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オミクロン株 ピーク越えたが死者増加 対策は

米原 達生  解説委員 中村 幸司  解説委員

新型コロナウイルスの感染による第6波で、全体の新規感染者数は、ピークを越えたように見えます。しかし、感染者の治療にあたる医療現場のひっ迫は続いています。第6波の死者数は、第5波を上回っています。
全国の中でも、大阪は病床の使用率が高く、死者の数も多くなっています。大阪では、高齢者に感染が広がっていて、亡くなる人をどう減らすかが喫緊の課題になっています。
今回は、オミクロン株による第6波について、今後、何が求められるのか。大阪の取り組みや課題を見ながら考えます。

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まず、感染の現状です。

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上の図は、全国の新規感染者数です。このうち、去年12月以降の年代別の感染者数を、人口あたりでみてみると、下の図の折れ線グラフのようになっています。

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20代など若い世代は、減少していますが、こちらの、60代、70代、80代以上は、横ばい、あるいは依然、増加傾向です。

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一方、重症者は高止まり、亡くなった人の数は増加が続いています。この要因が、高齢の感染者がなかなか減らないことにあるとされています。
今回注目する大阪の状況はどうなのか。
ことしに入っての死者数を見てみると、24日の時点で、全国は人口10万人あたり「3.4人」です。これに対して、大阪府は、「7.9人」と2倍以上になっています。

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大阪は、なぜ、これほど深刻なのでしょうか。高齢者に感染が広がってしまったことが第一の要因だと考えられています。

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上の棒グラフは、人口10万人あたりの高齢者の感染者数です。大阪は70代が303人、80代以上が543人と全国平均の2倍以上で、全国最多です。
要因としては高齢者と家族が近くに住むなど生活圏が近いのではないかという指摘があります。また、高齢者施設のクラスターは2022年2月に140件余りと急増し、詳しい実態が把握できないことを行政も認めています。

もう一つ、可能性として指摘しておきたいのは、医療へのアクセスの課題です。

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感染が急拡大した第6波で、大阪では検査がひっ迫し、発症から陽性確定までに3日以上かかった人も珍しくありませんでした。保健所には届出のファックスが大量に届いていて、それを入力し、連絡を取って療養方針が決まるのは、さらに数日後になることもあります。

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医療機関では発症から7日以内の投与となっている重症化を防ぐための点滴薬が、使えない事態もおきていました。

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その後は、ほぼ満床になり、初期治療での入院は困難になっています。

保健所がひっ迫しても医療につなげるよう、国は2021年の第5波以降、地域の医療機関などが保健所業務を支援することにしました。

大阪では、こうした対策はどうだったのか。
医師会は、国のそうした方針を周知しています。また、患者と関係ができている「かかりつけ医」が検査した場合は、往診したり訪問看護ステーションにつないだりしています。

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しかし、コロナの検査は感染防止のため、都道府県に指定された「診療・検査医療機関」で行われ、かかりつけ医で検査できるケースは必ずしも多くありません。保健所に聞いていますと、初めて訪れる医療機関で検査を受け、「あとは保健所の指示を受けて、悪くなったら救急車を呼んでください」と言われた患者も多いといいます。

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感染を防ぐために作った入り口で、患者が通常の医療から切り離される皮肉な状況になっています。

大阪府が第6波で亡くなった445人を分析したデータがあります。

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新型コロナが直接の死因になったのは6割程度。一方で、コロナが間接的に影響し、持病が悪化するなどして亡くなったケースも4分の1を占めています。治療開始の遅れや持病の治療の空白が、症状の悪化や死者の増加にどう影響したのか、きちんと検証する必要があると考えます。

▽保健所の負担を軽くすること、
▽患者に治療薬を迅速に届けること、
これらは、いずれも国が目指しているコロナ対策ですが、オミクロン株を前にその実現が難しくなっているケースがあるわけです。

大阪では、どう対処しようとしているのでしょうか。いま進められているのは高齢者への対策の重点化です。
高齢者施設に往診に向かう有志の医療チームが組織されています。「KISA2隊」です。医療がひっ迫し、入院できない中で、集団感染が起きた高齢者施設に入って、薬や酸素投与を行います。大阪府は府内8つの地域それぞれで、こうしたチームを設けようとしています。

一方、豊中市などでは、地元の医師会が協力して、感染者への最初の連絡やその後の相談にのる仕組みを作り、保健所はリスクの高い人の対応に重点化している自治体もあります。
地域の医療事情を最もよく知っているのは地元の医師会です。感染力の高いオミクロン株に対応するには、感染者を隔離する観点から、重症化リスクを減らす観点に重心を移して、行政と医師会が戦略を組み直す必要があると考えます。

医療がひっ迫し、対策がなかなか追いつかないのは、大阪だけではありません。重症の高齢者が、全国各地で多くなっています。
オミクロン株は、「重症になるリスクは低い」と言われているのに、なぜなのでしょうか。

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デルタ株のとき、若い世代は感染すると、軽症などともにウイルスによる症状の悪化、重症化がみられました。

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オミクロン株では、比較的多くが重症化しないで軽症、あるいは無症状です。
一方で、高齢者は、オミクロン株の感染で重症化するだけでなく、感染をきっかけに、基礎疾患が悪化し、これによって重症化するケースが相次いでいます。

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若い世代にとっては、重症化しにくいととらえられるオミクロン株も、高齢者にとっては、依然、リスクが高いと考える必要があります。

新規感染者数はピークを越えて、減少傾向になっています。しかし、専門家からは、今後、感染が拡大するおそれはあると指摘されています。そう考える理由は何なのでしょうか。

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ひとつは、年度末が近づいていることです。卒業式や歓送迎会など、大人数あるいは家族以外の人と会合を開く機会が増える時期を迎えます。2021年は、3月後半からの感染拡大が第4波となりました。
もう一つは、海外で広がっている「BA.2」と呼ばれているオミクロン株です。BA.2につついては、まだ詳しい特徴はわかっていません。ただ、日本国内で感染の主流となっているオミクロン株(「BA.1」と呼ばれています)より、感染力が高いとみられています。すでに東京や大阪などで、いわゆる「市中感染」が見つかっています。それだけにBA.2による感染の再拡大に警戒が必要と考えられています。

ここまで示してきたように、感染拡大の危険性、大阪でみられたようなオミクロン株対策の難しさ、高齢者のリスクが依然高いといったことを考えると、ワクチンの3回目接種の重要性があらためて浮かび上がってきます。
しかし、高齢者の接種率は、2月24日時点で44パーセントと公表されています。3回目接種を受けていないお年寄りは、まだ多くいます。この要因として、準備の遅れや3回目に違うワクチンをうつ「交互接種」への抵抗感などが指摘されています。
3回目接種の必要性について理解を進めて、希望する高齢者への接種を急ぎ、医療のひっ迫を抑える必要があります。そして、地域の医療を、高齢者の感染対策にどうつなげていくのかという、オミクロン株の特性を考えた体制づくりが、いま求められています。

(米原 達生 解説委員 / 中村 幸司 解説委員)

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