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「新型コロナウイルス 2度目の緊急事態宣言 その課題は」(時論公論)

中村 幸司  解説委員

新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。菅総理大臣は、全国の感染者の半分ほどを占めている東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象にした、緊急事態宣言を発表しました。また、大阪府と兵庫県、京都府も、宣言の要請に向けて、知事が調整や検討に入っています。
緊急事態宣言は、2度目になりますが、それを実効性あるものにするために、何が必要なのでしょうか。

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解説のポイントです。
▽これまでの感染の状況から、緊急事態宣言に至った理由を見た上で、
▽進められる対策の課題
▽今後、求められることを考えます。

下の図は、全国の感染者の日付ごとの人数です。

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11月ころから増加傾向が続いていることがわかります。2021年1月7日は、全国の1日の感染者が初めて7000人を超えました。

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東京都の2020年10月以降の感染者数の推移が上の図です。1月7日は、2447人と初めて2000人を超えました。東京では、街中で、症状の軽い人や無症状の人などからも感染が広がり、いわゆる「市中感染」が起きているとみられています。生活の中での感染対策の一層の強化が必要になっていると言えます。

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新型コロナウイルスの感染拡大では、マスクを外す飲食の時に、それもお酒を飲みながらの飲食で、感染が広がるケースが多いとされています。このため、東京都は、11月下旬から酒類を提供する飲食店などの営業時間の短縮を求めました。しかし、その効果は表れず、感染者の増加傾向は続きました。
一方、上の図の下段は全国でも早くから感染が増加した北海道です。11月上旬から営業時間の短縮要請を行い、このように感染者は、減少傾向になってきています。
この違いはどこから来るのか、一つ指摘されているのが、歓楽街の人出です。

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上の図の赤い線は、北海道の歓楽街「すすきの」の午後9時の人出の変化を見たものです。営業短縮を要請した後、このように人の流れが減少しています。これに対して、東京都の歓楽街では、ほとんど変化がありませんでした。東京都では、営業時間短縮の要請に応じない飲食店が比較的多く、人出も減少せず、こうしたことが感染者の減少につながらなかったと分析しています。

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東京都の感染者の増加が、周辺の3つの県に「しみでている」と政府の分科会は表現しています。感染者が増えたことによって、1都3県では、
▽全国の感染者の半数を占めています。▽感染した人の治療にあたる病院のベッドに余裕が少なくなっているほか、
▽「市中感染」を示すデータもみられます。
▽日本医師会の中川会長は「治療が必要な人に十分な治療ができない「医療崩壊」になっている」と指摘しています。
こうした状況が、緊急事態宣言につながりました。

緊急事態宣言は、2021年1月8日から、2月7日までです。対象地域は、首都圏の1都3県。

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「基本的対処方針」では、具体的な対策として、今回の対策の重点である飲食店などに対しては、営業時間を午後8時までに短縮するとともに、酒類の提供は午前11時から午後7時までとするよう要請。要請に応じないときは、店の名前を公表することもでき、東京で、なかなか協力が得られなかった営業時間短縮の実効性が上がることが期待されます。
午後8時以降の不要不急の外出の自粛の徹底を促す。
飲食だけでなく、職場への出勤については、テレワークなどを推進して7割削減するなどといったことが盛り込まれています。
こうした対策をすすめることで、北海道でみられたような、感染者数の減少につなげる狙いです。

1月7日は、緊急事態宣言をめぐって、各地で動きがありました。
大阪府では、これまでで最も多い600人を超える感染者が確認されました。大阪府と兵庫県、京都府は、政府に対して3府県に緊急事態宣言を出すよう、要請に向けて調整や検討に入っています。
また、感染者が過去最多の400人を超えた愛知県の大村知事も、「政府に宣言を要請するかどうか週末の状況をみた上で判断したい」と、述べています。
このように感染拡大が、全国的な広がりを見せる中で、飲食店の営業時間短縮を中心とした対策で、十分と言えるのでしょうか。
これまでの経過を振り返って考えてみます。

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初めて緊急事態宣言を発表した第1波では、人と人の接触を極力少なくするため、テレワークの実施、イベントや百貨店など人が集まる施設を休みにするなど、社会・経済活動を大きく抑えました。
第2波では、接待を伴う飲食店を中心に感染が広がったため、そうした店に営業時間の短縮を求めるなどの対策を徹底し、感染者の減少につなげました。
第3波では、感染拡大は、飲食の場が中心であることから、飲食店に時間短縮を求めることとしています。
一見、第2波と同じような効果が期待されますが、専門家は、第2波とは状況が異なると話しています。

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第2波は、クラスターをほぼ消失させた段階からの感染拡大であったのに対して、第3波は、若者の集まりや職場、家庭など様々なところで多様なクラスターができています。それだけに、「飲食店中心の対策は重要ですが、他の対策を併せて行わないと実効性が上がらないのではないか」という指摘もあります。

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政府の分科会は、1都3県は、4段階のステージのうち最も深刻な「ステージⅣ」に相当するとしていますが、尾身茂会長は一つ下の「ステージⅢ」まで感染状況を下げるのは、1か月以内では至難の業だ」と話していて、一定の時間がかかるとの見方を示しています。
緊急事態宣言が長引くと、これまでも大きく影響を受けてきた飲食店にとっては死活問題で、医療体制のひっ迫した状況も、結局は長く続いてしまうことになります。

では、どうすることが求められるのでしょうか。

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ひとつは、基本的対処方針の徹底です。飲食店に、営業時間短縮に協力してもらうことはもちろんですが、営業時間内についても、飛沫による感染を防ぐアクリル板の使い方などを盛り込んだ2020年11月に改正された感染対策ガイドラインの順守が必要です。
ただ、そうしたことだけではないと思います。感染が拡大した理由の一つに、社会全体として、危機感が薄れてきたとも指摘されています。それだけに、私たち一人一人は、仕事をする際、あるいは個人で行動する際、たとえば、感染が広がっている地域との間の行き来をしないよう自粛するなど移動や人との接触をできるだけ減らす必要があると思います。

首都圏だけでなく近畿、中京圏などでも感染の拡大が加速している中にあって、こうした様々な対策の強化も政府から積極的に呼びかける必要があるのではないでしょうか。
そうしなければ、短期間で感染者数を減少に転じさせることや、減少のスピードを速めることはできないと思います。

去年の年末ごろから、各地で過去最も多い感染者が相次いで確認され、感染拡大の速度が速まっているようにも感じます。私たち一人一人が、こうした現状を理解して対策に取り組むことが大切で、政府や自治体には、国民が理解できるよう丁寧な説明をすることが求められます。第1波、第2波といった、これまでの経験を生かして、先を見越した対策をどこまでとれるのか、国や自治体の連携した対応が、ますます重要になってきています。

(中村 幸司 解説委員)

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