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「行き詰まるプルトニウム利用 いま再処理は必要か」(時論公論)

水野 倫之  解説委員

プルトニウムを利用する核燃料サイクルの中核施設、青森県六ケ所村の再処理工場が、原子力規制委員会の審査に事実上合格。
政府や電力業界は2年後に稼働させる方針。
しかし日本はすでに大量に抱えるプルトニウムの利用のメドさえつけられていない。
プルトニウムは核兵器の原料ともなるわけで、この上さらに再処理して取り出す必要があるのか、今その必要性が問われる。
再処理を中心とした核燃料サイクルの課題について水野倫之解説委員の解説。

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再処理工場は原発の使用済みの核燃料からプルトニウムを取り出す施設。
大手電力が出資する原燃・日本原燃が27年前に着工したもののトラブルが相次ぎ完成が延期される中、福島の事故が発生。
基準が強化され、規制委員会の審査。
原燃は想定される地震の最大の揺れを申請前の1.5倍の700ガルとしたほか、高レベルの放射性廃液から放射性物質が放出される事故に備え冷却設備を設置するなどの対策を示し、規制委員会は安全は保たれるとして先週、事実上の合格。

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ただ規制委の役割は安全審査だけで、このまま事業を推進するかどうかは最終的に政府の判断。
梶山経産大臣は記者会見で「課題を解決しながら核燃料サイクルを推進していく」と述べ、政策に変更はなく進めることを強調。
原燃は2年後に本格稼働を目指す方針。

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ただ再処理工場の稼働は核不拡散の観点、経済的にも、その必要性に大きな疑問が。
日本は原発開発当初から、使用済み核燃料をすべて再処理してプルトニウムを繰り返し利用する核燃料サイクルを基本。プルトニウム専用の高速炉を開発すれば消費した以上のプルトニウムを生み出すこともでき、エネルギー問題は解決するがごとく宣伝。
ただ日本は兵器転用の意図がない事を示すために、「利用目的のないプルトニウムを持たない」とする方針を掲げ、余らせない姿勢を内外にアピール。

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しかし方針に反して、日本のプルトニウムはたまり続け、高止まり。
現在およそ46tあり、これは単純計算で原爆5700発分に相当。
これに加え、再処理工場が全面稼働すれば年間7tのプルトニウムが取り出されることに。

こうした状況に諸外国は懸念を強める。
特に原子力協定で日本にプルトニウム利用を認めたアメリカが削減策を求めた。兵器転用やテロ防止へプルトニウム利用を広めたくないアメリカとしては、日本がため込むことが核拡散を招きかねないと考えたから。
削減要求を受けて原子力委員会は、電力会社が連携してプルトニウムの利用計画を作り、削減していくというあらたな方針を2年前にまとめ、国際社会に理解求めた。
にもかかわらずその後も政府や電力会社は具体的な削減策を示さず、保有量は高止まり状態。
削減策を示せないのは核燃サイクルが事実上破綻状態にあるから。

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プルトニウム利用の本命だった高速炉は、もんじゅがトラブル続きで廃炉。
代わって一般の原発で消費するプルサーマル方式が柱に。でも福島の事故を受けて原発再稼働が思惑通り進まず、プルサーマルは4基にとどまる。
プルトニウムを計画的に消費できる手段がいまだ確立できないわけで、核不拡散について諸外国の懸念払拭には至らず。

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また経済的にみても核燃サイクルのメリットは薄く。
完成の遅れで、当初7600億円とされた再処理工場の建設費は4倍の2兆9000億円に膨らみ総事業費もおよそ14兆円と見積もられ、電気代に上乗せされて賄われることに。
でも政府はサイクルの旗を降ろそうとはしない。
ウラン資源を有効利用でき、原発の高レベルの放射性廃棄物の量も減らせることから引き続き意義があると強調。

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高速炉開発も、フランスと共同で技術を蓄積し、今世紀半ばにもんじゅの後継炉をつくる方針示す。しかしあてにしたフランスが新型炉の建設を見送る見通しが明らかになり、先行きはますます不透明。
それでもこだわるのは、一般の原発の再稼働への影響を避けたいという思惑。
政府は2030年までにおよそ30基の再稼働を目指す。

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しかし稼働で出る使用済み核燃料はプールが満杯に近いところもあり、再処理工場に運びたいが、地元青森県は、使用済み核燃料が再処理工場に留め置かれ核のゴミ捨て場になることを警戒。サイクルをやめるのであれば各原発に送り返すという覚え書き。
そうなれば稼働できないことになりかねない。

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使用済み核燃料対策として再処理工場を稼働させ、核燃料サイクルを続ける意思は示しておこうと。
しかしこのままではいずれサイクルが破綻するのは目に見えている。
今やるべき事は核燃サイクルの抜本的見直し作業。
そのためにも政府や電力業界は地元や消費者の代表などを交えた見直しに向けた議論の場を設けることが必要。
そこでの論点は多岐にわたります。
まずは使用済み核燃料について、すべて再処理するという方針をあらため、放射性廃棄物として最終処分できるように制度を変えなければ。
そのためにも政府・電力業界は、最終処分場選定作業を早急に。
また中間的に保管できる場所を確保しておくことも重要。全国の原発の敷地内などに専用の容器で貯蔵するなどの対応を。
またすでにたまっている46tのプルトニウムの具体的な削減策も。原発再稼働が進まない中、プルサーマル方式に頼っている限りは大幅削減は難しい。処分する方法の検討も必要。
ただこうした政策変更は簡単ではない。原子力は政府や電力業界、それに地元との利害関係が複雑に絡み合っている。その問題解決するのは政府の役割。見直しの議論を急がなければ。

(水野 倫之 解説委員)

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