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「水道法改正 岐路にたつ水道事業」(時論公論)

飯野 奈津子  解説委員

蛇口をひねれば、いつでもどこでも安心して水を使える。そうした日本の水道事業が岐路にたっています。人口減少などによる料金収入の低下で水道事業の経営が厳しくなっていて、老朽化が進む水道管などの施設の改修が思うように進んでいないのです。そうした状況を打開しようと、水道事業の経営基盤を強化することを目指した改正水道法が、きょう、国会で可決、成立しました。

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<解説のポイント> 
解説のポイントです。

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●危機に直面している水道事業と、改正水道法で打ち出された経営基盤の強化策
●その中でも議論が集中した「コンセッション方式」とよばれる、事業の運営を民間にゆだねる新たな仕組みの光と影
●最後に私たちの生活の欠かせない水の安定供給を維持するために何が必要か、考えます。

<水道事業の現状> 
まず水道事業の現状です。

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水道事業は原則として市町村が経営していて、利用者が払う水道料金で水を供給するための費用をまかなっています。ところが、人口減少や節水意識の高まりで水の使用量が減り続け、それに伴い料金収入が減っています。一方水道管などの設備の老朽化が進み、そのための更新費用がかさんでいます。このため各地で水道料金の引き上げが相次いでいますが、それでも3分の1の水道事業者は、赤字の状態に陥っているのです。その結果、老朽化した設備の更新が思うように進まず、各地で漏水や破損事故が相次いでいます。

<経営基盤の強化策>
こうした状況を打開しようと、改正水道法で打ち出されたのが、水道事業者の経営基盤を強化するための対策です。その柱は大きく2つあります。

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▼ひとつは広域連携の推進。自治体の枠を超えて水道事業を広域的に経営することで、効率化を進めようということです。その推進役として、都道府県の役割を規定しています。
▼もうひとつが、官民連携の推進。今も、浄水場の運営や検針業務などを民間委託していますが、それをさらに進めて、コンセッション方式という、水道事業の運営そのものを民間企業に委ねる新たな仕組みを、選択肢の一つとして導入しています。

<コンセッション方式とは>
このうち国会でもっとも議論になったのが、このコンセッション方式です。

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この方式でも、自治体が国から認可を受けて水道事業者として経営の責任を負い、水道施設の所有権を持っています。これまでと違うのは、20年を超えるような長期にわたる事業の運営権を民間企業に譲ってその対価を自治体が受け取る。いわば運営権を売却するということです。運営権を買い取った企業は、水道料金を設定して利用者から徴収し、そのお金で施設の維持管理や修繕なども含めて、水を供給します。これまでより、民間企業の裁量が大きく広がるので、独自の経営や技術のノウハウを生かして効率化が進むとされています。

このような水道事業の民営化は海外では以前から行われていますが、最近では日本とは逆に民間から再び公営化に戻す動きが出ています。企業が利益を優先するあまり、料金の高騰や水質の悪化などのトラブルが相次いだからです。そこで今回、日本でこの方式を導入するに当たっては、民間企業への監視機能を強めたとしています。

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具体的には、国が事業計画の確実性や合理性などを審査した上で許可する仕組みにしているほか、自治体が条例で水道料金の上限をきめ、民間企業の業務や経理の状況をモニタリングします。国も必要に応じて、立ち入り検査などを行って、場合によっては運営権の取り消しなどを求めるとしています。

<コンセッション方式の賛否>
さて、どうでしょう。
コンセッション方式をめぐっては、コスト削減につながるとして宮城県や浜松市などが導入を検討している一方で、新潟県議会などが反対の意見書を可決するなど、導入に慎重な自治体が少なくありません。

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この方式が導入されたといっても、採用するかどうかは、それぞれの自治体の判断です。民間に運営をゆだねても災害時に対応できるのか、経営が破たんした時どうするのか、業務や経営の状況を監視できる体制を整えられるのか。これまでの業務委託でも工夫すれば民間のノウハウを生かすことができるかもしれません。この方式のメリットデメリットを考え、どうすれば、地域の水を守れるのか、利用者である住民と一緒に議論することが必要ですし、国も導入を決めた以上、しっかり監視していく責任があると思います。

<水の安定供給を維持するために>
その上で、水の安定供給を維持するために何が必要か、3つの解説のポイントです。
水道事業者の3分の1は、経営が赤字の状態ですが、その多くは地方の小さな自治体です。そうした不採算地域への民間参入は期待できないので、コンセッション方式は解決策になりません。

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赤字の事業者の割合を、給水人口別にみると、人口25万人以上の事業者では12%なのに対して、1万人未満の事業者は49%。小規模なほど赤字事業者が多くなっています。しかも、小規模なほど水道料金は高い傾向があります。10立方メートルあたりの料金は、人口25万人以上の事業者で平均1149円なのに対して、1万人未満では1849円。700円の差があります。小規模事業者は料金を高くしても水道を供給する費用を賄えずにいるのです。今の水道の問題は、過疎化、高齢化が進む地方の問題につながる面があります。

<広域連携のポイント>
こうした小規模事業者の経営基盤を強化ために、重要な選択肢となってくるのが、近隣の自治体と連携して経営を広域化する「広域連携」だと思います。現状では地域のよる料金格差などもあって思うように進んでいませんが。ひとつ参考になるのが、4年前に3つの市と町の水道事業を統合した、岩手中部水道事業団の統合までのプロセスです。

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この事業団がカバーするのは岩手県の北上市、花巻市、紫波町の3市町。統合の決め手になったのは30年先までの水道料金のシミュレーションです。統合した場合、設備を統廃合できるので、自治体単独の場合より一時的に料金があがっても、長期にわたって料金をあげなくても済むという結果です。これを議会や住民に丁寧に説明して納得してもらったということです。総合までに10年以上かかりましたが、統合後は稼働率の低かった浄水場など11の施設を減らして、コスト削減につなげています。ポイントは現在と将来の経営状況を見える化すること、岩手のこの地域は、以前からつながりが強かったという面もありますが、それぞれの自治体が、自分たちの地域の現状と将来を分析し、その中で周辺の自治体と、水質のデータ管理や検針業務を共同化するなど、できるところから始めることが必要ではないでしょうか。もちろん広域化が難しいケースもあると思います。そうした地域には、国や都道府県の支援が不可欠です。

そして、普段何気なく水を使っている私たちも、蛇口の向こう側。水が届くまでの水道事業の現状に関心をもつことが必要だと感じます。中には、住民が勉強会や施設見学などを通じて、水道事業の現状を知り、自分たちの地域の水を守っていくための方策を考え始めた地域もあります。水を守る事は、私たちの命、生活を守る事です。安心な水をいつまでも使い続けるために、何ができるのか。国や行政だけでなく、私たちも一緒に考えていかなければならないのだと思います。

(飯野 奈津子 解説委員)

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