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「どうなる野党共闘~国民民主党新代表に玉木氏」(時論公論)

曽我 英弘  解説委員

国民民主党の新しい代表に、玉木雄一郎共同代表が決まりました。玉木氏は、今年5月の結党以来、「対決より解決」の路線を掲げ、党の政策を実現することを重視してきましたが、支持率は低迷が続いています。代表選挙の結果から見える国民民主党の課題と、野党共闘の行方を考えます。
 
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玉木共同代表と、津村元内閣府政務官という、ともに40代の候補者の一騎打ちとなった初めての代表選挙。玉木氏の推薦人には、党執行部の主要メンバーらが名を連ねたのに対し、津村氏は告示日当日まで推薦人集めに奔走するなど、当初から玉木氏が優位な戦いを進めてきました。
今回の代表選挙は、国会議員と国政選挙の公認候補予定者、地方議員、党員・サポーターにそれぞれポイントが割り振られ、その合計で決まる仕組みで、玉木氏は、その半数近くを占める国会議員票などすべてで、津村氏に大差をつけ、勝利しました。

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なぜ、玉木氏は勝利したのか。旧民進党と旧希望の党が、事実上合流して結党して以来、「対決より解決」の路線を掲げてきた玉木氏。選挙戦では、津村氏からの批判も念頭に「対決も解決も」と微妙に軌道修正を図りましたが、結果からは、対案を重視し、政策論で時の政権に対峙しようという姿勢に党内の大方の理解が得られたといえそうです。
これに対し、津村氏が主張した、法案審議や採決をめぐり政府与党と「全面対決」する路線には、党内で抵抗感が少なからずあったのかもしれません。
また、結成して4か月しか経たない中で、党の顔を再び代えることは得策ではないという判断もあったでしょう。

ただ、津村氏も、敗れたとはいえ3割近くを獲得しました。一番の理由は、一向に上向く兆しの見えない党の支持率であることは間違いありません。NHKの先月8月の世論調査で、党への支持率は0.4%にまで落ち込みました。とても衆参合わせて61人の国会議員が所属する、野党第2党の数字とは思えません。これでは来年の統一地方選挙、それに続く参議院選挙は戦えないという党内の強い危機感から、執行部を刷新することで出直したいという議員なども少なくないことが明らかになりました。

数で劣る野党が、今後、存在感を示すために取り組まなければならないことは何なのでしょうか。その最低限の条件は、党内の結束が保てるかどうか、です。というのも野党は代表選挙をきっかけに路線対立が先鋭化し、分裂を繰り返した歴史があるためです。

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直近の例で言えば、去年2017年、旧民進党の代表選挙では、現在国民民主党に所属する前原元外務大臣と枝野元官房長官が争い、破れた枝野氏は、同じ年の衆議院選挙を前に、袂を分かち立憲民主党を結成しました。前身の希望の党でも、玉木氏と争った大串衆議院議員は、その後、国民民主党に参加しませんでした。
実際、今回の代表選挙では、告示当日に党所属議員一人が離党届を出すに至りました。執行部は届出を受理せずその日のうちに除籍処分としましたが、きょうの投票でも、国会議員2人が無効票を投じており、今後も、党勢が思うように回復しなければ、新たな離党者も出かねません。こうした事態を繰り返さないためにも、今後の人事で、自らに批判的な議員も含めて、いかに登用できるかが試金石となりそうです。

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党独自の政策、具体的には今の政権が掲げるアベノミクスに対抗できる処方箋を明確に打ち出していくことも重要でしょう。今回の代表選挙で、玉木氏は「コドモノミクス」と名づけた子育て支援を通じた経済政策を打ち出しました。第3子以降に一千万円を給付するのが柱ということですが、実際に給付するには1兆6000億円の予算確保が必要です。これには、「なぜ3人目からなのか」などといった疑問も出され、議論を深める必要はありそうですが、民主党政権時代を教訓に、財源問題も含めどのように実現するのか、その道筋を明確にすべきです。
安倍政権が、働き方改革や賃上げといった、野党がとりわけ重視してきた政策に本格的に取り組んでいるなか、国民民主党に限らず、野党全体が支持や信頼を回復するには、政策立案能力を高めることが、いっそう課題となります。

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玉木氏が直面する、当面の、そして最大の課題。それはなんといっても来年の参議院選挙でしょう。焦点は、候補者の調整、特に全国で32あるいわゆる「1人区」です。

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第2次安倍政権が発足した翌年の2013年に行われた参議院選挙で、野党各党の候補者が乱立し、1人区では2勝29敗と「惨敗」しました。一方で、前回2016年は、前の年に成立した安全保障関連法に反対することで旧民進党や共産党などが共闘したことも後押しとなって、32全ての選挙区で候補者を一本化した結果、11人が当選しました。当時の野党の支持率から見れば「善戦」したと言ってもいいでしょう。

果たして今回は、どうなるのか。共闘の成否は野党第1党、立憲民主党との関係次第といっても過言ではありません。玉木氏は、参議院選挙に向けて、共産党を除く野党との「共同選対」を発足させるとともに、国会では立憲民主党などと統一会派の結成を目指す考えを繰り返し表明しています。
しかし、選挙、国会、どちらもめどが立っているとは言えません。立憲民主党は、野党の中では支持率が堅調なこともあってか、候補者調整や選挙協力について、当面は各選挙区での調整にゆだねるものと見られます。玉木氏の主張する「共同選対」も、立憲民主党は、定員が2人以上の複数区や比例代表で議席増を目指す観点から「あり得ない」と否定的な考えです。
国会対応でも、先の通常国会で、働き方改革関連法や、カジノを含むIR整備法といった政府与党との「対決法案」で、国民民主党は、党の提言を付帯決議という形で与党とまとめることを優先させました。結果として採決に徹底的に抵抗した立憲民主党との溝が浮き彫りになり、そのしこりは今も残っているといわざるを得ません。

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両党は、地方組織レベルでも競合しています。国民民主党は、旧民進党から地方組織を引き継いだものの、党所属の地方議員は761人。旧民進党時代のおよそ半数にとどまっています。一方で、立憲民主党は、すでに31の都道府県で組織を立ち上げ、地方議員もすでに455人に及び、その多くは旧民進党議員です。地方議員や党員の奪い合いが両党の共闘に影を落としていることは否めません。

こうした状況で共闘を実現するには、野党第1党と第2党の党首を務める枝野氏と玉木氏が、信頼関係をしっかり構築できるかどうかが焦点となります。

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2012年に当時の民主党が下野して以降、野党は、離合集散を繰り返した結果、「多弱」と揶揄されて久しい状況が続いています。この間国会対応や選挙対策を巡って、政府与党の後手に回った印象はぬぐえません。旧民進党出身の元議員からは、行政の不祥事が相次ぎながら、野党がバラバラのままでは、十分追及しきれないとして、年内にも再結集すべきだという声も出始めています。いわゆる「1強政治」に対抗する戦略をどのように描き、政治に緊張感をいかに取り戻すのか。その手腕と責任が野党全体に問われています。

(曽我 英弘 解説委員)

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