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「連続する災害にどう向き合うのか」(時論公論)

松本 浩司  解説委員

【VTR】
北海道で震度7を観測した地震から1週間。この地震では41人が亡くなり、650人以上がけがをしたほか、電力不足など影響が長期化する見通しです。その直前には台風21号の暴風や高潮で大きな被害が出ていて、大災害に連続して見舞われる異例の事態になりました。

先週の台風と地震には衝撃を受けましたが、平成最悪となった西日本豪雨や大阪府北部地震からも時間が経っておらず、それぞれの緊急対応が一段落するのを待たずに大きな災害が次々と起きています。災害が連続するリスクは以前から指摘されていましたが、現実として突きつけられたかたちです。その現実にどう向き合うのか、減災のため何ができるのかを考えます。

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【連続して被災した地域】
今年の6月以降、起きた4つの大きな災害では、連続して「被災」した地域があります。
 
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6月18日に震度6弱の大阪府北部地震が発生。大阪、京都、兵庫などで4人が死亡し、400人以上が怪我をしました。その18日後に平成最悪の被害となった西日本豪雨が発生。
大阪、京都、兵庫でも多くの死傷者と浸水被害が出ていて、この地域にとっては連続の被災でした。

台風21号は近畿に大きな被害を出したあと、先週5日に北海道付近を通過。厚真町では暴風で農業用ハウスなど農業施設に被害を受け、その直後に地震が起きました。前線と台風による雨が地震による土砂災害を大きくした連続災害という側面もあります。

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【災害の多発時代に入ったのか】
ここ数年を遡っても広島土砂災害、熊本地震、九州北部豪雨など毎年、大きな災害が発生してきました。専門家の中には「日本列島が災害の多発時代に入った」と考える人もいます。
どういうことでしょうか。

まず地震です。

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日本付近ではプレートがぶつかりあうことで80年から150年ほどの間隔で南海トラフの巨大地震が繰り返されてきました。その巨大地震が近づいているうえ、その前に、日本列島全体が押される力が高まることで内陸直下型の大地震がいくつも起こると考えられています。
また気象災害については、地球の温暖化に伴って台風が巨大化したり、豪雨災害が一層激しくなる恐れがあると指摘されています。

これらの説にはいろいろな見方がありますが、「災害の激甚化、頻発を前提に備えなければならない」という点は専門家の間で一致していると思います。そして、それが連続して起こるということも想定しておく必要があります。

災害の連続発生は過去にもしばしばあり、地震と水害の場合、震度5弱以上の地震と警戒水位を超える洪水が1ヶ月の間に起きた事例が110年の間に20回あったというデータもあります。

【VTR】
昭和23年に起きた福井地震では地震で3800人が犠牲になりました。

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その1ヶ月後の大雨で、地震で被害を受けた川の堤防が決壊し、156人が死傷し2万5000戸が浸水する洪水が発生しました。
2年前の熊本地震でも発生の2ヶ月後に熊本県益城町の川の堤防が大雨で決壊し浸水被害が出ました。地震で堤防が沈下したことなどが原因と考えられています。

【連続災害 被害軽減のための研究】
単独でも難しいのに連続する災害の対策はさらに難しい課題です。それでも被害の拡大を最小限に抑えようという研究が進んでいます。

【VTR】
東京理科大学の研究グループは地震と堤防決壊による洪水のメカニズムを調べています。
大がかりな実験装置を使って福井地震を再現します。当時の強度の堤防を想定した高さ50センチの盛り土に震度7の揺れを加えます。堤防の高さはおよそ5分の2に沈下しました。そのうえで川の水位をあげ、堤防の破壊の進み方や氾濫する水の量などを確認しました。

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現在の一般的な堤防を想定した実験では、地震の揺れを受けた場合、通常なら耐えられる水の量の半分以下で決壊し、洪水が起こることがわかりました。研究グループはこうした実験で地震に強い堤防の開発や被害をより正確に推定するためのデータを得ようと考えています。
 
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一方、国土技術政策総合研究所の研究グループは地震と洪水が連続して起きた場合の被害を最小限に抑えるためのシミュレーションに取り組んでいます。
 
モデルは大河川流域の人口220万人の地域です。地震の規模、洪水の規模をいろいろ変えて組み合わせます。また災害が起こる間隔も同時から1ヶ月あまりまで変えて行きます。
対策方法を含め、4つの条件を変えて120通りの結果を比較・検証しました。

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その結果、
▼地震と洪水が同じ日に起こった場合の死者は5日間を置いて起きた場合の2倍近くになると試算されました。
▼また地震のあとインフラの復旧が一定程度進んだあとに水害が起きたほうが犠牲者が多くなるという意外な結果も出ました。自宅に戻る人が増えるため被害が大きくなるのです。
▼さらに同じ金額であれば復旧用の資機材に投入するよりも堤防の強化に費やしたほうが被害軽減の効果が大きい、という結果も得られました。
国や自治体が「連続災害」の被害想定を作り、防災計画を立てるために役立てようというのが研究の狙いです。

こうした研究も生かしながら連続災害の被害を小さくするために何ができるのでしょうか。

▼まずは地震・津波や風水害、火山など単独で起きた場合の備えを確認し、一層強化すること、これは言うまでもありません。

▼そのうえで国や自治体は被害を少しでも小さくするための想定や計画づくり、訓練に取り組む必要があります。

【VTR】
京都府は今月2日、洪水と直下型大地震の同時発生を想定した大規模な防災訓練を行いました。大雨と地震で土砂災害が多発し道路が寸断されるなか、どうやって救援部隊を被災地に送り込むのかや、ヘリコプターを洪水による孤立者の救出と地震による重傷者の搬送のどちらにあてるのかなど、難しい判断と対応を訓練でひとつひとつ確認していきました。

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東日本大震災のあとこうした訓練を行う自治体が増えているほか、防災計画の中に「複合災害編」を設けて被害軽減の対策を立てている自治体もあります。

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一方、国は地震などと原子力災害の同時発生については対応の基本方針をまとめていますが、自然災害の連続ないし同時発生は想定していません。現在ある単独災害の想定や計画をベースに連続災害への対応を検討し、最大限の災害に備える体制を築く必要があります。

▼そして、わたしたちひとりひとりも住宅の耐震化やハザードマップ、避難場所の確認など、災害ごとの対策を着実に進めたうえで、災害が連続したり重なったりしたときにはどう行動するのかについても考えておく必要があると思います。

【まとめ】
北海道の地震に加え台風21号と西日本豪雨の被災地でも多くの人が避難生活を続け、インフラの復旧や二次災害の防止対策もなかなか進んでいません。広域の被災地への支援の継続と強化が求められています。
そのうえで、これまでの取組みに連続災害という観点を加えて防災体制を見直していくことの必要性を一連の災害は示しているように思います。

(松本 浩司 解説委員)

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