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「感染対策を万全に! あすから大学入学共通テスト」(時論公論)

二宮 徹  解説委員

大学入試センター試験に替わる、初めての大学入学共通テストが、あす16日から始まります。緊急事態宣言が11都府県に出されていますが、共通テストは試験会場の感染対策を徹底したうえで、予定通り実施される見通しです。受験生の安全・安心は確保できるのか。共通テストをはじめ、感染が急拡大する中で迎えた受験シーズンに求められる対応について考えます。

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<緊急事態宣言でも実施>
「大学入学の共通テストについては、感染防止対策に万全を期した上で予定通り実施する」
萩生田文部科学大臣は今月5日の記者会見で、このように述べ、緊急事態宣言が出されても大学入学共通テストは予定通り行うと強調し、今もその方針は変わっていません。
試験中は基本的に会話がなく、座席の距離もあり、感染症の専門家も「対策を取れば、入試で感染するリスクは低い」としているためです。

<初の大学入学共通テスト>

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大学入学共通テストは、1990年から31年続いた大学入試センター試験に替わるもので、初めての今年はおよそ53万5000人が志願し、私立大学を含めて866校が参加します。いったん決まった英語民間試験や、国語と数学の記述式問題の導入は見送られ、センター試験とほぼ同じ形で行われます。
感染拡大や授業の遅れに対応するため、異例の3回の日程が2週間間隔で組まれています。
第1日程はあす、あさって(16、17日)。この追試を兼ねた第2日程が今月末に設けられ、来月13日と14日にも特例の追試が行われます。受験生には事前に健康状態を記録してもらい、感染者のほか、当日37度5分以上の発熱やせきが続くなどの症状がある受験生は、次の日程に振り替えます。感染後、回復して追試を受ける場合は医師の診断書などが必要です。今のところ、第2日程の志願者は少ないため、第1日程を受けられない受験生が多くなっても混乱はないと見られます。
また、濃厚接触者とされた受験生は別室で受験しますが、行政のPCR検査で陰性、試験当日に無症状、会場まで公共交通機関を利用しないなどの条件があります。

<試験会場の感染対策は?>
感染の急拡大を受けて、文部科学省や運営にあたる大学入試センターは、会場となる各大学に、感染対策の徹底を求めています。
このうち、緊急事態宣言が出されている岐阜県の岐阜大学では、座席の間隔をあけるため、会場の教室を増やしたほか、15日は翌日の本番に備えて、教室の前に消毒薬を置いたり、試験監督が立つ教壇にアクリル板を立てたりしていました。

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試験会場での感染対策は、受験生、試験監督とも原則、常にマスクを着け、座席の間隔を1メートル程度確保するほか、1科目終了ごとに10分程度以上換気するとしています。昼食は自分の席で弁当などを食べ、会話はしないとするほか、急な体調不良に対応する医師や看護師も配置します。また、濃厚接触者の受験生が入る別室は、座席の間隔をおよそ2メートル以上空けます。

<共通テスト 残る不安は?>
こうして対策が取られる中でも、受験生の不安は残ります。

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一つは、共通テストの会場に入る際、検温が行われないことです。文部科学省は、検温をすると、入場時の混雑や測定ミスで、「かえって無用の不安感や動揺を与えるおそれ」があるとして、サーモグラフィーなども使わないよう求めています。
これに対しては不安や疑問の声もあがっています。このため、何度もせきをする受験生は別室に移ってもらうなど、入口や会場での観察や対応を万全にする必要があるでしょう。
また、1科目ごとに10分程度以上換気するとしている点も気になります。外の気温や会場の広さ、暖房の効き具合などによって、極端に寒くなるなど、テストに集中できなくなるおそれがあります。
受験生は調節しやすい服装をする一方、会場の担当者も教室ごとの様子に気を配ってほしいと思います

<個別試験も心配>
そして、共通テストが無事行われたとしても、来月から本格化する個別試験が心配です。

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個別試験は、各都道府県で受けられる共通テストと違って、全国で受験生が移動します。特に東京や大阪などの都市部には多くの受験生がやってきます。
感染が拡大する中、「状況次第で個別試験の中止や変更をする」という大学が増えていて、東京外国語大学はすでに、試験時間を短縮し、開始も午後に繰り下げると発表しました。
横浜国立大学は、当初から個別試験をせずに、共通テストを軸に合否を判定するとしてしますが、感染状況によっては、他にもこうした大学が出てくるかもしれません。
受験生が追い込みの勉強をしながら、大学の発表を頻繁にチェックするのは大変です。中止や変更をする大学はできるだけ早く、ホームページなどで知らせるほか、高校や予備校も情報の入手や連絡に努めてほしいと思います。

<高校や予備校、塾は?>
万全な感染対策が求められるのは試験会場だけではありません。受験生を送り出す高校や予備校、塾も同じです。

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高校は緊急事態宣言が出された地域を中心に多くが部活を中止や短縮したり、分散登校や下校時間を早めたりしています。受験生の授業をオンラインに切り替えた高校や予備校、塾もあります。
文部科学省によりますと、去年6月から12月までに感染の報告があった高校生2350人のうち、学校内で感染したと見られる割合は28%。小学生の6%、中学生の11%に比べ、かなり高い割合です。
高校は、特に学校内の感染対策のさらなる徹底が必要です。

<ことしの受験生>
大学入試だけでなく、高校や小中学校の入試もこれから本格化します。ことしの受験生は皆、これまで大変な状況を乗り越えてきました。

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去年の春の一斉休校で授業が遅れたうえ、部活動の大会や修学旅行、文化祭などの行事の中止や縮小も相次ぎました。いよいよ本番という今になって、感染拡大に直面しています。
各地の高校や小中学校の入試も、大学と同様、感染状況によっては、日程や方法の変更があるかもしれません。各教育委員会や学校法人でも、万全な感染対策と配慮をしてほしいと思います。

<地域や社会全体で取り組みを>
感染が急拡大する中で、本格的な受験シーズンを迎えました。受験生とその家族は、常に感染リスクを気にする生活が続きます。入試の安全・安心を万全にするには、試験会場や交通機関、ホテルなどだけでなく、地域や社会全体で取り組む必要があります。
苦しい中を頑張ってきた受験生たちが、落ち着いて実力を発揮できるよう願っています。

(二宮 徹 解説委員)

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