NHK 解説委員室

解説アーカイブス これまでの解説記事

「西日本豪雨 広域災害の救援を急げ」(時論公論)

松本 浩司  解説委員

先週から続いた豪雨は西日本の広い範囲で川の氾濫や土砂災害を引き起こし、これまでに124人の死亡が確認されましたが、被害の全体像はいまだにわかっていません。今回の豪雨は梅雨末期に特有の前線の停滞によるものですが、これまでと大きく違うのは、集中豪雨があちこちで連続的に起きて桁外れの雨量になったことです。記録的豪雨はなぜ起きたのか、また広範囲に及ぶ被災地への支援に何が求められているのかを考えます。

j180709_00mado.jpg

解説のポイントです。

j180709_01.jpg

▼記録的豪雨はなぜ起きたのか
▼被害はどこまでわかったのか
▼広い範囲に及ぶ被災地にどういう救援・支援が必要なのか

【記録的豪雨はなぜ】
今回の豪雨のすさまじさを示すデータがあります。

j180709_02_0.jpg

観測点ごとに48時間で降った雨量を示した図です。赤は400ミリ以上、紫は600ミリ以上を示しています。棒が延びているところは記録を更新したところです。

j180709_02_1.jpg

拡大してみます。太い棒は観測史上最大になったところ、細い棒は7月として最大のところです。中国地方や近畿地方などで軒並み記録を更新しています。
観測史上最大が123ヶ所、7月として最も多くなったところは238ヶ所にのぼり、まさに記録的豪雨だったことがわかります。

j180709_03.jpg

なぜこのような豪雨になったのでしょうか。
直接の原因は、気圧配置が変わらずに梅雨前線が停滞したためです。太平洋に中心のある高気圧とオホーツク海にある高気圧の勢力が変わらず日本付近に梅雨前線が停滞し続けました。太平洋高気圧の縁をまわって前線に湿った空気が流れ込み続け、大量の雨を降らせました。しばしば起こる「梅雨末期の豪雨」の典型的なパターンですが、これまでと違うのは、雨量が桁外れに多かったことです。

j180709_04_0.jpg

ではなぜここまでの大雨になったのでしょうか。鍵は大量の水蒸気です。
今回の豪雨の前に台風7号が北上しました。通常であれば日本の南海上にある水蒸気を大量に含む暖かい空気を取り込んで運んでいくところが、台風がまとめきれずに大きな積乱雲の塊が残りました。それが太平洋高気圧の縁を流れる風に運ばれて前線の雨を降らせたと気象庁は見ています。1年前の九州北部豪雨でも同じ現象が起きていました。

j180709_04_1.jpg

そしてこの積乱雲を含め、日本の南海上に雨の元になる水蒸気が大量にあったことがそもそもの要因です。気象庁は「ここ数日間の水蒸気量は見たことがないような、非常に大きなものだった」と説明しています。
では、なぜそれだけの水蒸気を蓄えたのか。海水温が高い状態が続いていたことが影響していると考えられますが、今後の集中豪雨対策を考えるうえでも詳しい分析が待たれるところです。

【被害はどこまでわかったか】
次に被害の状況ですが、全体像はまだわかっていません。NHKのまとめで124人が死亡し、2人が心配停止の状態になっているほか、58人の安否が不明になっています。犠牲者は時間がたつにつれて増え続けています。

j180709_05.jpg

河川の被害は、国土交通省がまとめたところ全国の河川のおよそ200ヶ所で堤防が決壊したり、水が堤防を超えるなどしていて、わかっているだけで6000戸で浸水被害が出ています。

<VTR 真備町+土砂災害の現場>
このうち岡山県倉敷市真備町では町の面積の27パーセントにあたる1200ヘクタールが浸水しました。近くを流れる小田川の堤防が4ヶ所決壊し大量の水があふれだしました。きょうになって水がかなり引き、これまで入れなかった地区を警察などが捜索したところ、あらたに15人の死亡が確認されました。

また土砂災害は28の道府県であわせて238ヶ所で発生しています。これまでのところ兵庫県が最も多く38ヶ所、長崎県が22ヶ所などとなっていますが、今後、調査が進めば土砂災害の数はさらに増える見込みだということです。

【求められる救援・支援は】
では、今どのような救援や支援が求められているのでしょうか。
見てきたように今回の豪雨災害の特徴は、中国地方と四国を中心に広い範囲に被害が広がっていることです。
なによりも行方がわからない人の捜索を急がなければなりません。自衛隊のほか全国の消防や警察から緊急援助隊が派遣され懸命の捜索・救出活動が行われています。さらに山間地などで孤立している人はいないか、浸水が続いているところで建物に取り残されている人がいないかを確認し、救出を急ぐ必要があります。

j180709_06.jpg

避難所にいる人をはじめ被災者の支援がこれから重要になります。
消防庁がまとめたところ、岡山県で5000人近くが避難しているのをはじめ、少なくとも969ヶ所の避難所に1万2000人余りが避難していることがわかりました。しかし被災地が広い範囲に広がっていることから全体像はまだ把握しきれていません。

j180709_07.jpg

水道や電気などライフラインが復旧していないところも多く、避難所を把握し、支援の手を差し伸べる必要があります。必要な物資の支援、衛生面をはじめ避難所の環境の整備、障害のある人や高齢者、妊娠している女性などを受け入れる福祉避難所を設けたり、避難所の中に、そうした人に向けたスペースを設ける必要があります。

医療の支援も重要です。医師や看護師などで作る災害派遣医療チーム「DMAT」が派遣され広島県と愛媛県、兵庫県の被災した病院などで支援にあたっています。被災地の医療体制が回復するまで支援をする、日本医師会の「JMAT」も派遣に向けて準備をおこなっています。

j180709_08.jpg

ボランティアの受入れ準備も急ぐ必要があります。一般のボランティアは各地の社会福祉協議会がボランティアセンターを作るなどして受け付けます。一方、全国から集まる専門性を持つNPOなどに広い被災地のどこで活動してもらうのか、全体のコーディネートが重要になります。東日本大震災をきっかけに全国のボランティア団体で作ったJVOAD(ジェイボアード)は、まず広島と岡山、愛媛に拠点を作ることにしています。地元自治体や社会福祉協議会との連携・協力が重要になっています。

さらに避難所の運営や罹災証明の発行など被災者支援にあたる被災地の市町村職員の負担が大きくなるのも確実です。今後、長期の災害対応が必要になることから職員の応援態勢も早く組む必要があります。全国知事会は現地に職員を送って情報収集を始めているほか、東日本大震災で被災自治体を支援した関西広域連合も支援を行うことにしています。東日本大震災の取組みを参考にバックアップ体制づくりを急いでもらいたいと思います。

線状降水帯が大水害をもたらした3年前の関東・東北豪雨、初めて東北の太平洋側から上陸したおととしの台風10号、稀に見る山地水害だった去年の九州北部豪雨と毎年、違った特徴を持った豪雨災害が起きています。そして今回、集中豪雨が連鎖するように広範囲で続き平成最悪の豪雨被害が起きて、気象現象の激甚化を実感させられました。
被災地への救援、支援に全力であたる一方で、今後、豪雨対策が十分なのかあらためて見つめ直すことも求められると思います。

(松本 浩司 解説委員)

キーワード

関連記事