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「合流新党 なるか『1強』打破」(時論公論)

曽我 英弘  解説委員

立憲民主党と国民民主党などが合流して結成する新党の代表に枝野幸男氏が決まりました。自民・公明両党が政権に復帰して7年8か月、この間「1強」と称される状況が続きましたが、安倍総理大臣の辞任表明で日本の政治はひとつの節目を迎えています。新党が離合集散の歴史に終止符を打ち、自民党に代わる政権の選択肢となり得るのか。課題と今後を展望します。

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【新代表に枝野氏、政権交代前の規模に】

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立憲民主党と国民民主党などの合流新党は10日代表選挙を行い、枝野幸男氏を代表に選出しました。また党名を立憲民主党とすることもあわせて決めました。これを受けて枝野氏は「ここから本当の戦いが始まる」と述べ、与党への対決姿勢を鮮明にしました。
合流新党は立憲民主党から88人、国民民主党から40人のほか、野田前総理大臣や岡田元外務大臣、中村喜四郎元建設大臣ら無所属議員21人も加わって149人となります。非自民勢力の「大きな塊」を目指して、去年暮れに合流構想が浮上してから半年あまり。数の上では、2009年に政権交代を果たす前の旧民主党や、その3年3か月後に政権復帰する前の自民党に匹敵する勢力の野党第1党が誕生することになります。

【合流背景に衆院選への危機感】
合流の背景には何があるのでしょうか。

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両党などは去年秋以降、国会で会派を共にし、政権の公文書管理や新型コロナウイルスへ対応などをめぐって足並みを揃えて追及し、提案もしてきたことで、一定の信頼関係を築いてきたことがあると言えます。ただ、このタイミングを選んだ最大の理由は、来年10月までに必ず行われ、年内の憶測も出ている衆議院選挙への危機感といって間違いありません。
旧民主党政権が下野した2012年以降、非自民勢力は過去6回の国政選挙をバラバラに戦っては票が分散して共倒れし、与党を利する結果を繰り返してきました。中でも前回2017年、突然の衆議院の解散に動揺した当時の野党第1党・民進党は分裂し、289の小選挙区のうち200を超す選挙区で、民進党議員の大半が合流した小池都知事が率いる旧希望の党と、それに加わらなかった枝野氏ら立憲民主党を中心とした2つの勢力がそれぞれ候補者を擁立した結果、与党に4分の3を超える議席を奪われ惨敗しました。
これを教訓に新党は、選挙での得票を世論の動向による浮動票に大きく頼る「風」頼みの手法から脱却し、自民党より脆弱と言える地方組織を地域に根差した足腰の強いものにしていくことが急務でしょう。

【課題①政策立案】
新党が幅広い民意の受け皿となるには何が課題でしょうか。中でも政策立案と党内統率力の強化に取り組むことが不可欠だと私は考えます。

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枝野氏は選挙戦で、コロナ禍のもと、政策の最大の柱に「くらしの安心の回復」を掲げ、所得税とともに、これまで慎重と見られてきた消費税の時限減税の可能性にも言及しました。ただ、減税の期間や引き下げ幅をどうするのか。10%への消費増税は自らも要職を務めた旧民主党政権時に財政再建や社会保障の財源として自民・公明両党と合意した経緯もあり、今後議論を呼びそうです。また、原発ゼロをどう実現するのかや、憲法観など基本政策をめぐって、合流した議員の間には意見の違いや温度差があると指摘されてきました。
終息の見えない新型コロナウイルスや人口減少、相次ぐ自然災害などへの国民の不安に応え、日本の将来をどのように描き、実現していくのか。地道な議論を重ねて、与党とは異なる処方箋を示していく責任があると思います。

【課題②党内統率力】
もうひとつのポイントは党内統率力です。

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枝野氏は「意見の違いを認め合う政党文化を作り上げる」としていますが、裏を返せば、これまで必ずしもそうではなかった事実を率直に認めた発言とも受け取れます。
1994年に、衆院選挙に小選挙区制が導入されたことをきっかけに、非自民勢力は主なものだけでも新進党、民主党と幾度となく結集しては分裂し、去年暮れに合流協議を開始して以降も、党名や合流の方法など互いのメンツにこだわった内向きの議論に終始していたように映ります。2017年以降、代表選挙が行われないまま党のトップを務めてきた枝野氏に対する事実上の信任投票とも言えた今回、地方組織や党員による投票は行われず、国会議員票の3割近くは相手候補の泉健太氏に流れました。その泉氏は「民主党政権の反省から逃げず、経験を生かしていくべきだ」と述べています。
「寄り合い所帯によるバラバラ感」という体質を今度こそ克服し地方組織も含めて党内の融和をはかれるのか。そして、枝野氏もこれまで述べてきた通り党の方針や政策をオープンに議論し決定した後はそれに従う組織風土をいかに高めていけるか。トップとして問われることになります。

【野党共闘は】
巨大与党に対抗していくうえで、ほかの野党と協力関係をいかに築くかも重要です。

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合流新党がリベラル色を強めるのではないかなどと懸念して、今回参加を見送った国民民主党の議員は党全体の三分の一にあたる22人に上り、「想定より多い」との見方が出ています。このうち玉木代表や前原元外務大臣ら14人は合流新党と同じ15日に、新党を結党し、「保守中道」を全面に打ち出すなど、違いを強調して存在感を示す戦略をとるものとみられます。共産党は野党連合政権を目指して他の野党に選挙協力などを引き続き働きかけていく考えです。主義主張が必ずしも一致せず、肌合いも異なる野党各党が次の衆議院選挙の289の小選挙区で今度こそ、与党と事実上1対1の構図に持ちこめるのか。合流新党の戦略と手腕が試されることになります。
一方、日本維新の会は、自民党総裁選挙で優位に戦いを進める菅官房長官が総理・総裁に就けば、これまでの良好な関係をテコに、政策課題に是々非々で臨む「第3極」の立場をより強めていくことも予想され、国会論戦で野党勢力が共闘していけるのかも課題となります。

【今後は】

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自民・公明両党が政権に復帰して7年8か月。これまで総じて安定した政権運営を続け、「1強」と称される状況が続いた一方で、野党はこれを支える影の立役者などと揶揄されてきました。今回の新党結成がこの状況に変化を生じさせ、自民党に代わる政権の選択肢となって政治に緊張感を取り戻せるのか。それとも50を超える新党ができては消えていった平成の時代と同様、令和に入っても離合集散の歴史が繰り返されるのか。
「野党勢力が支持を取り戻し、拡大させる最後の機会だ」との声もあるなか、枝野氏が、来週誕生する新しい総理・総裁にどう対峙するのか。と同時に旧民主党時代から要職を務め、今後も引き続き野党第1党を率いることになった中で、枝野氏が自らの「持ち味」をいかに発揮し、若手の抜擢やベテランの活用で戦う態勢を構築するのか。その成否が、節目を迎えた日本の政治の行方に大きな影響を与えることになりそうです。

(曽我 英弘 解説委員)

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