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「太陽光初の一時停止 再エネの課題は」(時論公論)

水野 倫之  解説委員

再エネ・再生可能エネルギーの普及が進む九州で、この土日、電力供給が増えすぎるとして九州電力が太陽光発電の停止を求める「出力制御」に踏み切った。
北海道で起きたような大規模停電・ブラックアウトを防ぐために必要な措置だと電力会社や政府は説明。一方でせっかく電気を生み出せるのに「もったいない」という声も聞かれ、再エネの事業者も収益への影響を心配。
政府が将来の主力電源にする方針を決めた再エネ、拡大に向けてどんな課題があるのか。

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▽なぜ再エネの出力制御が必要なのか。
▽実際にどう行われたのか。
▽再エネをいかす有効な対策は無いのか。
以上のポイントから再エネの出力制御の問題について、水野倫之解説委員の解説。

再エネの出力制御は、この土日の日中に、九州電力管内で実施。
あわせて1万を超える太陽光発電の事業者が、ピーク時でおとといは32万kW分、またきのうは54万kW分の発電を止めた。
再エネの一時的な発電停止は過去に離島で行われたことがあるがこれだけ大規模なのは初めて。

それにしてもせっかく発電できるのに、なぜ止めてしまわなければならなかったのか。
政府や電力会社は、ブラックアウトを防ぐためにも必要な措置だと、説明。
電気は貯めておくことができないため、使う量と発電量のバランスを一定に保たなければならず、それが崩れると停電となってしまう。
北海道の地震では、揺れで発電所が停止し電気が足りなくなってバランスが崩れ、ブラックアウト。

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九州はその逆で、電気が余ってバランスが崩れそうだという。
再エネで発電した電気を固定価格で買い取る制度が始まって以降、日照時間が長い九州では特に太陽光の導入が進み、今年8月現在で800万キロワット・原発8基分。
その結果、九州では日中の電力の8割以上を太陽光がまかなう日も。

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これに加えて原発が順次再稼動し、8月には4基体制となって供給量が大幅に増。
その一方で電力の需要は秋に入って涼しくなるにつれて減り、昼間に電気が余るように。

そこで九州電力はバランスをとるため、まず火力の出力を抑制。
また揚水発電所で昼間の余った電気を使って水の汲み上げを行った。つまり余った電気を貯めた。

しかしまだ電気が余る状態は解消されず、
九州電力は今月初めて、九州と本州を結ぶ送電線を使って余った電気を本州に送る電力融通を連日行い、バランスを調整。
それでもなおこの土日は、秋晴れですごしやすい気候となり、電力需要が大幅に減って電気が余ることが予想。
そこでいよいよ太陽光を止める出力制御に踏み切ったわけ。

今回九州電力は一般家庭の太陽光は対象からはずし、10キロワット以上の設備を持つ2万4000の事業者の中から実施前日に対象事業者に電話とメールで発電を停止するよう要請。同じ事業者が続くことがないよう割り振りをしたと説明。

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ブラックアウトを防ぐためとはいえ、今回多くの電力が2日間にわたって行き場を失ったわけで、CO2を出さず、燃料費もタダの再エネを使わないのはいかにももったいないという思いを多くの人が持ったのではないか。

ただ実はこの出力制御は国が決めたルールに従ったもの。
太陽光や風力は天候次第で発電量が大きく変動し不安定なため出力制御の可能性があることを国が示し、事業者はこれを了承した上で再エネ事業に参入。
そうはいっても制度上、発電できなかった分の補償は無く、再エネ事業者からは、「売電収入を当てにして投資しただけに手痛い」という声や、「再エネを止める前に原発を止めてほしい」という意見も。

これに対して政府は、技術的に出力を短時間で調整するのが難しく、完全に運転を止めた場合、太陽光が発電できない夜間に火力発電で需要をまかなわなければならず、結果的にCO2が増えてしまうため、原発を止めるのは最後だと、説明。

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とはいえ、政府はこの夏に閣議決定したエネルギー基本計画で再エネについて、現状の15%から2030年には最大24%を目指し将来的に主力電源にしていく方針を決定。

また先週IPCCが公表した地球温暖化の特別報告書は、温度上昇を1.5度以内に抑えるために2050年頃にCO2の排出を実質ゼロにする必要があり、再エネの割合を80%まで高めることを求めた。
再エネの重要性は増しており、日本もさらに意欲的な目標を示していかなければならない。

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それだけに出力制御で事業者の投資意欲がそがれないようにして、再エネの大量導入を図っていくことが重要となってくる。

まずは余る電気をうまく貯めたり利用したりしていく対策を急がなければ。
有効なのは日中太陽光で発電した電気を蓄電池にためて、別の時間帯に使う方法だが、蓄電池はまだ値段が高い。コストダウンに向けた研究開発を急ぐ必要。

またこれまで多くの電力会社が夜間の電気料金を安くするプランを提示。しかし今は昼間に電気が余っているわけなので、特に太陽光の発電が増える正午前後の電気料金を安くしたプランを発売してはどうか。

また長期的な対策としては、ほかの地域と電力をやりとりできる送電線・連携線の増強も考えていかなければならない。
ただ増強には莫大なコストがかかる。でも日本の送電網は再エネの大量導入を前提に設計されておらず、この際費用対効果について検討していく必要。

さらに再エネよりも原発を優先するルールは、再エネを主力電源としていくことを決める前に決められたということもあり、再エネをさらに拡大するために原発でうまく出力調整する方法がないのかも同時に検討してもらいたい。

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再エネの出力制御は九州では今後しばらくは続く可能性があるほか、同じように再エネの普及が進む四国電力管内でも可能性が指摘されており、行き場のない電気がさらに増えるかも。せっかくの電気を無駄にすることなく再エネの主力電源化を実現するためにも、議論を急がなければ。

(水野 倫之 解説委員)

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