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「あいまいさ残る エネルギー計画見直し」(時論公論)

水野 倫之  解説委員

エネルギーをどう確保するのか、政府のエネルギー基本計画の見直し作業が大詰め。
先週示された骨子では、再エネを初めて主力電源と位置づけ。しかし当面の目標は据え置かれ、主要国に比べ出遅れ。
一方原子力も重要電源として維持する方針を鮮明に。ただ将来の新設に触れないなど、あいまいな点が多い。
焦点の再エネルギーと原子力について、どんな課題が残されているのか、水野倫之委員の解説。

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解説のポイントは
▽計画の骨子。
▽再エネの課題。
▽原子力政策の課題。

まず電源構成の現状。

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再エネは電力会社が一定価格で買い取る制度によって全電源の15%まで導入すすむも伸び悩み。また原発再稼働も進まないので、日本は80%以上を石炭などの化石燃料に頼る火力発電大国。
そこで今の計画では、再エネを「有望な電源」として2030年に22~24%まで増やすことをめざし、原発については「依存度を可能な限り低減する」 としつつも重要なベースロード電源だとして20から22%を目標。

それを今回どう見直そうというのか。
経産省の有識者会合は今回2050年までの長期戦略も検討して計画の骨子を提示。

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キーワードは「脱炭素化」。
パリ協定が締結され、日本はCO2などを2030年までに26%、2050年には80%削減する目標。
その実現に向けて、今回初めて再エネの主力電源化を打ち出した。
2030年で布石を打ち、2050年には、自立した主力電源にする。

一方原子力についてもCO2を出さないことから2030年で引き続き重要なベースロード電源と位置づけ、2050年に向けても脱炭素化の選択肢として維持する方針を鮮明に。

脱炭素化の主力を再エネと位置づけ積極的に導入する姿勢を見せたのは、評価できる。ただ2030年時点の目標は据え置いたまま。また2050年に向けても技術革新の予想は難しいとして明確な数値目標を示さなかった点が物足りない。その本気度が問われる。

というのもパリ協定がうたう、地球の平均気温の上昇を産業革命から2度未満に抑える目標を実現するには、各国とも今世紀中にCO2の排出量を実質ゼロにしなければ。
このためヨーロッパを中心に各国はすでに日本を上回る再エネを導入。

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各国はグラフの青や赤で示した2030年、もしくは2050年に向けて野心的な導入目標を掲げ、日本の出遅れが目立っている。

なぜ日本で再エネの導入が足踏み状態なのか。
太陽光パネルや風車の設置に適した広い土地が少なく建設コストも高いなど様々課題もあるが、ネックのひとつに、送電線に接続できない問題も。
容量がいっぱいで、あらたに作らない限りつなげる余裕がないとして再エネの接続が拒否される例が相次いだ。
ところが実際の利用率は全国平均で20%程度。送電線の運用ルールに課題が。

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送電線は落雷などがあっても停電しないよう、2回線で一組。
回線容量の半分は使わずにとってあるため、普段は残りの半分で送電。
そしてその空き容量は送電線につながる発電所がすべてフル稼働している前提で計算。空きがほとんどないとされている。
でもすべての発電所が同時にフル稼働するのは現実的ではない。
そこで経産省は送電線の運用ルールの見直しを検討。

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送電線を実際に流れた電気の量を元に計算。緊急用の送電線もトラブルが起きたときには送電を遮断する前提で一定量使う。こうした対策で空き容量を実質的に増やそうと。
ただシミュレーションや電力会社への補償をどうするのかまだ課題も。
送電線の新設はコストと時間。送電線の空きを増やす対策はそれよりは容易。
本気で主力電源化を目指すのであればまずはできることからすばやく始めなければならない。運用ルールの見直しを急いで行い、今後再エネの目標の上積みを。

そして原子力。

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まず2030年の目標について、十分な検証がないまま見直していない点が問題。
この目標達成のためには、原発を30基再稼働させる必要。しかし事故以降、政府の意向とは裏腹に再稼働は進まず、7基にとどまる。
なぜ再稼働が進まないのか。
基準が強化され、1基あたり1000億円程度の安全対策費。大型原発でも採算が取れなくなり、廃炉を余儀なくされるケース。
また裁判所が再稼働を認めないケースも続き、伊方原発は現在停止を余儀なく。
さらに世論調査でも原発再稼働に反対する声は根強く、地元の了解も必要ということもあってなかなか再稼働が進まず、原発はいつ何基稼動できるか先が読めない電源。
こうした状況で、2030年までに30基再稼働させるのは困難ではないか。
目標達成できなければ、その分火力発電で補うことになりかねず、CO2の排出が増えて、日本の削減目標が達成できなくなるおそれもあるわけで、導入目標下げることも検討しなければ。

さらに今回、2050年段階でも原発維持の方針。でもどう維持するのかあいまい。原発は運転期間が40年に制限され、最長でも60年しか運転できないので2050年に原発を維持するには増設か新設が不可欠。しかし骨子では全く触れずに棚上げ。
信頼が失われた今の状況では、とても新設や増設を言い出せないと政府はみているから。こうしたあいまいな政策は国民に受け入れられない。依存度低減を基本方針として打ち出しているわけなので、どこまでどう減らすのかはっきりさせなければ。

原子力ではほかにも見直しが必要な核燃料サイクルについても「着実に推進する」とされているなど課題が多い。
政府は夏にも計画を決定する方針。課題を先送りすることなく、議論を尽くして、見直して、いかなければならない。

(水野 倫之 解説委員)

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