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「まん延防止等重点措置"拡大" 対策のさらなる徹底を」(時論公論)

中村 幸司  解説委員

新型コロナウイルスの感染が再び各地で広がってきています。政府は、感染の拡大を抑えるため、「まん延防止等重点措置」を東京、京都、沖縄の3つの都府県に新たに適用することを決めました。2021年4月5日に、大阪など3府県に適用したのに続くものです。
重点措置は、緊急事態が宣言されていない段階でも、新型コロナウイルスの感染対策を強く進めようというものです。感染拡大をまねかないために、いま、何を求められているのか考えます。

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まん延防止等重点措置は、すでに、宮城、大阪、兵庫の3府県に適用されていますが、これに加えて、東京都、京都府、沖縄県に適用されることになりました。

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対象地域は、東京が23区と八王子市など6つの市、それに、京都市、沖縄が那覇市など9つの市となります。期間は4月12日からで、東京は5月11日まで、京都と沖縄が大型連休最後の祝日の5月5日までです。

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なぜ、この3都府県に適用されたのでしょうか。東京都の感染者数を見てみると、緊急事態宣言が解除される前の、3月上旬から緩やかな増加傾向が続いています。京都府は、3月下旬から1週間の平均が前の週の2倍以上になるような急上昇を見せています。沖縄県は、3月に入って以降、増加傾向が止まらず、最近は急激に増えています。
さらに、新型コロナの患者用の「病床=ベッドの使用率」、あるいは「感染経路が分からない人の割合」といった指標が高くなるなど、感染の拡大や医療体制のひっ迫が懸念されているためです。

重点措置は、緊急事態宣言とどう違うのでしょうか。

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緊急事態宣言は、感染状況が最も深刻な「ステージ4」に相当するかどうかです。これに対し、重点措置の適用は感染状況がそれより低い「ステージ3」が想定され、ケースによっては「ステージ2」での適用もありえるとされています。対象地域は、宣言は都道府県単位ですが、重点措置は、知事が市区町村など特定の地域に対策を講じます。宣言で可能な休業要請は、重点措置では出来ませんが、罰則はあります。重点措置は、緊急事態宣言に準じた対策を機動的に行うことができるとされています。

では、すでに重点措置が適用されている大阪府の感染状況はどうなっているでしょうか。

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大阪府は、4月8日まで3日続けて、過去最多の感染者が報告されるなど急増しています。
大阪府では、繁華街の人出は、最近まで多い状況でした。飲食店の営業時間の短縮は、緊急事態宣言解除後、緩和されましたが、継続され、重点措置の適用によってさらに、長く継続されています。専門家は、「人々が対策に慣れてしまって、効果が出にくくなっている」と指摘しています。さらに、大阪府の急増の要因として挙げられているのが、感染力の強い変異ウイルスです。関西では、変異ウイルスが確認されるケースが多く、大阪と兵庫で全国で確認される変異ウイルスの、30%から40%あまりを占めています。感染力は従来のウイルスの1.3倍とも1.7倍ともいわれ、感染者急増の要因とみられています。

新たに重点措置が適用される、東京の状況は、どうなのか。

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大阪に似てきているとも考えられます。緊急事態宣言、解除後、夜の繁華街の人出が急増したほか、東京も、飲食店の営業時間短縮、テレワークなどの呼びかけが、長い期間続いています。
そこに、4月8日、警戒感を一層強めるデータが発表されました。

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3月から4月初めまでの期間のデータです。これまで、東京では、感染力の強い変異ウイルスの感染例は、関西ほどの数は確認されていませんでした。ところが、その変異ウイルスの確認の割合が、4月4日までの1週間で、前の週の4倍の32%に急増していることが報告されたのです。変異ウイルスが「いずれ感染の主流になる」という、心配されている事態に近づいていることが示唆されたのです。このように、東京は、大阪と状況に共通点があり、感染の急拡大に警戒する必要があります。

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さらに、現状について、第3波のときと似ているという指摘もあります。第3波は、クリスマスや年末年始という人の集まる機会の多い時期にあたり、この時期に開かれた会合などが、感染拡大につながったと専門家は分析しています。現在は、年度初めで歓迎会など、例年なら多くの会合があります。また、大型連休もひかえています。第3波では、当初、若者の感染が多く、次第に高齢者に広がり、重症者の増加、医療崩壊へとつながりました。
一方、現在の感染者、多くは若者であることが分かっています。今後、高齢者の感染や医療崩壊と、第3波と同じ道をたどることがないよう、これからの対策の重要性を指摘する声も聞かれます。これは、東京に限らず、京都や沖縄をはじめ、各地に言えることでもあると思います。

では、まん延防止等重点措置で、感染を抑えるにはどういったことが求められるのでしょうか。

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対策の一つのポイントになっているのが、飲食店の営業時間短縮がどこまで徹底できるかです。大阪府では、職員がパトロールをしていますが、大阪や東京といった店の数が多い大都市で、こうした方法でどこまで徹底できるか、課題を指摘する声も聞かれます。自治体だけでなく、店側、利用する客側の一層の協力が必要です。もう一つが、いかに人の移動を減らすかです。大型連休など、人の動きが多くなる時期の感染拡大を防ぐとともに、変異ウイルスが多い地域との人の行き来を極力減らすことで、感染力の高いウイルスが広がるのを抑えることが必要になっていると思います。そのためには、従来から言われている、テレワークの徹底、あるいは、都道越える移動をしないようにすることで、たとえば、東京で増加する感染が周辺地域に広がらないようにすることも重要です。さらには、感染状況によっては、人の集まるイベントの自粛などについても、現状より厳しくするなど、対策をより徹底させることが必要です。

もう一つ強調しておきたいのは、まん延防止等重点措置の効果を上げられるかどうかが、今後の感染対策に大きな影響を与える点です。

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感染の広がりが見えたとき、その予兆をつかんで、重点措置によって感染者の数を小さい山に抑えることが重要です。

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重点措置の効果が現れず、感染が拡大すると、年末年始に第3波で経験したような「医療崩壊」につながってしまいます。医療が立ち行かなくなると、新型コロナの患者だけでなく、一般医療、さらには、各地で始まる高齢者を対象にしたワクチン接種に、影響が出ることも懸念されています。感染力の強い変異ウイルスが、国内でも広がってきていることを踏まえて、私たちは、より強い感染対策をとることが、いま必要になっていると思います。

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私たちはこれまで、第1波、第2波、第3波と大きな感染を経験してきました。次の大きな感染拡大を引き起こさないために、ひとり一人が対策を徹底し、重点措置を効果的なものにできるかが、いま問われていると思います。

(中村 幸司 解説委員)

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