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「運転延長は必要か 東海第二原発」(時論公論)

水野 倫之  解説委員

来年、40年の運転期限を迎える茨城県にある東海第二原発について、原電・日本原子力発電は運転期間を20年延長することをきょう表明。
東海第二は首都圏にあって、30キロ圏にはおよそ100万人。万が一のときに避難できるのか懸念があり、再稼働反対の声は根強い。
ただそれでも運転期間を延長して再稼働を目指さざるを得ない事情が、原電にはあるという。
東海第二の運転延長は必要なのか、今後の原電のあり方も含めて、水野倫之解説委員の解説。

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解説のポイント
① 東海第二の審査状況。
② 原電の事情とは。
③ 原電のあり方。

原電の村松社長はきょう茨城県の大井川知事を訪れ、東海第二原発の運転を20年延長する方針を伝えた。
来年運転期限を迎える東海第二が延長する場合は、新基準への合格に加え、原子炉などが劣化していないか調べ、今月中に申請する必要。

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原電はこれまでに、電源の強化や、高さ20mの防潮堤、それに総延長320キロの電気ケーブルを燃えにくいモノに交換するなど、新基準への対策を示した。
これに加えて、原子炉や格納容器に傷みがないかを超音波で調べた結果、問題ないと判断し、20年の延長することを決定。

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しかし再稼働は簡単ではない。
まず安全対策には1800億円と巨額の費用がかかる見込み、資金調達のメド立たず。
また首都圏にある唯一の原発で、避難計画が義務づけられた30キロ圏には96万人。重大事故で一斉に避難できるのか、各自治体では計画作りを進めているが、策定し終わった自治体はまだない。

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再稼働反対の声は根強く、今年8月の茨城県知事選挙でNHKが行った出口調査で東海第二原発の再稼働について訪ねたところ、賛成は24%、反対と答えた人は76%。

こうした厳しい状況にあるにもかかわらず原電が運転延長を決めたのには、ほかの大手電力会社とは違う、特殊な事情があるという。

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原電が設立されたのは1957年。
その4年前、アメリカのアイゼンハワー大統領が国連で「アトムズ・フォー・ピース」演説。核兵器に利用した原子力を、発電など平和目的に利用すると呼びかけ。
これを受けて日本も国策として原発を導入することを決定。商業原発の技術を蓄積するため電力会社などが出資して設立された、民営国策会社が原電。

1966年に日本初の商業炉、東海原発を運転。
その後も福井県の敦賀原発、東海第二と、型式や出力が異なる4基の原発を稼動することで技術を蓄積。原子力発電のパイオニアとしての役割を担い、大手電力会社の原発導入へとつなげた。

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その後老朽化で東海原発を廃炉にしたものの、ほかの3基で発電した電力を東電や関電など大手電力5社に販売して利益を得てきた。

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しかし福島の事故で状況一変。
すでに40年を超えていた敦賀原発1号機は採算がとれないとして廃炉。
また敦賀2号機は原子炉建屋直下に活断層があると指摘され、廃炉の可能性も。
現状、再稼働の可能性があるのは東海第二だけ、という状況。

そしてさらに、大手電力と違ってほかの発電手段を持たないため、売電収入ゼロが続き、経営は厳しい。
一般企業なら即倒産となりかねない事態だが、わけあり。

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大手電力との契約には、販売電気量に応じて受け取る料金のほかに、メンテナンスなどの名目の基本料金がある。
事故以降、売電がなくなっても5社はあわせて毎年1000億円を超える基本料金を支払っているほか、東電を除く4社は原電の銀行からの借入金の債務保証もして、原電の経営を支援。
大手電力も経営は厳しいが、原電の経営が行き詰まれば、株主でもある自分たちが借金の返済を肩代わりしなければならず、経営に直結。
大手電力、原電ともに東海第二の延長申請をしないという選択肢はなかった。

各社が払う基本料金は、結局のところ私たち消費者の電気料金。
またこの基本料金、事故対策で国の支援を受けている東電も支払っている。
今後東海第二が審査に合格したとしても、避難計画づくりや地元との調整など再稼働の見通しはたたない。
その間も、同じように大手電力が支え続ける仕組みを、続けていくことが許されるか。
事故を受けて政府も原発への依存度を低減する方針を示している。東海第二の運転を続けて技術を蓄積するというパイオニアとしての役割はすでに終わりつつあるのではないか。
新たな役割を検討し、経営形態を見直していくことこそ、必要。

というのも原電の役割はまだあり。期待されるのは廃炉ビジネス。

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国内ではすでに15基が廃炉。各社がバラバラに取り組めば大きな負担となり、今後は例えば廃炉を専門とする会社がすべて請け負い、効率的に進めるという方法も。

その点原電は、他社に先駆けて、東海原発の廃炉作業を2001年から始めている。
私がこの春に取材した時には、すでに発電に使うタービンは撤去され、原子炉の熱を蒸気に変える熱交換器の撤去作業が行われていた。1機目は遠隔操作で解体、2機目は作業員による手作業で撤去。わざわざ違う方法で解体することで、どちらが効率よく作業できるかを見極め、廃炉のノウハウの蓄積進める。

アメリカでは廃炉を専門に行う会社もある。原電はこうした会社と提携し、様々な型式の原発の廃炉のノウハウを取得しようとしており、今後は廃炉ビジネスに軸足を置いた経営を検討する必要があるのではないか。

(水野 倫之 解説委員)

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