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オミクロン株 ここまでわかった特徴と第6波対策

中村 幸司  解説委員

「オミクロン株」の感染が、これまでにないペースで広がっています。政府は、まん延防止等重点措置の適用を、沖縄県など3つの県から、2022年1月21日以降、東京都や愛知県などを加えた16の都県にすることを決めました。
今回は、これまでにわかってきたオミクロン株の特徴を見た上で、オミクロン株の感染を抑える行動とはどういったものなのか、第6波の対策に求められることを考えます。

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感染が急拡大した変異ウイルス=オミクロン株の特徴について、これまでに、どこまで分かってきたのか。

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感染力がこれまでのデルタ株よりも強く、重症化するリスクは低くなっているのではないかと言われています。

まず、感染力です。

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こちらは、全国の新規感染者数の推移です。1週間の感染者数が前の1週間の何倍になったか、感染が大きく拡大した第5波の時は最大2.3倍でしたが、第6波では最大10.0倍と急な角度で立ち上がっています。デルタ株からオミクロン株への置き換わりも急速に進んでいます。

なぜ、これほど急拡大するのか。

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ひとつは、ウイルスの持つ感染力により、感染させる相手が、デルタ株より多いことがあります。

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これとあわせて、感染してから次の人に感染させるまでの時間が短くなっています。この双方が合わさると、短い期間に、多くの人が感染することになります。これが急拡大につながっていると考えられます。オミクロン株は、感染の「展開がはやい」のです。

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そして、オミクロン株は変異によって「上気道」と呼ばれる、のどのあたりの細胞に感染しやすく変化したとみられています。

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口に近いところで、ウイルスが増殖することになるため、多くのウイルスが飛まつと一緒に口から外に出やすくなります。周囲の人に対して、「飛沫感染しやすく」なっているのではないかと考えられています。

オミクロン株が、体の中のどこの細胞に感染しやすいか。そのことは、重症化にも関係しているとみられています。

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オミクロン株は、上気道で感染しやすい一方で、デルタ株に比べて、肺の細胞には感染しにくいという実験データがあります。このため、肺炎などを起しにくく、重症化しにくいのではないかと考えられています。

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感染しても「無症状」、あるいは「鼻かぜ」のような症状で、新型コロナに「感染したと気づかない」こともあると言います。感染者が重症になる割合が低いことを示唆する研究は、イギリス、アメリカなど各国から報告されています。
ただ、これらの研究はワクチンの接種率が上がったことや、感染者の多くが若者である点などが影響している可能性があり、どこまで重症化しにくいのかについては、慎重に見ていく必要があるとされています。

その重症者は、いまどれくらいいるのか。全国の重症者や死亡した人の数が図の下の部分です。

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これまでのところ、比較的少ない数で推移しています。ただ、感染者の増加に伴って、重症者数は、数日ほど前から増え始めたように見えます。重症になる人の割合が小さくても、感染者全体の数が増えれば、それに伴って重症者、死亡する人も増えてくると考えられます。また、感染が高齢者に広がれば、重症者が増える傾向が強まるおそれがあると指摘されていますが、現状は、すでに、その入り口にいるのかもしれません。

私たちは、こうしたオミクロン株の特徴を理解して、行動する必要があります。

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大勢が会食で集まれば、その中には、オミクロン株の特徴の「感染に気付いていない」人がいて、マスクをしないでおしゃべりすれば、飛沫によって多くの人が一度に感染してしまいます。
一方、「風邪かな?」と体調不良を感じた時、「オミクロン株かもしれない」と考え、さらに「感染の展開がはやい」ことを考慮して、すぐに電話で相談、検査や医療機関への受診といった対応をすれば、周囲への感染拡大を防ぐこともできると考えます。ウイルスの特徴に合わせた行動をとることで感染リスクを抑える必要があります。

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しかし、例えば「外出をどこまで控えたらいいのか」という点については、リスクを下げるために、「控えるべき」という考えと、「対策をすれば控える必要はない」という考えに、関係者の間でも意見は分かれます。
オミクロン株対策に行動の制限がどこまで必要なのか、ウイルスの特徴が解明される中で、今後、政府には、基本的な考え方を示すことが求められます。

第6波の対策で重要なこと、ひとつはワクチンの3回目接種になります。

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こちらはイギリスの保健当局のデータです。ファイザーのワクチン接種後のワクチンの有効性=発症予防効果を示したものです。全体に、デルタ株よりオミクロン株の方が、効果は低くなっています。接種から時間が経つほど低くなり、接種後25週以上では、オミクロン株に対するワクチン効果は10%にまで下がっています。
しかし、ファイザーのワクチンの3回目接種をすると、発症予防効果は、大きく上がります。3回目にモデルナのワクチンを使った場合も、効果が上がります。こうしたデータから、オミクロン株対策として、3回目接種が期待されています。
政府や自治体は、3回目接種の時期を前倒しして医療提供体制を維持するための「医療従事者」、それに、重症化のリスクの高い「高齢者」への接種を急いでいます。

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ワクチンの配送の計画を見ると、医療従事者は、今月中に配送を完了する予定ですが、65歳以上の高齢者分のおよそ7割は、来月の配送になります。いまの第6波には、間に合いません。同じ様に重症化リスクのある基礎疾患のある人にも3回目接種を急ぐ必要があります。リスクの高い人たちが接種を受けるまで、どう感染を抑えるかが課題です。

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そして、もう一つ指摘しておきたいのが、「自宅療養者」へのケアです。第5波では、医療のひっ迫などの混乱で、自宅で死亡するケースがありました。
これを教訓に、各都道府県では、
▽検査で陽性となった当日か翌日には、健康観察や訪問診療が行えるようにすること
▽飲み薬も診断の当日か翌日に届けられるようにすること
など体制の強化を進めてきました。
しかし、感染者と同じように自宅療養者も増え続けています。東京都では、1月19日の時点で、すでに1万5000人あまりに上っています。オミクロン株では、軽症患者が多いだけに今後、各地で自宅療養者が想定を超える数になる可能性があります。自宅療養とされた人が亡くなるようなことが、繰り返されないために、限られた体制をどのように運用するのか、検討を加速させることが求められます。

日本でも、オミクロン株への置き換わりは進み、1月16日までの1週間で、全国の感染者の90%以上がオミクロン株の感染とみられています。オミクロン株対策は、まん延防止等重点措置の16都県にとどまらず、全国で必要です。今後、感染者のピークが、いつ、どれくらいになるか、いまは見通せません。3回目接種を受けていない高齢者の間に、オミクロン株が広がったとき、重症の患者がどれくらい増えるのか、そのとき医療はどうなっているのか、想定するのは、簡単ではありません。このため、一人一人がオミクロン株の特徴を考えて、行動をすることが必要です。あわせて政府には、展開のはやいオミクロン株に対して、
遅れることなく有効な対策を講じていくことが求められます。

(中村幸司 解説委員)

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