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「はやぶさ2 小惑星到着 探査の意義は」(時論公論)

水野 倫之  解説委員

日本の小惑星探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウに無事到着、最初の関門を突破。
故障が相次いだ1号機と比べ、ここまで大きなトラブルはなく、順調。
ただ本番はこれから。小惑星内部の物質を持ち帰るという世界初の野心的なミッションに世界が注目。

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小惑星は46億年前、太陽系ができたときに地球のような惑星になりきれなかった岩石の塊。

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▽リュグウはどんな小惑星なのか。
▽1号機のようなトラブルを繰り返さないための対策は万全なのか。
▽小惑星探査の意義について。
以上の3点から今回のミッションについて水野倫之解説委員の解説。

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はやぶさ2は26日午前、火星と地球の間にある小惑星リュウグウの上空20キロに到着しリュウグウをとらえた。

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赤道付近が膨らんだコマ型と呼ばれる、そろばんの玉のような形。
直径は900m、東京スカイツリーよりも1まわりも2まわりも大きい。
赤道付近には別の天体が衝突してできたと見られるクレーター。
大きな岩がゴロゴロしている様子も。
小さいながらも起伏に富んだ光景に対してすでに世界中から関心が寄せられ、日本でも人気のイギリスのロックバンド、クイーンのギタリストで天文学者でもあるブライアン・メイさんもツイッターで「すばらしい眺めだ」と連日つぶやいた上に、「プロジェクトに協力していきたい」とビデオメッセージを宇宙機構に寄せた。

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また、映画スターウォーズの要塞、デス・スターが出現したという声も。

チームの研究者たちの目下の興味は、自転周期。7時間半で回転。過去に確認されたコマ型小惑星のほとんどは自転周期が2、3時間とより高速で回転しているものが多く、自転が遅くてもなぜこのような形になるのか疑問が膨らむ。

とはいえ、はやぶさ2がまず取り組むのはリュウグウの砂や石の採取。
来年春にかけて3回着地し、円筒形の装置を地表にあてて弾を撃ち込み、舞い上がったかけらを採取するほか、砲弾を撃ち込んで表面砕いて内部の物質も採取し、2020年に地球に持ち帰る計画。

探査を確実なものとするためには、1号機と同じようなトラブルを繰り返さないことが重要。
▽1号機では姿勢制御装置が故障。
▽着地はしたものの弾が発射されず、採取できたのは微粒子。
▽またエンジンすべてが故障する絶体絶命のピンチも。
ただチームは最後まであきらめず知恵を出し合って奇跡の帰還を果たし、感動を呼んだが、裏を返せば技術や事前の備えに問題もあった。
そこでチームがまず取り組んだのが機体の改良。

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▽姿勢制御装置は予備を1台増。
▽メインエンジンも部品の形を改良して、長寿命化とパワーアップを実現。
加えて、チームは機体の運用もより慎重。
はやぶさ2は先週末からは接近速度を秒速数センチと極端に遅く。
小さいとはいえリュグウには重力があり、はやぶさ2も引っ張られる。何かあった場合の衝突までの時間を稼ぐため、速度を遅くした。

ただ到着したとはいえ、本当の困難はこれから。
1号機で深刻なトラブルが起きたのは着地。
そこでチームでは前回は行わなかった着地のトラブル対応訓練を事前に行った。
取材したこの日は40人あまりが参加。
全員で手順を確認したあと、コンピューターがシミュレーションしてパネルに表示する機体の飛行状況を見守ります。
訓練では急に姿勢が乱れたり、通信が途絶するなど、不測の事態に管制官が対応できるか採点していきます。
これまで50回以上訓練が繰り返され、当初は復旧までに時間がかかったこともありましたが、今では早く対応できるようになった。

そして今後もすぐには着地しない。

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はやぶさ2の砂を採取する機器の長さは1m、それ以上のおうとつがある場所へ着地すれば機体が損傷するおそれがあり避けなければ。そこでチームでは今後2か月を割いてカメラや電波でリュウグウの詳細な立体地図を作る計画です。

このようにこれまでは、前回の教訓をいかした対応が功を奏して順調に行っているということ。
ただ前回着地で弾が発射されなかったのは、プログラムの設定ミスが原因。
またおととし打ち上げられたX線天文衛星ひとみも技術者によるプログラムの入力ミスで機体の回転が止められず、失敗。
はやぶさ2で同じようなミスが起きることがないよう、プログラムの内容の点検や入力については複数のスタッフで確認して行うなど、この先もあくまで慎重な運用を。

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では、小惑星の探査の意義。
まず期待されるのは太陽系誕生のなぞに迫る成果です。
太陽系は46億年前、ガスや塵が集まって太陽が誕生した後、小惑星ができ、それが衝突合体を繰り返して地球のような惑星ができた。
小惑星には46億年前の物質がそのままの状態で残されており、これを調べれば地球がどんな物質からできたのか知ることができる。
そして今回最も注目されるのが、生命誕生のなぞに迫る探査。
リュウグウには有機物を含む鉱物が多く存在する。
有機物を含む小惑星が隕石となって地球に運ばれ、そこから生命が誕生した説が注目。
はやぶさ2で有機物を採取できれば、生命誕生のメカニズムを解明する手掛かりが得られる可能性。

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今回、成果が得られてもすぐに人の暮らしに役に立ったりはしない。でも知的好奇心や宇宙観を変えることもある。
小惑星探査は宇宙で今のところ日本が世界をリードしている数少ない分野。
これを日本のお家芸とすべく、期待したい。

(水野 倫之 解説委員)

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