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「大阪府北部の地震 今後の地震活動に警戒を」(時論公論)

松本 浩司  解説委員

けさ大阪で震度6弱を観測した地震は時間がたつにつれて大きな被害が確認され、9歳の女の子を含む4人が死亡し、けがをした人は300人以上のぼっています。交通やインフラの混乱、影響は夜になっても続いています。地震の規模はそれほど大きくなかったにも関わらず被害がなぜ広がったのか、今後警戒すべき点はなにかについてお伝えします。

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解説のポイントは
▼露呈した地震に対する大都市の弱さ
▼地震のメカニズムと活断層への影響
▼今後、警戒すべき点

【被害はなぜ広がったのか】
けさの地震の規模はマグニチュード6.1で、阪神・淡路大震災と較べて地震のエネルギーは60分の1ほどでした。しかし震源が非常に浅くかったため一部で震度6弱の激しい揺れが起きて被害が広がりました。

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大阪で震度6弱以上が観測されたのは初めてで、鉄道などの運転見合わせや水道、ガスなどライフラインの停止で夜になっても混乱と影響が続き、大都市の弱点が露呈する形になりました。
建物の倒壊や火災は多くありませんでしたが、たくさんの人が行きかう市街地の建物のガラスや外壁、煙突などが壊れて落下する被害が相次ぎました。阪急電鉄の茨木市駅では天井からつりさがっていた表示板が落下しました。
なかでも大きな被害を出したのは、過去の地震でも繰り返されてきたブロック塀の倒壊です。大阪・高槻市で小学校のプールのまわりにある塀が倒れて小学校4年生の女の子が亡くなりました。大阪・東淀川区でも80歳の男性が亡くなったほか、多くのけが人が出ています。

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ブロック塀の安全対策は、9人が犠牲になった昭和53年の宮城県沖地震のあと、高さを2.2メートル以下とし、壁の内側に鉄筋を80センチ以下の間隔で縦横に配置するなど厳しい基準が設けられました。

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しかし、その後も阪神・淡路大震災や福岡県西方沖地震、熊本地震でも死者が出て被害が繰り返されています。熊本地震について福岡大学の古賀一八(こがかずや)教授が調査したところ258ヶ所のうち9割近い230ヶ所が基準を満たしておらず、このうち175ヶ所が倒壊していたことがわかりました。

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また、けさの地震では体育館の照明が落下して生徒がけがをしたり、市役所の内装の天井板が外れて落下するといった被害も繰り返されました。多くの人が利用する場所で倒壊や落下の恐れのある施設、設備を所有したり管理したりする人は「人の死に至るかも知れない」ということを自覚して確認や対策を急ぐ必要があります。また国や自治体もルールが十分なのかという検討と指導の徹底が求められます。

【地震のメカニズムと活断層への影響】

次にふたつめのポイント、けさの地震による周辺の活断層への影響についてです。

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けさのマグニチュード6.1の地震の震源地は大阪府の北部で、有馬-高槻断層帯という活断層の端付近に位置しています。神戸市から大阪・高槻市にかけて55キロにわたって伸びていて、400年あまり前に慶長伏見大地震と呼ばれるマグニチュード7.5の大地震を起こしたと考えられています。けさの地震が有馬-高槻断層帯の一部が動いたものかどうかわかっていませんが、この断層をはじめ周辺には上町断層帯、生駒断層帯など危険な活断層が数多くあり、それらへの影響が懸念されています。

けさの地震がほかの活断層にどういう影響を及ぼしたと考えられるのか。東北大学の遠田晋次(とおだしんじ)教授はこれらの断層のうち最も大きな被害が想定されている上町断層への影響をシミュレーションしました。

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上町断層は大阪府豊中市から大阪市を経て岸和田市に至る長さ42キロの断層で、マグニチュード7.6の地震を引き起こし、最悪の場合、97万棟の建物が全壊・焼失し、死者4万2000人にのぼると想定されています。

上町断層は長方形で囲んだ部分の地下、長さ40キロ、幅20キロほどの範囲で、東側の地盤が西側に乗り上げる形でずれ動く断層を考えられています。けさの地震の震源地はその北東の端に位置しています。

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この地震で上町断層はどう影響を受けるのか。遠田教授のシミュレーションの結果です。けさの地震によって歪みがどれだけ伝播したかを示しています。赤と黄色の部分が上町断層の北部に広がっていて、断層が動きやすくなる、つまり地震を引き起こしやすくなる方向に力が加わったことがわかりました。

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過去には地震が次の地震を誘発したと見られるケースがあります。昭和5年の北伊豆地震では、活断層で地震が起きて、その活動域が広がってマグニチュード7.3の北伊豆地震が発生して大きな被害が出ました。また熊本地震でもマグニチュード6.5の地震が起きた2日後に隣接する別の活断層でより大きな地震が発生しました。
一方、平成17年の福岡県西方沖地震ではマグニチュード7の地震が起きて、シミュレーションで延長上にあって福岡市の中心部を通る活断層に地震を引き起こしやすくする影響が及んだと計算されましたが、今のところ想定される地震は起きていません。

遠田教授は「上町断層の次の活動がいつ起こるのかはわからないが、けさの地震が上町断層による次の地震を少し早めた可能性がある。余震活動の観測データから影響をさらに分析したい」と話しています。

【今後、警戒すべき点】

こうした地震で今後、警戒すべき点はどういう点でしょうか。

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まず、この地震の直接の影響です。大阪府北部ではその後も余震と見られる地震が相次いでいます。多くの場合、後から起こる地震ははじめの地震よりは小さいですが、まれに同等かそれ以上の地震が起こることがあります。気象庁は「揺れの強かった地域では、今後1週間程度、最大震度6弱程度の地震に注意してほしい」と呼びかけています。けさの地震に耐えられたブロック塀や建物が痛んでいてそうした地震で壊れる恐れがあります。あすの通学の際などブロック塀のすぐ近くは通らないようにするなど注意をする必要があります。

また梅雨に入って大阪では雨が多く、あすも雨が予想されています。揺れが激しかったところでは地盤が緩んでいる可能性があり、土砂災害や崖崩れなどにも注意が必要です。

もうひとつ、けさの地震が周辺の活断層に影響を与えた可能性があることを、さきほどのシミュレーションを行った東北大学の遠田教授をはじめ多くの専門家が指摘しています。けさの地震で被害がなかったところでも、家具の固定や高いところに重いものを置かないこと、マンションのベランダなどに落下しやすいものを置かない。さらに自宅や会社などのブロック塀が倒れたり、看板などが落下したりする恐れはないか、など、地震に備える基本的な対策をこの機会に確認してほしいと思います。

【まとめ】
けさの地震は、地震に対する大都市の弱さをあぶりだすとともに、対策の不備が人の命を奪ったり、傷つけたりするという現実をあらためて突き付けました。ひとりひとりが、これを受け止めなければならない、ということは言うまでもありません。

(松本 浩司 解説委員)

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