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「大量廃炉時代への対応を急げ」(時論公論)

水野 倫之  解説委員

東京電力は、福島県が復興の妨げになっているとして強く求めてきた福島第二原発4基すべての廃炉を、あすにも正式に決める。福島県からは歓迎の声もあがるが、課題は山積。
福島第一を抱えながら安全に廃炉が進められるのか。
また全国で24基が廃炉となり、日本は大量廃炉時代を迎えるが、このままでは計画通り廃炉が進まないやっかいな問題も。
▽第二原発の廃炉、その判断になぜ8年もかかったのか。
▽大量廃炉時代に入った日本で、廃炉は順調に進むのか。
▽廃炉を円滑に進めるために何をしなければならないのか。
大量廃炉時代に対応するための課題について水野倫之解説委員の解説。

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東電の小早川社長はきょう福島県の内堀知事を訪ね、「責任感をもって廃炉を進める」と説明。あすにも取締役会を開いて第二原発の廃炉を正式に決定。
第二原発は出力が110万kWと大型の原子炉が4基あり、30年にわたって首都圏に電気を供給。
東日本大震災で津波の被害を受け、一時は危機的な状況に陥ったが残った外部電源で何とか冷却を進めて大事故はまぬがれ、その後運転を停止したまま。

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福島県では、住民帰還を促進して復興を前に進めるためには県内すべての原発をなくすことが必要だとして、第二原発についても廃炉を求める声が事故直後から高。
福島県は20回以上東電に廃炉を要請。
県議会では原発を推進してきた自民党会派も含めて廃炉の請願を採択。
さらに多くの市町村議会も廃炉の意見書を採択し、第二原発の廃炉はいわば「福島県民の総意」。

これに対して東電は廃炉の判断を先送りし続けてきた。
再稼働させて収益を確保したいという思いもあったから。
東電は第一原発の廃炉や事故の賠償で16兆円を負担しなければならず、毎年5000億円の利益を上げる必要。第2原発を1基でも再稼働できれば年間数百億円以上の利益が上げられ、これを廃炉や賠償の費用に充てたいという思いも。

しかし原発を再稼働させるには地元の理解と事前了解が不可欠。
福島県からの再三の要請を受けて、東電は地元の理解を得るのは困難と判断。
小早川社長は「このままあいまいな状況を続けることが復興の足かせになる。」として事故から8年でようやく正式に廃炉の決断をした。

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東電は、使用済み核燃料を、敷地内に新たに設置する貯蔵施設に移した上で設備を撤去し、その後建屋を解体して廃炉を完了するのにほかの一般の原発と同じく1基あたり30年、4基すべてだと40年を超える期間がかかるという大まかな見通しを示す。

ただ課題は山積。
まず東電はそもそも事故を起こした第一原発の廃炉を抱える。

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今も第一原発では1日4000人が作業、溶けた核燃料の一部が見えた段階、まだまだ人手はかかる。
これと並行して第二原発の廃炉を進めるにはさらに多くの作業員を確保する必要あるが、土木建設業界は慢性的な人手不足。
長期的に人員が足りなくなることはないのか。
特に熟練した技術者を具体的にどう確保していくのか。
東電は地元に提示し、信頼と理解を得ていかなければ。

次に、東電がいう通り1基あたり30年で廃炉にすることが本当にできるのか。
というのもほかの一般の原発の廃炉でも計画通りにいかない問題を抱えているから。

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一時は57基まで増えた原発だが、基準が厳しくなって採算がとれないとして廃炉が相次ぐ。
第二原発の廃炉決定で全原発の半数近い24基の廃炉が決まり、日本は大量廃炉時代。

全国で最も早く18年前から廃炉作業が進められている原電・日本原子力発電の東海原発。原電はこの春、2025年度としてきた廃炉の完了時期を5年延期すると発表。工程の延期は3回目、当初はおととし廃炉が終わっているはずでしたが13年の大幅な遅れ。
その最大の原因は廃炉の本丸、汚染された原子炉の解体に着手できないから。
原電は解体機器の開発の遅れを理由にあげる。
しかし実際には解体すると出る放射性廃棄物の処分場のメドが全く立っていないため、解体に入れない。

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放射性廃棄物はそのレベルで区分され、すべて地下に埋めて処分する。
このうち最も厄介な使用済み燃料を処理した高レベル放射性廃棄物・いわゆる核のゴミについては、全原発分をまとめて地下300mに埋設処分することになっており、政府や電力業界はすでに事業者を決めて、場所の選定に向けた説明会などを全国で開いているが、10万年以上の管理が必要で難航。

またそれ以外の廃炉で出る低レベルの放射性廃棄物についても、メドはたたず。
コンクリートなどレベルが最も低いものは穴を掘って埋めて50年の管理。フィルターなどは300年。
原子炉を解体すると出る比較的レベルの高い廃棄物については地下70mよりも深いところにコンクリート構造物を作って収納、10万年は人が近づけないようにする必要。
原電はレベルが最も低い廃棄物については敷地内に100m四方の場所を確保して処分する方針で、現在規制委員会の審査。
しかし原子炉を解体すると出るレベルが比較的高い廃棄物の処分については地元の理解を得るのは難しく、メドが全くたたないことからもう何年も原子炉の解体作業に入れないわけ。
工程の遅れはコストアップにつながり、所有する原発がすべて止まり売電収入が絶たれている原電にとっては手痛いところ。

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こうした処分場のメドがないのはほかのすべてに共通する課題。
そこで電力業界は原子炉を解体すると出るレベルの比較的高い廃棄物についても、各社分をまとめて処分する方針。
しかし事業主体を決めようという動きも今のところない。
このまま決まらなければ福島第二も含めて残る23基も東海原発と同じように途中で作業が滞って管理のコストだけがかかり続けることになる。電力業界は、低レベル放射性廃棄物についても早急に事業主体を決めるなど体制づくりを進めなければ。

また原発政策に責任を持つ政府が前に出て、業界に処分場探しの体制作りを急ぐよう指示するなど、福島第二の廃炉をきっかけに廃炉が円滑に進むよう道筋を示していくことが求められる。

(水野 倫之 解説委員)

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