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「新型コロナウイルス 『勝負の3週間』と年末年始に向けた対策」(時論公論)

中村 幸司  解説委員

「勝負の3週間」で感染を減少に転じさせることはできませんでした。新型コロナウイルスの感染拡大傾向は続いています。政府は、2020年12月28日からGoToトラベルを全国一斉に一時停止にするとしています。一方、病院ではひっ迫した状態が続いていて、医療の態勢が薄くなる年末年始を控えて、医療崩壊を招かないか、危機感を訴える声も聞かれます。

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今回は、
▽感染の現状と医療現場でどういったことが起きているのかを見た上で、
▽年末年始に向けて、感染拡大を抑えるために、どういった課題があるのか
▽今、求められることを考えます。

まず、全国の感染の現状です。

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上の図は、1日ごとの感染者数の推移です。西村経済再生担当大臣が、「勝負の3週間」と表現した2020年11月25日の後、増加の傾向が一度止まったように見えた時もありましたが、再び増加しています。1日の感染者が3000人を上回る日もあるなど、予断を許さない状況が続いています。
感染者数とともに、深刻なデータのひとつが重症者数です。12月18日はおよそ600人と、11月以降、ほぼ毎日増え続けています。重症者の増加に伴って、亡くなる人も増えています。勝負の3週間とされた期間に全国で687人、1日に30人以上の方が亡くなっています。その前の3週間は220人ですから3倍以上、死亡者数を3週間ごとに見ても、急激に増えていることがわかります。

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これは、感染者の中で高齢者が少なくないことが影響しているとみられています。重症患者が増えて、それが亡くなる人の増加につながってしまっているのです。いまの感染拡大は、1日でも早く、減少に転じさせなければならないのです。

一方、治療にあたる医療機関の態勢も深刻になってきています。

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新型コロナウイルスの患者の治療には、医師や看護師など多くの人が必要になるため、ベッドとスタッフを確保するのは簡単ではありません。感染が確認された人は、症状や年齢などによって、在宅、ホテル、病院それも症状が重ければ重症患者用ベッドに入ります。ただ、空きベッドや医療スタッフが足りず、こうした在宅なのか病院なのか振り分ける調整作業にも時間がかかってしまいます。
規模の大きな病院の多い東京都でも、さらにベッドが必要になってきていて、東京都は、新たに1000床確保して、これまでの3000床から4000床に増やすことにしています。

医療体制のひっ迫は、都市部だけでなく、地方でも課題になっています。

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上の図は、「勝負の3週間」の21日間に各都道府県で確認された感染者数を色別で示したものです。東京周辺の1都3県や愛知県、大阪周辺で多くなっていますが、あわせて、これまで大きな感染がなかった青で囲んだ7つの県でも感染拡大がみられています。このうち広島県と福岡県について見てみますと、感染状況は急増しています。大都市から、飛び火するように広がったとみられています。病院の数が少ない地方では、短い期間で医療態勢がひっ迫する恐れがあります。ベッドや人手の確保などの備えは、全国で必要でこれ以上感染が拡大すれば、各地で問題が表面化してくる恐れがあります。

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さらに、感染者が確認された時、もとの感染源は誰なのか、どこでうつったのか保健所が調査しますが、その保健所の態勢も追いつかなくなってきています。保健所の調査が十分できなくなると、感染経路が不明となり、ウイルスの封じ込めができず、感染者が増えるという、悪循環になってしまいます。
勝負の3週間で感染を抑え込むことはできませんでした。ただ、これで対策が終わったわけでなく、医療態勢が薄くなる年末年始の前に、十分感染者を少なくできるか、12月18日から年末までの10日程が、次の勝負になります。

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その上で、いま課題とされるのは、一つは直近の増加傾向を減少に転じさせて、重症患者や、亡くなる人を1人でも減らすことです。こうできれば、おのずと医療機関のひっ迫した状況も改善に向かうことになります。そして、人が集まることの多い年末年始の行事などをきっかけとして、年明け2021年1月に感染が拡大するようなことがないようにすることです。
これに対して政府は、GoToトラベルについては、12月28日から2021年1月11日まで全国で一時停止に、GoToイートも販売済みの食事券などの利用自粛の検討を要請するとしています。GoToイベントの割引やGoTo商店街のイベントも、一時停止することにしています。これは、年末年始のイベントや会合などをきっかけにした感染を抑えると同時に、仕事が休みの人が多いこの時期を利用して、感染を低いレベルにまで抑え込もうとしています。

年末年始の感染対策も重要ですが、いま直面しているのは、毎日のように2000人を超える感染をどう抑えるのかという問題です。では、これに向けて、何が求められるのでしょうか。政府の分科会の専門家などが考えているのが、酒を提供する飲食店などに対して、営業を午後10時までにするなどの営業時間短縮の要請による効果です。政府は、都道府県が店側に協力金などを支払う場合、それを支援するとしています。すでに、北海道、東京、愛知、大阪など全国15以上の都道府県で行われています。現在の感染拡大では、若者の会食の場などでウイルスが広がって、それが高齢者などにも感染しているケースが多いのではないかと想定されていて、営業時間短縮が感染対策に効果的と考えられています。実際、札幌のススキノで11月上旬から時間短縮を行った北海道は、感染者が減少傾向を見せ始めています。
ただ、どこまで徹底できるかが課題です。中には時間短縮をせずに営業している店もあるとみられているからです。そして、効果を検証して、営業時間について、さらに短縮する必要があるかどうかや、対象とする地域を広げるなどの措置も検討が必要になると思います。
こうした、飲食店の営業時間短縮が現在の感染対策で大きなカギを握っているという重要性を正確に理解している人はどれだけいるでしょうか。
政府の情報の伝え方をめぐっては、感染が拡大する中、GoToトラベルを進める姿勢に、感染対策と経済対策のどちらを重視すればいいのか、わかりにくいといった意見が出されていました。政府には、感染対策の重要性やどのような効果を狙ったものなのかを、国民にわかりやすく説明することが必要ではないでしょうか。それなしには、多くの店や利用者、国民に協力してもらうことは難しいと思います。

まだ、私たちは新型コロナウイルスの感染をコントロールすることはできません。それだけに一人一人が少しでもリスクの小さい行動をとることが大切です。
今度の年末年始は、いつもの年とは違う、少人数で、時期をずらして、3密をさけて行動する、こうしたことを徹底して、全国でGoToトラベルやGoToイートを再び始められるまで感染を抑え込むことが求められています。

(中村 幸司 解説委員)

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