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「統一地方選スタート 何が問われるのか」(時論公論)

伊藤 雅之  解説委員

4年に一度の統一地方選挙のトップを切って、21日、11の道府県知事選挙が告示されました。人口減少や少子高齢化が進む中、注目選挙の焦点と私たちの暮らしに身近な選挙を通じて、何が問われているのか考えます。

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統一地方選挙の前半は、11の道府県知事選挙が告示されたのに続いて、6つの政令指定都市の市長選挙、そして、41の道府県議会議員選挙と17の政令指定都市の市議会議員選挙が告示され、いずれも4月7日に投票が行われます。それ以外の市区町村長や議員の選挙は4月21日が投票日で、あわせて衆議院の補欠選挙の投票も行われる予定です。

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告示された知事選挙で注目されるのは、大阪府知事選挙です。政令指定都市の大阪市を廃止して、東京23区のような複数の特別区に再編する、いわゆる「大阪都構想」の行方を占う選挙になります。
大阪府知事選挙は、知事と大阪市長が、ともに辞職し、入れ替わって立候補することで、24日に告示される大阪市長選挙とのダブル選挙になります。
▼構想の実現を目指す大阪維新の会が、前の大阪市長の吉村氏を擁立。これに対し▼構想に反対している自民党と公明党大阪府本部が元大阪府副知事の小西氏を推薦しているほか、立憲民主党と共産党も小西氏を自主的に支援する方針で、「大阪都構想」の是非をめぐって対決する構図です。

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一方、大阪市長選挙には、「都構想」の実現を目指す大阪維新の会の代表で知事を辞職する松井氏と、これに反対する自民党などが推す元大阪市議会議員の柳本氏が立候補を予定しています。ダブル選挙の争点となる「都構想」について、維新が「大阪府と大阪市の二重行政を解消して、大阪の成長のために必要だ」と主張。これに対し、自民などは「大阪市を解体して、権限の一部を府に移すのは、地方分権に逆行する」と反論。また、ダブル選挙に持ち込んだ手法も争点になりそうで、自民などが「住民投票で、すでに否決された構想にこだわり、市長と知事の職を投げ出すのは党利党略だ」と批判。維新は「最も重要な公約を何としても実現するため民意を問うものだ」と訴えています。

「都構想」をめぐり、実現を目指す維新とこれに反対する与野党が対決する構図を国政から見るとどうでしょうか。

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維新は、安倍政権に是々非々の立場で臨み、自民には憲法改正などの課題で維新の協力に期待感があります。また、維新と公明の間では、大阪府内の衆議院の小選挙区で、候補者を競合させない、いわば「住み分け」が行われてきました。ダブル選挙の結果は、こうした3者の間に一定程度ある信頼関係に少なからぬ影響を与えそうです。また、大阪では、府議会と大阪市議会の第一党は維新です。ダブル選挙、そして同時に行われる府議会と大阪市議会の選挙は、維新を中心とした大阪の政治の流れが維持されるか、それとも転換するのかを問うものになります。そして、その結果は、これまで大都市を中心に各地で誕生してきた地域政党が、日本の政治の中で果たす役割と今後の可能性を占うことになると思います。

さて、11の知事選挙の構図をみます。与野党が真っ向から対決する構図となったのは、北海道知事選挙1つです。

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16年ぶりに新人どうしが争う選挙戦は、▼元夕張市長の鈴木氏を自民党と公明党が推薦。地域政党の新党大地も推薦しています。これに対し、▼元衆議院議員の石川氏を立憲民主党、国民民主党、共産党、自由党、社民党が推薦しています。野党6会派にとっては、夏の参議院選挙で目指す定員が1人の1人区での候補者一本化に向けた試金石にもなります。
一方で、保守勢力が分裂したのは福井、島根、徳島、福岡の4県です。

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このうち、福岡県知事選挙は、▼過去2回の選挙で現職の小川氏を支援した自民党が、新人の武内氏を推薦しています。これに対して、▼自民党の国会議員や県議会議員の一部が小川氏を支援し、保守が分裂する構図です。これに▼共産党が推薦する篠田氏が加わり、3人による争いになっています。

次に、11の知事選挙の構図で、「与野党対決型」が1つにとどまり、「保守分裂型」が4つと目立っている背景を見ていきます。「保守分裂」の選挙なら、なぜ野党側が協力して候補者を擁立し、「与野党対決」の構図にならないのでしょうか。

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まず、その要因として、地域の政治状況があげられます。「保守分裂」となった4つの県は、衆議院の小選挙区すべてで自民党が議席を獲得しています。「自民1強」が続く中、自民党が強い勢力を持つ地域では、野党側が、これを一気に打ち破るような候補を擁立するのは難しいという事情がありそうです。一方、こうした状況から、保守勢力の内部の主導権争いや候補者選定の進め方などをめぐる対立が表面化し、選挙で決着をつけようという構図になっている面もあるのだと思います。
また、対決型にならない背景に、知事候補のハードルの高さが指摘されています。都道府県全域を選挙区に、その行政のトップを選ぶ選挙だけに、行政手腕や知名度、それに支援する組織などが求められ、候補者の側も、できるだけ多くの支持を得たいと党派色を鮮明にしないケースがあります。そして、高いハードルを越えて当選すれば、知事は、予算や人事、許認可など大きな権限を持ちます。各党の主張を取り入れながら行政運営を行っていくうちに、次の知事選挙では、各党がいわば「相乗り」の形になり、そのことで、知事の政治基盤がさらに強化されていく傾向も見て取れます。実際、現在の全国47都道府県の知事の当選回数を見ると、12年の任期となる当選3回以上が31人で、ほぼ3分の2を占めています。

地方自治の特徴は、自治体の長と議会を、それぞれ有権者が直接選挙で選ぶ「二元代表制」にあります。強い権限を持つ知事に対して、地方議会の役割が重要なことは言うまでもありません。知事選挙での相乗りや多選が目立ってきているからこそ、議会にとって大切なのは、知事の政策とその実施状況を厳しく監視する機能であり、議員とその候補者には、知事との緊張関係を持てる資質と覚悟が、より強く求められているのではないでしょうか。

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地方議会には、さらに数々の課題が投げかけられています。そのひとつは、女性の進出です。
男女の候補者の数が、できる限り「均等」になるよう政党などに努力義務を課した法律が、去年成立してから、初めての統一地方選挙です。いまのところ、今回の道府県議会議員選挙での女性の立候補予定者の割合は、12%程度です。各党の取り組み、そして選挙を経て女性議員の割合が実際に増えるのかどうか注目されます。
また、人口減少や少子高齢化が急速に進む中で、地方議員のなり手不足が課題になっています。NHKがことし全国すべての地方議会の事務局に行ったアンケート調査では、都道府県と政令指定都市を除く、あわせて1700あまりの市区町村議会のうち、前回の議員選挙で無投票となったという回答は、13%と、深刻な状況です。対策として打ち出されている議員報酬の引き上げなどが効果をあげるかどうか、地域の活性化には、困難はあっても、地方議会の活力が必要ではないでしょうか。

地方選挙では、このところ投票率の低下が指摘されています。平成最後の選挙となる今回の統一地方選挙が、あらためて地域の課題と将来を見据え、有権者が関心を持つことができるような選挙戦になることを期待したいと思います。

(伊藤 雅之 解説委員)

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