聞き、それが気になっていた。ロシアにまつわる奇妙な事件、例えばイギリスでの元スパイの化学兵器を使った毒殺未遂や反体制派のナワリヌィ氏の毒殺未遂など、欧米との対立を無用に深めロシアにとってもプーチン大統領にとっても利益にならないような事件が頻発したのだが、プーチンのインナーサークルではないが、クレムリンの状況を知りうる人に何でこんなバカなことをするのだと聞いたらその知人は、欧米との関係が悪くなればなるほど良いと考えるグループもいると答えた。欧米との関係悪化こそ目的だということを聞いて、そうであれば納得できると思ったことがある。非常に保守的な孤立主義的なグループが今回のプーチン大統領の決定の背後にあるのかもしれない。歴史的なロシアを回復したいという考えにプーチン大統領が囚われ、欧米との深刻な対立も織り込み済みで侵攻したのかもしれない。それなりに実務的、合理的だったプーチンが変わってしまったのかもしれないと感じている。

(岩田)
ある意味、プーチン大統領の変化や特徴は、これまでの日ロ首脳会談からもうかがわれるのではないでしょうか。私もこれまで20年近く日ロ交渉を取材してきましたが、良い悪いは別にして、かつては、日ロの首脳会談の中でも、側近たちに助言を求めたり、側近が口をはさむ場面がしばしば見られました。

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実際、首脳同士のテタテの場面ですら、ラブロフ外相が耳打ちをしたり、やりとりの修正を求める場面もよくありましたし、領土交渉の進捗状況を、ラブロフ氏など信頼する閣僚に代わりに説明させる場面も見られました。他方で、当時から、孤独な強いリーダーで、警戒心が強く、秘密主義の側面ももっていたと思います。また部下に対して絶対的な忠誠を誓わせる面も伺われます。例えば、2016年12月、山口県長門市で行われた日ロ首脳会談ですが、夕食会では、日本の食材で作られた数々の料理の中で、プーチン大統領、ふぐには手をなかなか付けなかった場面がありました。ふぐの毒を意識したものと見られる。また2014年2月、ソチの大統領公邸「ボチャロフ・ルチェイ」で行われた日ロ首脳会談では、昼食会が終わったころ、プーチン大統領は突然、ひと月前に亡くなったばかりの旧日本兵、小野田寛郎さんの名前を口にしました。「私は30年間もジャングルでひとり戦い続けた小野田のような男が好きだ」。絶対的な忠誠心を好む様子も見て取れます。ただ、先ほどの石川委員の話が事実だとすると、やはり日ロ首脳会談をたびたびおこなっていたころのプーチン氏とは明らかに変化しているともいえる面があります。

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今回の侵攻前、2月14日のラブロフ外相との会談では、この写真のような物理的距離がありました。コロナを機に、側近たちとの距離も広がっていったのではないかという指摘もあります。政府高官も「今回、プーチン氏のウクライナへの要求レベルは常識の範囲をはるかに越えている」としており、背景や実情について分析を進めています。

(河野)
ロシア国内で戦争反対の声が強まっていると聞きますが、プーチン大統領への国民の支持は実際どうなっているのでしょうか。

(石川)
様々な世論調査では国民の60%から70%は特別軍事作戦を支持していて、7%から20%が反対しているという傾向は読み取れる。欧米が厳しい制裁を科す中で、逆に欧米との戦時体制という意識がロシア国民に広まっている。それは欧米に対する祖国防衛戦争だというプーチン大統領のレトリックを受け入れやすくしている。ただロシア人の心は揺れている。今月4日プーチン大統領と航空会社の客室乗務員の女性たちとの会合にそれが垣間見えた。8日の国際女性デーを前にした会合でふだんなら和やかな、あるいは大統領が冗談を飛ばし笑いを誘うような会合だが、今年は全く女性たちの表情が違った。

【客室乗務員の声】
「私はあなたの特別な軍事作戦の決定を支持しています。私たち1人1人が問いかけています。なぜこの軍事作戦を避けることができなかったのですか。理性では理解していますが、でも女性の心は揺れています。私たちを安心させて下さい。この道の終わりに何が待っているのですか。この軍事作戦はどうやって終わるのですか」

ここに出席した女性はおそらく選別されたプーチン支持の女性です。でも表情が非常に硬い。プーチンが必死に説明しているけれども、とても伝わっていない。表情から見ると正直な気持ちが表れているのではと思います。この人を信じてほんとうに安心できるのか、どこに私たちを連れて行こうとしているのか、疑問がロシア国民の間に沸いている。ロシア人にはほんとうにウクライナに親戚がいる。兄弟がいる。あるいは親がいる。そういう人が多い。あるいは民族的にウクライナ人も多い。プーチンの決定は支持しても、実は心の中は揺れている人が多いと私はみている。なかなか電話では本音は話してくれないが、この話題では口数が少なくなる。

(河野)
戦闘の停戦にむけた交渉は、ロシアとウクライナの間で断続的に行われています。

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停戦交渉で、ウクライナ側は、戦闘の停止、ロシア軍の即時撤退などを求めています。一方、ロシア側は、ウクライナの「中立化」、「非軍事化」、クリミアの併合、東部2地域の独立などを求めています。

(石川)
ロシアからみて中立化、ウクライナからみれば安全保障、あるいは軍備管理の問題では、かなり突っ込んだ議論が行われている可能性はある。ただ停戦になるかというと、ロシア、そしてウクライナも残念ながらまだ戦うというモードだ。交渉を有利にするためにも戦闘が逆に激しくなるだろう。

(河野)
プーチン大統領に決断を迫ることができる側近や直言できる人物はいるのでしょうか。

(石川)
今の状況では難しいが、敢えて三人の名前をあげたい。

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パトルシェフ安全保障会議書記、クドリン会計検査院委員長、そしてナビユリナ中央銀行総裁です。パトルシェフ氏は保守強硬、クドリン氏は経済ブロックの中心でどちらかといえばリベラルと立場は異なるが、ともにプーチン氏とは俺お前の仲で、友達、盟友だ。ナビユリナ中銀総裁は、クリミア後の対ロシア制裁の中で、一度も為替介入せずに金融政策のみでルーブルの安定を成し遂げたとして、世界最高の中銀総裁と言われるプロです。どのようなブローチを身に着けるのか、あるいはどのような色の服を着るのかで、さりげなく今後の金利政策を示唆すると言われていますが、軍事侵攻後真っ黒な服で現れました。打つ手なしとの意思表示です。彼女なら辞表を覚悟で如何にロシア経済に破滅的な影響があるか、唯一の対策は戦争を終わらせることだと直言できるかもしれません。

(河野)
ウクライナを支援する欧米各国に、停戦に向けた有力な手立てはあるのでしょうか。

(二村)
NATOは第三次世界大戦への拡大を避けるために直接介入できず、ウクライナに武器供与、東欧諸国には軍備増強で睨みをきかせる以外に打つ手がない状態です。

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24日の一連の首脳会議では、NATOを分断させようというプーチン大統領の目論見とは逆に結束を強める姿勢を示しましたが、ヨーロッパはエネルギーをロシアに依存し、経済的に関係の深い国が多く、今すぐロシアと完全に関係を断つことはできない事情も抱えています。停戦にはプーチン大統領が国内向けに面目を保てるようどんな出口を用意するかにかかっていると思います。NATOがロシアの脅威にならないことを粘り強く説明し、安全保障上の新たな枠組みも必要かもしれません。また停戦には仲介が必要であり双方と関係が深いトルコの役割に期待したいと思います。武器をつぎ込んでプーチン政権を叩き潰すことに集中するのではなく人道危機を深刻化させないためにも停戦、戦争終結のための外交的な努力こそ最優先すべきだと思います。

(河野)
中国が仲裁に前向きな姿勢をみせていますが、どこまで本気なのでしょうか?

(石井)
中国は、ことし、5年に一度の重要な共産党大会を控え、国内経済の減速も鮮明になっていますので、「リスク」を負うこと、自国が不利益になることはできないということが本音です。中国とロシアは、首脳どうしが会談を重ね、関係強化してきました。しかし、今、ロシアを支援すれば、中国も国際社会から厳しい制裁を科される可能性も出てきたため、中国は、これまでの方針の見直しを迫られているとみられます。また、停戦調停についても、単独で乗り出す可能性は低いと思います。ただ、王毅外相は、先日、記者会見で、「必要な時に、国際社会とともに仲裁を行う用意がある」と述べています。王毅外相は、北朝鮮の核開発問題解決の6か国協議の議長も務めたことがあります。中国としては、ほかの国が、6か国協議のような停戦協議の場を作るのであれば、自分が損をしないためにも、参加して、存在感を示したいという思いがあるのかもしれません。

(河野)
仮に停戦が成立したとしても、それで戦いが終わることにならないのではないか。バイデン大統領のポーランドでの演説を聞いても、そうとう長い戦いを覚悟しているように見えます。

(髙橋)
バイデン大統領の2つの発言に私は注目している。ひとつは、NATO本部での記者会見で「ロシアをG20から排除せよ」という発言。この発言は、ロシアをグローバル経済から切り離す、いわばデカップリング宣言に等しい意味を持っているのではないか。もう一つは、バイデン大統領がポーランドで行った「この男(プーチン)を権力の座に残しておいてはいけない」という発言。ホワイトハウスは、その後プーチン政権のレジーム・チェンジ=体制転覆を意図した発言ではないと釈明に追われているが、少なくともアメリカは、たとえ停戦交渉が妥結したとしても、ロシアに対する経済制裁を、プーチン政権が続く限り解除しない
のではなかろうか。

(河野)
国際法を踏みにじり、力で他国を侵略したロシアの暴挙は、世界に深刻な緊張と対立をもたらし、国際的な秩序を揺るがすものとなっています。世界はどうなるのか。著名な国際政治学者で、アメリカ国家安全保障会議で外交戦略の立案にかかわっていたチャールズ・カプチャン氏に話を聞きました。

【米外交問題評議会主任研究員 チャールズ・カプチャン氏インタビュー】
「世界は今、歴史的な転換点を迎えています。二極化された敵対関係や反グローバル化に進むかもしれません。今のままでは「ロシアと中国」対「その他の国々」という“冷戦2.0”へ突入する懸念があります。好ましいことではありません。そうならないように我々は知恵を出し合い、より良い結果を出さなければなりません。プーチンの勝利を阻止しウクライナが崩壊することがないように最善を尽くさなければなりません」

(河野)
カプチャン氏は、経済のグローバル化によって、気候変動やパンデミック対策で国際的な協調がうたわれた時代は終わり、今後は、ロシアや中国に対して、国際社会が敵対するという新たな冷戦構造に向かう可能性を指摘していました。いまはその分岐点にあるとの見方ですが、今後、世界はどのように変化していくとみていますか。

(二村)
すでに冷戦終結後の欧州の秩序は崩れ、安全保障体制の見直しを迫られています。ドイツは2度の大戦の反省から軍備増強に消極的でしたが、歴史的な転換を表明、北欧の中立国もNATO加盟を求める声が高まっています。ドイツの外交専門家は「プーチンが権力の座にいる限り欧州とロシアの紛争は終わらない。プーチン後を考えねばならない」と話しています。長期的にはヨーロッパはロシア離れが進み、ロシアの存在感は低下するでしょうが、一方でロシアは中国やインド、アフリカの国々との関係が深く、世界の分断を避けるためにも「ロシア排除よりヨーロッパに取り込むこと」が重要だと思います。大国の武力行使を禁じ、核の管理を厳密化しないと新たな侵攻が起きかねず、日本も欧州、東南アジア諸国と連携して法の支配に基づいた国際的枠組みの再構築に積極的に関わっていくべきだと思います。また、プーチン大統領に対する戦争犯罪と人道に対する罪への裁きとともに、国際社会はロシアが暴挙に出た背景、冷戦後の西側諸国に驕りや過信はなかったか検証することも必要だと思います。

(河野)
ロシアの政治的・経済的な孤立は長期化するとみられますが、ロシアはどうなっていくのでしょうか。

(石川)
ロシアをパートナーにしようというソビエト連邦崩壊後の30年間の試みは、失敗に終わった。この戦争が終わった時にロシアがどのようなロシアになっているかが、まだ分からない。おそらくプーチンは交代しても、体制そのものは維持され、戦争終結後もロシアと欧米の冷たい関係が継続している可能性が私は一番高いと思う。その際ロシアは必然的に中国との連携を経済面、そして軍事面で深める方向に向かい、さらにインド、中東など欧米以外の国々とつながりを強化するだろう。今回の戦争は、ソビエト連邦崩壊後の30年という長いスパンで見ると帝国の継承国ロシアと新たに生まれた国民国家ネーションステーツのウクライナの戦争であり、ソビエト連邦という帝国の崩壊に伴う最後の戦争といえるかもしれない。ウクライナのゼレンスキー大統領が、この戦争はウクライナの独立戦争だと述べたのは正しい。では停戦が成立したとして恒久的な安全保障の枠組みができるだろうか。ウクライナ、ロシア、ヨーロッパの安全を保障するような枠組みができれば良いのだが。停戦合意は、絶対に必要だが、それは終戦を意味する平和条約ではなく、一時的な停戦、ウクライナに朝鮮戦争後の朝鮮半島のような分断のライン、南東部のドンバス、クリミア半島をロシアは手放さないだろうから、そこにロシアと欧米を分けるラインが生まれる可能性が一番強いと残念ながら思う。

(河野)
ロシアが頼りにする中国は、どう対応することになるでしょうか。

(石井)
中国は、ロシアとの関係について、見直しも迫られていると思います。中国は、アメリカとの対立が解消しないのであれば、ロシアとの友好関係は必要で、これまで連携を強めてきました。合同で軍事演習を行うなど、経済だけでなく、軍事面でも、両国は連携してきました。
中国は、2月、ロシアとの共同声明で、「両国の友好関係に限りはなく、協力関係の分野で『禁じられた』ものはない」とまで宣言しました。しかし、中国が、今、ロシアに対して、軍事面、経済面で支援すれば、国際社会から厳しく批判され、制裁も科されかねません。
また、中長期的には、ウクライナ侵攻によって、今後、ロシアという国、また、プーチン大統領がどうなるか、ということをしっかりと見極める必要があると考えているはずです。

(河野)
中国は台湾統一をめざすうえでも、ロシアのウクライナ侵攻を注視し、国際社会がどう反応するか見極めようとしていると言われます。台湾問題への影響はどうでしょうか。

(石井)
ことし共産党大会を控えた中国が、すぐに、台湾の統一に動く可能性は低いと考えます。
ただ、習近平国家主席は、去年7月の共産党創立100年の式典で、「台湾問題を解決し、祖国の完全な統一を実現することは、中国共産党の終始変わらぬ歴史的任務であり、すべての中華の子女の共通の願いでもある」と強調し、政治目標として、台湾統一を掲げていますので、中長期的には、注意、警戒が必要だと思います。中国は、「ロシアとウクライナの問題は、国と国との問題で、中国にとっての台湾問題は内政問題で、別だ」としています。中国は、台湾の蔡英文政権を独立志向が強いとして非難しています。台湾に対する軍事的な圧力も強めていますので、偶発的な衝突や、今後、中国が、台湾の独立を阻止すると主張して、強引な行動に出るのではないかということも懸念されています。また、今回のロシアのウクライナ侵攻を見た台湾の人たちが、今後の選挙などを通してどのような民意を示すのかということも、注目されます。

(河野)
日本外交は何が求められるでしょうか。

(岩田)
ウクライナの侵攻は、台湾統一についての習政権の戦略に修正を迫ることにもなりうる、という分析が政府内にもあります。ただ、実際には、尖閣諸島の沖合で中国海警局の船による領海侵入は常態化していますし、台湾の防空識別圏への侵入事案も確認されています。
また中国が、ロシアの侵攻直前の首脳会談で、政治的にロシアを後押しした点についても、日本政府は注視していて、今回、ロシアに高い代償を払わせることができなければ、中国がアジアで威圧を強める可能性が高まるとも見ています。さらには中長期的には、SWIFTに変わる国際決済システムを普及させるなどして、中国が優位になる金融市場拡大を目指すことも予想されます。このため、日本は、G7首脳会合などあらゆる会議やバイ会談の場で、中国への牽制を行うとともに、早ければ4月後半にも開催が予定されているクワッド首脳会合に向けて、インドの協力を呼びかける方針です。

(河野)
カプチャン氏は、グローバル化が後退する可能性を指摘していました。経済の流れが逆行する不安を感じます。

(櫻井)
企業関係者からはウクライナ侵攻が停戦に至り、収束したとしても、「時計の針は戻らない」とか、「パンドラの箱は空いてしまった」という声が聞かれます。というのも、各国で、海外に依存しすぎないこと。つまりエネルギー安全保障をはじめとする「経済安全保障」の必要性があらためて、認識されているからです。

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世界で最も安いところから資源を集め、労働力の安いところで生産をし、それを市場がある国に輸出してもらう、というグローバル化の恩恵を、これまでどおり、享受することはむずかしくなるおそれがあります。たとえばヨーロッパは「ロシア産・化石燃料からの脱却」を目指していますが、仮に停戦合意がされても、ロシアへのエネルギー依存から脱却しようという動きが逆戻りすることはないように思います。さらに、これをきっかけに中国やロシアは、デジタル人民元などを使った「脱・欧米」の決済・送金システムや通貨体制を発展させようと考える可能性も高く、世界の分断がすすみそうです。現に今も、暗号資産を使って、中東などにロシアマネーの一部を移動させる動きがみられるとききます。「サプライチェーンの見直し」や「通貨覇権争い」は、停戦となってもむしろ加速するリスクをはらんでいます。

(河野)
日本経済も影響を避けられないことになりますね。

(櫻井)
輸入天然ガスの9パーセント近くをロシアに依存するエネルギー安全保障体制の見直しは避けて通れないと思います。日本にとって必要な資源をどう確保するか、また脱炭素化をすすめることは絶対的に必要だとしても、コストはこれまで以上にかかることが見込まれますので、目標をどう達成していくか。日本のエネルギー体制の見直しは大きな課題になると思います。

(河野)
世界の秩序を大きく変えることになりかねないのは、ロシアが大量破壊兵器、なかでも核兵器を使用した場合です。プーチン大統領にその可能性はあるでしょうか。

(石川)
私が懸念しているのは、核兵器です。とくに小型の戦術核兵器をロシアが追い込まれた場合使用する可能性を私は恐れている。私はソビエト時代の核兵器開発を取材してきた。冷戦末期には米ソともにいわゆる使える核兵器、超小型の核兵器の開発を進めてた。その中には、広島や長崎型の初期の原爆とは異なり、破壊力が一定方向に向かう指向性のある爆弾なども開発されていた。ロシアは多くの戦術核兵器を保有しており、軍事ドクトリンでも国家存亡の危機の時には先制使用を排除していません。不利な戦局を変えようとして使う、あるいはNATOの介入を防ぐために使うなどの理由が考えられるが、戦争が核戦争や世界大戦につながりかねない危険性をはらんでいることは、ほんとうに恐ろしいことだ。ロシア国内に戦争の真実を伝え、この戦争を終結に導く世論を高めていく方策はないのか、私たちも考えなければならないと思う。

(髙橋)
こちらは世界の「終末時計」。戦後長らく核戦争のリスクをアメリカの科学者たちが分析し、人類滅亡の時を真夜中の午前零時になぞらえて、残り時間で警鐘を鳴らしてきたもの。

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冷戦時代の米ソが水爆実験に成功した頃は世界の終わりまで「2分前」、軍拡競争が激しくなると「3分前」、冷戦が終わり「17分前」まで針が戻ったのも束の間、いま時計の針は冷戦時代よりも危険な「1分40秒つまり100秒前」を指している。ウクライナで軍事的な緊張が高まっていたさなかの今年1月に公表されたものだが、その時点で、すでに核戦争のリスクは、かつてなく破滅に近い状態だと言う。これを根拠の薄い学者の空論とシニカルに受け止めるか?それとも深刻な危機感をもって受け止めるかで、今後の歴史は変わるかも知れない。今回のロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて、私たちは、米ロをはじめとする核保有国に対し、互いの対話を絶やすことなく、核軍縮や核の先制不使用、米ロの即応態勢の解除などに、真剣に取り組むよう求めていかなければならない。ロシアを排除すればそれで済む問題ではない。戦争被爆国・日本が果たすべき役割もますます重要になってくる。

(河野)
終末時計がこれ以上進まないことを祈りたいと思います。このあと事態がどう展開するのかはだれも予測はできません。どういう形になったとしても、世界は多かれ少なかれ、新たな冷戦構造ともいえる重苦しい対立の時代を迎えることになるかもしれません。ロシアへの経済制裁の影響が、私たちの暮らしに重くのしかかる状況に心構えを迫られることになりそうです。ただ今はなによりも、ロシアの侵攻を終わらせ、人道的な危機に対処することが必要です。ウクライナの人たちを支えるためになにができるのか、私たちも自分で考えていくことが大事だと思います。

(河野憲治 解説委員長 / 二村伸 解説委員 / 石川一洋 解説委員 / 髙橋祐介 解説委員 / 櫻井玲子 解説委員 / 岩田明子 解説委員 / 石井一利 解説委員)

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