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福島県沖の地震 今後の地震活動と東北新幹線の脱線

中村 幸司  解説委員 二宮 徹  解説委員

宮城県と福島県で震度6強の揺れを観測した地震は、丸一日たっても停電や断水が続いているところがあるほか、宮城県で脱線した東北新幹線も運転再開の見通しは立っていません。
今回の地震の特徴や今後の注意点、それに新幹線の地震対策の課題について、お伝えします。

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<今回の地震の特徴>
今回の地震は、東日本大震災を引き起こした巨大地震の震源域の周辺で起きました。
気象庁は去年から、こうした地震を「余震」と呼ばないことにしていますが、呼び方はともかく、今回の地震も東日本大震災の巨大地震の影響を受けたと見られています。

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気象庁によりますと、今回の震源は福島県沖で、地震の規模を示すマグニチュードは7.4。震源の深さは57キロです。
去年2月13日にもほぼ同じ場所で地震があり、震度6強を観測していました。地震の規模を示すマグニチュードは今回よりやや小さい7.3で、震源の深さは55キロとすぐ近くでした。
今回、去年とも、陸側の北米プレートの下に沈み込んでいる太平洋プレートの内部で起きていて、発生のメカニズムもほぼ同じと見られています。
東日本大震災の巨大地震は、マグニチュード9.0と、今回の地震の200倍以上もの規模でした。
このため、震源域周辺は、11年たった今も地震が起きやすい状態が続いているのです。

<地震調査委員会の見解>
国の地震調査委員会は、今回の地震を受け、きょう夕方、臨時の会合を開きました。
平田直委員長は「東北地方の太平洋側はもともと地震が多いうえ、11年前の巨大地震の影響を受けて地震活動が活発な状態が続いている。今後も、今回のような地震が起きる可能性が高い」と話していました。

<東北沖の地震発生確率>
さらに、気象庁や専門家は、今回や去年の地震とは違う、別のメカニズムで起きる地震にも注意が必要だとしています。

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このように、プレート内部ではなく、陸側のプレートと沈み込むプレートの境界で繰り返し起きている地震です。

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国は、こうした日本海溝沿いのプレート境界で起きる地震の発生確率を公表しています。今後30年以内にマグニチュード7から7.5程度の地震が起きる確率は、東北沖から茨城県沖のそれぞれの領域で、「90%程度以上」から「30%程度」とされています。
このプレート境界での地震と今回のようなプレート内部の地震、いずれの場合も今回より規模が大きかったり、震源が浅かったりすると、さらに大きな揺れや高い津波が襲うと想定されています。
家庭や地域、会社などで、地震や津波への備えをあらためて確認してほしいと思います。

こうした中で起きた今回の地震で、影響が長引きそうな被害の一つが新幹線の脱線です。
対策はどうだったのでしょうか?
注目点は、JR東日本の地震対策が、どこまで機能したのかだと思います。
脱線した「やまびこ223号」は、17両編成で、16両が脱線しました。乗客と乗務員、合わせて78人に、けがはないということです。福島駅から隣の白石蔵王駅に向かう途中で、脱線した時のスピードは調査中だということです。
今回の地震では、けが人はなく、想定通りに無事停止したように見えますが、まだ詳しい調査を待つ必要があると思います。

新幹線の基本的な地震対策を見てみます。新幹線では、大きく3つの地震対策がとられています。

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地震をいち早く検知して、大きく揺れる前に列車にブレーキをかける「早期地震検知システム」、高架橋などを耐震性の高いものにするというものです。
今回、検知システムが働き、非常ブレーキがかかったということです。高架橋は、一部が損傷し、レールにゆがみがみつかりました。レールがゆがんだことは、今後、対策が求められることが考えられますが、一方で、脱線現場からは距離があり、今回の列車と関係はないとみられています。

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3つ目の対策が、今回の、焦点になっている脱線した時の対策です。
2004年の中越地震で新幹線が脱線したのをきっかけに、対策が取られるようになりました。その方法は、路線によって異なりますが、東北新幹線では、レールを走行している列車が脱線した際に、車体がレールから大きく逸脱しないようにする、上の図の赤い部分「逸脱防止ガイド」が車輪のところに取り付けてあります。
仮に脱線しても、このガイドがレールに引っかかり、車体が転覆したり、高架橋から落ちたりするのを防ぐという考えです。
東北新幹線のすべての車両のすべての車輪の横に、このガイドが取り付けてあります。2011年の東日本大震災の時は、試運転の列車が脱線しましたが、設計通りレールにガイドが引っかかりました。

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今回、ガイドが引っかからなかったけれど、たまたま大きく逸脱しなかっただけということはなかったのか、逸脱防止のガイドが考えていた通りに機能したのかどうか、を確認することが、極めて重要です。
仮に、機能していないということになれば、東北新幹線の対策について見直しが求められる可能性があるからです。

下の図は全国の新幹線です。

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東北新幹線と同じ脱線対策は、北海道、上越、北陸新幹線にもとられています。東海道と山陽、九州新幹線では、異なる対策が採用されています。したがって、今回、対策が機能したかどうかは、
少なくとも同じ方法をとっている、上越・北陸・北海道の各新幹線にも影響します。
今後の調査のポイントこちらです。

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まずは、ガイドが、想定通りにレールに引っかかったのかどうか。仮に引っ掛からなかったケースが確認された場合は、なぜ引っ掛からなかったのか、といった点です。
JR東日本によりますと、復旧に時間がかかるため、2022年3月中の全線での運転再開は困難だということです。
東北新幹線の他、新幹線の交通網は全国的に広がっています。地震国日本の高速鉄道の安全性を確認するために、解明を急がなければなりません。

<今後の注意点>
今後の地震の見通しと注意点です。

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気象庁や地震調査委員会は、今後一週間程度、特に2~3日程度は、今回と同じ程度の地震が起きる可能性があるとしています。
揺れが大きかった地域では、再び激しく揺れるかもしれないと思って備えてください。
耐震性の低い古い住宅は倒壊する危険性があります。
また、倒れそうな家具はありませんか。特に、寝ている時にタンスが倒れたり、物が落ちてきたりしないか、注意が必要です。
それに、ブロック塀も倒れやすくなっているので、外でも気を付けて行動してください。

<18日から天気は下り坂 雨や雪の予報>
東北地方は、18日朝から雨や雪が降ると予想されています。崖が崩れやすくなっているほか、雪崩も起きやすくなっています。危険があるところには近づかないようにしてください。

(中村 幸司 解説委員 / 二宮 徹 解説委員)

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