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「東海第二原発合格 原電のあり方見直しを」(時論公論)

水野 倫之  解説委員

原電・日本原子力発電の東海第二原発が、原子力規制委員会の審査に事実上合格。しかし100万人の避難や巨額の安全対策費など、これまでの原発にない多くの課題。
地元の再稼働の事前了解について。
東京電力の支援について。
原電のあり方について。
以上3点から東海第二、そして原電の今後を水野倫之解説委員の解説。

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東海第二原発は出力110万と大型。今年運転期限の40年を迎えるため、原電は期間を20年間延長しての再稼働を規制委に申請。電源の強化や、防潮堤の新設、さらに電気ケーブルを燃えにくいモノに交換することなどの安全対策。規制委は先週、基準を満たし安全は保たれるとして事実上の合格を決め、審査は山場を越えた。
原電は安全対策工事を2021年までに終え、それ以降の再稼働を目指す。

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しかしこれまでの原発にない多くの課題。

まず、地元の事前了解。
今回原電は、全国で初めて、事前了解の対象を避難計画が義務づけられた30キロ圏内の5つの市にも拡大する協定を締結。
これまで再稼働した原発はすべて立地自治体と県の了解だけ得ていたが、原電はさらに5つの市からも了解を取る手続きが必要となり、再稼働へのハードルが一気に増えた。

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30キロ圏には全国の原発で最多の96万人が住み、避難に危機感があるから。
中でも支援を必要とする人たちは5キロ圏内だけでも1500人ほどいて、車椅子なども乗せられる福祉車両が1000台近く必要。とても確保できず、茨城県はやむをえず、すぐには避難させず、フィルターなど放射性物質対策を備えた病院や施設に屋内退避するという、全国でも初めての対応をとる方針。
ほかにも課題山積で5市は、様々対策を要求したいと考え、事前了解の権限を強く求めた。原電も、このままでは先へ進めないと考え、受け入れざるを得なかった。

原電には大手電力会社とは異なる、特別な事情も。
原電は、原発技術を蓄積するために大手電力会社などが株主となって設立した、民営の国策会社。
タイプが異なる4基を稼動して技術を蓄積し、大手電力会社の原発導入へとつなげるパイオニアの役割。
原発で発電した電力を東電や関電など大手5社に販売して利益を得てきた。

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しかし福島の事故を受けて、すべての原発が止まり、売電収入が絶たれる。
再稼働しようにも、東海はすでに廃炉。敦賀1号も40年超えで廃炉に。2号機も活断層があると指摘され、廃炉の可能性。
頼みの綱は東海第二だけ、という非常に厳しい状況に。
ただそれでも今年3月期の決算は27億円の黒字。
それは基本料金が受け取れるから。大手5社があわせて毎年1000億円を支払い、原電の経営を支援。
また今回の東海第二を巡っては問題点も。
安全対策費は1740億円を自ら調達できない原電は、東海第二の電気を買ってもらっていた東電と東北電力に支援を求め、両社ともこれを了承。
電気の購入費の前払いや債務保証などが検討され、東電が8割を負担。
しかし東電は福島の事故を起こした当事者。税金も投入。
支援を受けている会社が他社の支援許されるか。
東電は、安くて安定した電気を届けることが自分たちの任務だからだと説明。でも安全対策費がさらに増えるのは確実で、本当に安い電気なのか、福島の廃炉に影響ないのか説明を。
今後避難計画づくりや地元の了解など考えれば東海第二の再稼働がいつになるのか見通しはたたない。
その間も、大手電力が支え続けるのか。
ここはまずは大手電力が、原電が今後どんな役割を果たすべきかを検討し、経営形態の見直しを。

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期待されるのは廃炉事業。
原電は東海原発の廃炉作業でノウハウ蓄積進めている。国内ではすでに決まった18基に加えて、福島第二原発の4基も廃炉の方針。これを原電が中心になって効率的に進める方法もあるのではないか。

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その際原発政策に最終責任を持つ政府も前に出て業界に働きかけ、議論を主導していくことが必要。

(水野 倫之 解説委員)

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