NHK 解説委員室

解説アーカイブス これまでの解説記事

「プルトニウム大国日本 核燃サイクルの見直しを」(時論公論)

水野 倫之  解説委員

原発の使用済み燃料を再処理してたまった大量のプルトニウムについて、国の原子力委員会が、今後必要以上は再処理せず、電力会社が連携して削減していくとする、あらたなプルトニウム利用の基本方針を発表。

日本のプルトニウムは原爆6,000発分に相当。核拡散防止が課題となる中、国際社会から懸念が。あらたな方針で大幅削減は可能なのか。

J180801_00mado.jpg

J180801_01_0.jpg

▽基本方針の中身
▽なぜ日本は大量に抱え込むことになったのか、核燃サイクルの問題点について。
▽大幅削減するためには何が必要か。
以上3点からプルトニウム利用の課題について水野倫之解説委員の解説。

日本は原発の使用済み燃料からプルトニウムを取り出し、再び燃料として使う核燃料サイクルを原子力政策の基本。
ただプルトニウムは核兵器の原料にもなることから、転用の意図がないことを示すため、原子力委員会が2003年に「利用目的のないプルトニウムを持たない」とする基本的な方針。

J180801_02_1.jpg

これを原子力委員会はきのう15年ぶりに改定。
▽今後は使える分だけ再処理してプルトニウムを取り出すことを認める。
▽海外で再処理したプルトニウムについては、電力会社が協力連携して削減していく。
これは再稼働が進んでいない東電のプルトニウムを融通し、すでに再稼働した関電の原発で消費することなどを想定。
▽さらに電力会社は毎年プルトニウムの利用計画を公表する。
以上のような取り組みで現状より増えることはなく、削減できるとして、この方針をIAEAにも伝達。

J180801_03_4.jpg

原子力委が方針を改定したのは日本のプルトニウムが増え続けて高止まりしているから。2017年のプルトニウムは前の年より0.4t増え、国内に11t。再処理を委託したイギリスとフランスに36tで合計47.3t、これは単純計算で原爆6000発分に相当。
国際社会からは懸念が上がり、中国や北朝鮮が日本を名指しして核開発の可能性を指摘したことも。
アメリカも懸念。
日本がプルトニウムを利用できるのはアメリカが原子力協定で核兵器を持っていない国の中で唯一認めているから。ほかにもアメリカに再処理の許可を求めている国があり、これ以上プルトニウム利用を広めたくないアメリカとしては日本がプルトニウムを抱え込むことが核拡散を招きかねないとして、削減するための具体策を要求。

J180801_04_4.jpg

なぜ大量のプルトニウムをかかえることになったのか。
それは核燃料サイクルが事実上破綻状態にあるから。

J180801_05_0.jpg

核燃サイクルのうち肝心の利用が進んでいない。
柱となるべき高速増殖炉の「もんじゅ」はトラブルが相次ぎ、政府は廃炉を決定。
それにかわって柱とされたのが、一般の原発で使うプルサーマル。
しかし福島の事故でプルサーマルは4基にとどまり、結局47tもため込むことになった。

J180801_05_5.jpg

今回の方針改定で大幅削減は難しい。この改定が小手先の対応にとどまっているから。過ぎないから。
政府は方針改定を受けても、核燃料サイクルを維持し、プルサーマルで削減しよう。しかしプルサーマルは1基あたり年間0.5tしか消費できず、削減効果は限定的。
しかもプルトニウムを使うことに地元の安全への懸念は根強く、方針が掲げるように電力会社間でプルトニウムを融通すれば、なぜ他社のプルトニウムまで引き受けなければならないのかと地元の強い反発も予想され、今後プルサーマルを増やしてしていくことは簡単でない。
こうした状況でも、今回の方針では青森県の再処理工場を消費できる分だけにとどめるよう求めているが、操業の先送りまでは求めていない。
しかしこれではすでにある47tの削減はいっこうに進まない。

今やるべきことは、核燃料サイクル政策を抜本的に見直すこと。

J180801_05_6.jpg

プルサーマルは資源の有効利用は限定的で、発電コストも一般の原発に比べ高くなり、電力会社にとってメリットは多くない。

それでも政府や電力業界が核燃サイクルにこだわるのは、一般の原発でたまる使用済み燃料を何とかしたいから。でも搬入先の再処理工場がある青森県は核燃料サイクルを続けることを受け入れの条件としており、やめるならば使用済み燃料を元の原発に返すと表明しています。こうなると続けざるを得ない。
しかしこうした状況を続ける限り、プルトニウムの大幅削減は進まず、国際社会の理解を得るのは難しい。

J180801_06_1.jpg

少なくとも今あるプルトニウムが消費できるまでは再処理工場の稼働の必要はないはずなので、その間に、使用済み燃料の貯蔵場所を確保することが重要です。原発の敷地内などに、専用の容器で貯蔵する検討を急がなければ。
また47tのプルトニウムについても消費しきれない場合に備えて、安全に処分する方法の検討も必要。

J180801_07_1.jpg

今回の基本方針改定をきっかけに課題の多い核燃料サイクル政策の見直しを急がなければならない。

(水野 倫之 解説委員)



キーワード

関連記事