NHK 解説委員室

これまでの解説記事

「太陽光の2019年問題 対応を急げ!」(時論公論)

水野 倫之  解説委員

一般家庭の太陽光発電にとって試練となるかも。
家庭用太陽光で発電した電気を電力会社が買い取る制度の買取期間が、1年後から終わり始めるから。
対象となる家庭は2019年だけでも50万世帯にのぼる見通し。各家庭が売電先を探すなどの対応しなければ、発電した電気がタダで流れていくことにもなりかねない。
しかし売電先を探そうにも、どこがいくらで買い取ってくれるのか、買い取り期間終了後の仕組みがきちんとできていない。

j181109_00mado.jpg

この「太陽光の2019年問題」について
▽家庭用太陽光の買い取り期間終了とは。
▽対象となる家庭はどう受け止めているのか。
▽政府や電力会社はどう対応していくべきか。
以上3点から水野倫之解説委員の解説。

j181109_01.jpg

CO2を出さない電源として注目される太陽光や風力などの再エネだが、価格が高く、政府は普及を図るため再エネで発電した電気を一定の価格で買い取ること制度開始。
中でも太陽光だけは一般家庭が導入可能な再エネで、重点的に拡大を図ろうと制度を前倒しする形で2009年11月から買い取り開始。
自宅消費で余った分を電力会社が買い取る仕組みで、当時は太陽光パネルの価格が高かったため、買い取り価格は1kWhあたり48円と、かなり高い価格に設定。

j181109_02.jpg

高価格が保証されたことで一般家庭の太陽光が一気に増え、200万世帯あまりがパネルを設置。
しかし高価格での買い取り期間は10年間に限定されており、それ以降電力会社は買い取る義務がなくなる。
期間終了となる家庭は2019年11月と12月だけでも53万世帯、2023年までに160万世帯に達する見込み。あわせれば最大で700万kWと原発7基分の再エネによる電力が有効に利用されないおそれ。

j181109_03.jpg

再エネについて政府はエネルギー基本計画で、脱炭素化の切り札と位置づけ、将来の主力電源にしていく方針。そのためには再エネが買い取り制度のような支援が無くても成り立つ自立した電源になれるかどうかにかかっている。
それには設置した人たちが、買い取り期間終了後も引き続き意欲を持って有効に活用し続けてもらうことが必要。

j181109_04.jpg

最近は企業の中にも事業で使う電気をすべて再エネでまかなうことを目指すことで企業価値を高めようとするところも。再エネは脱炭素化の価値の高い電源としてニーズが高まっていることから、買い取り終了後も需要はあり、一定の価格も期待できる。
にもかかわらず期限切れまで1年となっても、一般家庭や電力会社にあまり動きがなく、買い取り制度からうまく移行できないおそれがある、これが太陽光の2019年問題。

対象となる一般家庭はまずは期限が切れる前にあらたな売電先を探す必要。
あらたな設備は必要ないが、自分で売電先を探さなければ。

もう一つ、電気をためる方法。
時間帯や天候によって発電量が変動する太陽光の弱点の解消にもつながりこれまで以上に効率的に使うことができる可能性あるが、あらたに蓄電池を設置しなければ。

j181109_05_0.jpg

制度発足当初に太陽光を導入した人たちはこの問題をどう捉えているのか。
横浜市内のあるお宅では2010年の初めにおよそ200万円かけて太陽電池パネルを設置。
操作パネルを見れば、どれだけ発電しているかや、売電量がリアルタイムでわかる。
毎月5千円から6千円分、東京電力に買い取ってもらっている。
しかし1年余り後に買い取りが終わってしまうことについて、不安を募らせる。蓄電池は200万円近くと高価で、まだ設置に踏み切れないという。この先どことどうやって契約すればいいのか、自ら動かなければならないのか、そして買い取り価格はどうなるのか、わからないことだらけという。
このように契約先を探そうとしても、一体どの電力会社がいくらで買い取る用意があるのかなど、買い取り期間終了後の仕組みがきちんとできていないことが一番の問題。

政府は買い取り期間が終わった太陽光を買い取る用意がある電力会社に、早く買い取りのメニューを提示させる必要あり。
その際、かなり安くなることが想定される。ただあまりにも安すぎると、一般家庭で今後も太陽光を続けていこうという意欲がなくなり、再エネ拡大にはつながらない。適正な競争によって価格が決まることが望ましい。
そのためにも現在買い取りをしている大手電力会社になるべく早く、価格を提示してもらうことが必要。大手が示せば、新電力もそれに対抗する値段を出して価格競争が起きる。

また買い取り期間が終わることを忘れていて気づいていない一般家庭も多い。
太陽光を設置している家庭のうち、どの家庭が期限切れとなるのかという顧客情報は多くの場合大手電力会社が握っているので、大手電力から各家庭に通知してもらうのが一番確実。

j181109_06.jpg

それぞれの家庭が脱炭素社会に向けてのけん引役となるためにも、今から賢い再エネの活用方法を考えられる環境づくりを。

(水野 倫之 解説委員)

キーワード

関連記事