NHK 解説委員室

解説アーカイブス これまでの解説記事

「新型コロナウイルス 東京都で感染者急増 いまこそ備えを」(時論公論)

中村 幸司  解説委員

東京都で確認される感染者が急増しています。新型コロナウイルスの都内の感染者は、2020年7月10日は243人と、前日に続いて200人を超えました。こうした中、国は感染対策として行ってきた自粛要請について、予定通り10日から緩和しました。プロ野球では、観客を入れた試合が行われるようになりました。ただ、東京都の状況は予断を許さないだけに、これまで以上に感染拡大に備えることが求められています。

j200711_01.jpg

今回の時論公論では、
▽東京都の感染の現状を見た上で、
▽いまの対策にどういった課題があるのか、
▽そして、自粛要請が緩和される中、いま何が求められるのか考えます。

まず、感染の現状を見てみます。

j200711_03.jpg

上の図は、7月9日までの10日間、各都道府県で確認された感染者数を色別にしたものです。東京都は、この10日間で1100人余りの感染が確認されています。隣接する3つの県も100人を超えています。
東京都の日付ごとに確認された感染者数が下の図です。

j200711_07.jpg

7月に入って、6日間連続で100人を超え、10日は243人で、1日に確認される数としては、最も多くなっています。
この状況について、国や東京都は「新宿や池袋のナイトクラブやキャバレーなど、接待を伴う飲食店の従業員や客などが多い。店の関係者に症状がなくても、積極的に検査をしてもらった結果だ」、つまり検査数が多いため、感染者の数も増えていると説明しています。
感染者の中で、7月9日の時点で入院は441人、重症は6人です。東京都は、医療機関の対応にも余裕があるとしています。
一時は、都内の入院は1000人を大きく超え、重症患者は100人あまりだったことを考えると確かに数は少なくなっています。

ただ、だからと言って、安心できる状況ではありません。といいますのも、感染の拡大に伴って重症化のリスクが大きい高齢者などに広がることが考えられるからです。

j200711_08.jpg

ナイトクラブなどで広がっているとき、水面下では、若い人たちの間で、症状が出ずに気づかないうちにコロナウイルスの感染が拡大していると考えられています。

j200711_10.jpg

ただ、どこで感染したのかわからない「感染経路不明」の人も半数ほどいます。水面下の感染は、世代や職種を越えた広がりを見せて表面化している可能性もあります。
こうした状況で、心配されることのひとつはウイルスが高齢者施設や障害者の施設に入ってくることです。施設では、生活支援が必要な入所者が多いため、接触を避けるといった感染対策が徹底しづらく、ひとたび感染者が出ると、集団感染につながる恐れがあります。

j200711_13.jpg

また、都内では家族に広がる家庭内の感染が報告されるようになってきています。家庭での感染を防ぐのは難しく、若い世代の感染が同居しているお年寄りに広がることが懸念されています。

j200711_14.jpg

高齢者や持病のある人などは、重症化のリスクが高く、こうした人たちを感染から守らなければなりません。そのためには、いまの感染の核となっている接客を伴う飲食店の感染対策を進めることが必要です。

では、いま、どういったことが求められるのでしょうか。

j200711_18.jpg

私たち個人としては、いわゆる「3密」を避け、さらにマスクや手洗い、人と距離をとるといった「新しい生活様式」を徹底できているか、改めて見直す必要もありそうです。
店などの事業者については、業界団体が感染拡大を防止するための「ガイドライン」を作っています。
東京の新宿や池袋などで夜に接待を伴う飲食店で感染が広がったケースについては、それぞれの店が、このガイドラインに照らしてどのように営業をしていたのでしょうか。これを詳しく調査し、ガイドラインを守っていなかったのか、あるいは守ってもガイドラインの対策では不十分なのか、感染拡大の要因を明らかにすることが大切です。
感染が相次いだ新宿区では、関係者と協議して「新宿区版のガイドライン」の作成を進めているということで、より効果的なものにルールを高めていくことが必要になります。

j200711_19.jpg

こうした店の対策については、10日の夜、西村経済再生担当大臣と東京都の小池知事らが協議しました。この中では、ガイドラインの徹底や従業員らにPCR検査を幅広く実施することなどを呼びかけることになりました。
一方、対策をめぐっては、「地域や業種を限定して休業要請をすべきだ」といった意見も聞かれます。しかし、「要請をしても従業員らが他の地域に移るだけだ」といった指摘もあり、効果的な対策に向け、さらに検討しなければならないと思います。

もう一つ、指摘しておきたいのが、10日から自粛要請が緩和された点です。

j200710_03_0.jpg

国は、緊急事態宣言を全国で解除した5月25日以降、これまで、段階的に自粛要請を緩和し、社会経済活動を引き上げてきました。
6月19日は、都道府県の境をまたがる移動の自粛を全国で緩和したのをはじめ、イベントやコンサートの会場では、客席の収容人数を半数程度以下に抑えることを条件に1000人を上限に観客をいれることを認めました。
10日からは、この上限を5000人に緩和しました。さらに、これまで無観客としてきたプロスポーツについても、客席数の半数程度以下を条件に5000人まで観客を入れて試合を行えるようにしました。プロ野球やJリーグは、10日から観客を入れて試合が行われました。

j200711_24.jpg

ただ、自粛の緩和は、裏返せば感染リスクが高くなることにつながります。
観客を入れる際には、熱がある人を入場させないことやイベントの前や後に、仲間と3密の状態で食事をするなど感染リスクの高い行動をしないこと、後日、感染者が見つかったときに備えて参加者が主催者側に連絡先を知らせておくことなどが求められます。
こうしたことを5000人という多人数であっても徹底しなければなりません。

j200710_08_0.jpg

また、規模の大きなイベントが開かれることによって、都道府県境をまたいで移動する機会も増えます。
東京都の感染は、隣の埼玉、千葉、神奈川の3つの県に広がっているのではないかと指摘されています。他の地方からは、東京の感染が飛び火してこないかと危機感を抱く声も聞かれます。

j200711_27.jpg

ただ、自粛の段階的緩和は、今後も予定されていて、国は、8月1日をめどにイベントなどで観客を収容人数の半分まで、上限なしで認めるよう緩和するほか、県境をまたぐ観光についても徐々に進めていく方針にしています。
地方の中には、医療態勢が脆弱で、集団感染が発生すると医療機関に急激に負担がかかるところも少なくありません。
7月10日の緩和もそうですが、8月の緩和についても東京や周辺、さらに地方の感染拡大につながらないか、感染の状況を慎重に見極めることが重要になっています。そして、感染拡大に対策が追い付かないと判断されれば、次の段階に進まない、あるいは前の段階に戻ることが必要です。

感染の対策が難しいとされる新型コロナウイルスに対して、社会経済活動を動かしながら、第二波も抑える。その方法を私たちは、まだ模索している最中です。
東京都の感染が、年代や地域を越えて広がって、いわゆる「市中感染」、さらには大きな第二波につながらないよう、国や自治体、業界が今こそ効果的な対策をとることが求められます。

(中村 幸司 解説委員)

キーワード

関連記事